【特集】心不全徹底解説 原因、症状と命の危険を緩和する治療・予防について

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【特集】心不全徹底解説 原因、症状と命の危険を緩和する治療・予防について

心不全とは、「心臓の機能が低下して十分な量の血液を全身に送り出せない状態」のことです。心不全の症状や原因、治療法・予防法について詳しく解説します。

心不全とは?

心不全とは、「心臓の機能が低下して十分な量の血液を全身に送り出せない状態」のことです。
心臓は左右の心室が収縮・拡張を繰り返し血液を循環させています。ポンプのような働きです。この働きが低下するのが心不全です。

心不全の症状

心臓のポンプ機能が低下するとさまざまな症状が現れます。心不全のサインとなる症状は次の通りです。

心不全のサイン

  • 階段や坂道を上ったり、重いものを持ったりすると息切れが激しくなった
  • 夜、寝るとせきが続いたり、突然、息苦しくなって目が覚めたりするようになる
  • 横になると息苦しくなり、体を起こすと少し楽になる
  • 足や顔のむくみが強くなった

心不全の症状は息切れやむくみのほかに体重増加や食欲不振、腹部膨満感、疲れやすい、手足が冷たいなどがあります。これらの症状にあてはまる場合は、早めに受診してください。

心不全の自覚症状

心不全の原因

心不全の原因として最も多いのは心筋梗塞、次に多いのは高血圧とみられています。弁膜症、心筋症、不整脈などの心臓病も原因になります。糖尿病、脂質異常症、肥満・メタボは心筋梗塞を起こす動脈硬化のリスクです。また、加齢とともに心不全は明らかに増加します。

心不全の原因

心不全の症状や原因について詳しくはこちら



心不全の薬による治療

心不全の治療の基本は生活習慣の改善と薬の服用です。

薬による治療

心不全の薬にはさまざまな種類があり、主に4つのタイプに分けられます。これらの薬は効能が似ていても作用する場所がそれぞれ異なり、数種類の薬を併せて服用する場合もあります。

心不全の主な治療薬
  • 心臓を保護する薬
    ACE阻害薬、ARB、アルドステロン拮抗薬などは特に心不全の初期の段階から使われます。血圧を上げるホルモンの働きを妨げることで血圧を下げ、心臓を保護します。
  • 心臓を休ませる薬
    β(ベータ)遮断薬は血圧を下げたり、脈を遅くしたりすることで心臓の負担を軽くします。
  • 心臓を楽にする薬
    利尿薬は、体の余分な水分を尿として排出させるものです。むくみや息苦しいなど、うっ血による症状を改善させます。
  • 心臓を力づける薬
    強心薬は、心臓の筋肉に作用して、血液を送り出すポンプ機能を強くします。

さらに最近では、この4つのタイプ以外に、3つの新薬が注目されています。
血圧を下げて心臓の負担を軽減するARNI(アーニー)や、高齢者や比較的症状が軽い人、腎機能が低下した人などにも幅広く使えるSGLT2阻害薬、そして心拍数を下げ心臓を休ませ、機能を回復させるイバブラジンです。

心不全の薬による治療について詳しくはこちら



心不全は予防できる

心不全では心臓の働きが徐々に低下し、最終的には死にいたることが多くなります。しかし心不全は、危険因子を治療することによって予防できます。

心不全の予防とは?

原因の病気を治療することが心不全の予防

心不全には4つのステージがあります。心不全を発症すればステージCです。ステージAとBは発症する前の予備群と言えます。心不全の予防とは主に、ステージAやBからステージCに進行させないことです。
ステージAは高血圧糖尿病動脈硬化など心不全の危険因子がある段階です。これらを確実に治療することが心不全の予防になります。
ステージBは心肥大や心拍出量低下など心臓の働きに異常が現れてきた段階です。心筋梗塞、弁膜症、心筋症、不整脈などさまざまな心臓病を発症している場合もステージBです。こうした異常や病気に気づき治療することが心不全の予防です。

早期発見で予防

もし心不全を発症しても早期発見することが大切です。そしてすぐに治療を開始し、心不全の進行をできるだけ抑えます。これも広い意味で心不全の予防です。
早期発見には、まず自覚症状を知って見逃さないようにしましょう。

生活上の注意点

生活上の注意点

心不全を予防するためにステージAやBの段階から減塩、肥満解消、適度な運動、禁煙、節酒、ストレス軽減などに注意をし、高血圧や心臓病を改善しましょう。

早期発見の検査とは

早期発見の検査とは

心不全の検査も早期発見には欠かせません。まず心電図や胸部X線、次にBNPや心エコーの検査を行うことが一般的です。CTやMRIでさらに詳しく調べることもあります。

心不全の早期発見のための予防と検査について詳しくはこちら



心不全の緩和ケア

緩和ケアは、がんだけではなく、最近では心不全など生命を脅かす病気に対しても行われるようになってきました。心不全の患者さんの中には、身体的にも心理的にも問題をたくさん抱えている患者さんが多いので、早期の段階から緩和ケアを行い、対処することが重要だと考えられています。

心不全の症状の緩和

心不全では、心臓の機能低下に伴う呼吸困難やむくみの他に、筋肉に十分な血液が行き渡らなくなるため、全身倦怠(けんたい)感や痛み、食欲不振、抑うつ、便秘などさまざまな症状があらわれます。緩和ケアでは、このようなさまざまな症状を医師や看護師のほかに、各分野の専門家が関わって「緩和」するようにつとめます。

心不全の緩和ケアについて詳しくはこちら



心不全パンデミック

心不全パンデミック

日本の心不全の患者数は約100万人と推定されています。しかも高齢化に伴って2035年までさらに増加するとみられています。心不全の増加は世界的な問題で「心不全パンデミック」と呼ばれています。パンデミックとは「爆発的な流行」という意味です。

心不全パンデミックについて詳しくはこちら



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