【特集】尿の異常をもたらす病気まとめ 膀胱炎・腎臓病・がんなど

更新日

【特集】尿の異常をもたらす病気まとめ 膀胱炎・腎臓病・がんなど

尿が臭う、尿の色が気になるなど、普段と違った尿が出ることで不安になることはありませんか?尿もれや頻尿、排尿時に痛みがある、といったお悩みも。そのような症状は、膀胱炎や慢性腎臓病、がんなどの病気に関係があるかもしれません。それぞれの病気の症状と治療法について解説します。

膀胱炎

膀胱(ぼうこう)炎は、尿をためて排出する膀胱に炎症が起こる病気です。
「急性膀胱炎」「慢性膀胱炎」「間質性膀胱炎」の3つのタイプがあり、膀胱炎の発症例のうち約9割は急性膀胱炎が占めています。

膀胱炎のタイプ(急性膀胱炎・慢性膀胱炎・間質性膀胱炎)

急性膀胱炎

急性膀胱炎は女性に多く、膀胱に細菌が侵入することが原因で、頻尿、残尿感、膀胱の痛み、尿が白く濁るなどの症状が起こります。

原因となる細菌の約8割が大腸菌です。大腸菌は大腸に住み着いている常在菌で、便に含まれるほか、肛門の周囲にもいます。女性は肛門から尿道までの距離が短く、尿道の長さも短いため、大腸菌が膀胱に侵入しやすいのです。

なお、急性膀胱炎の代表的な合併症である「腎盂腎炎」は、重症化すると命の危険もある恐ろしい病気です。膀胱炎の症状に加え、38度以上の発熱や背中・腰の痛み、吐き気・寒気・全身倦怠感などがあったときには「腎盂腎炎」の可能性があります。

慢性膀胱炎

慢性膀胱炎の原因

慢性膀胱炎は、男性に多く見られます。
異物が原因となって起こる慢性膀胱炎は、膀胱結石や、尿道に長期間置かれたカテーテルなどの「異物」が細菌の住みかとなって、炎症が慢性化する場合が多く、症状は急性膀胱炎と似ています。
ほかに、一部の薬によって起こる薬剤性の慢性膀胱炎や、他の部位の放射線治療の際に副作用で起こる放射線性の慢性膀胱炎があります。薬剤性膀胱炎と放射性膀胱炎の場合、主な症状として血尿が見られます。

間質性膀胱炎

間質性膀胱炎とは、膀胱の粘膜のバリアが弱くなり、尿が粘膜の奥の「間質」という層までしみ込んで、激しい炎症が起こってしまう病気です。

急性膀胱炎と間質性膀胱炎の共通点と相違点

症状は急性膀胱炎と似ていますが、「頻尿の程度がひどい」「膀胱は尿がたまるにつれて激しく痛む」「尿がたまると膀胱に圧迫感を感じる」「排尿後は楽になる」といった特徴があります。

膀胱炎の原因と症状、治療法について詳しく知りたい方はこちら



慢性腎臓病

慢性腎臓病は腎臓の働きが低下した状態や、尿の中にたんぱくが漏れ出る状態(たんぱく尿)の総称です。

慢性腎臓病のメカニズム

慢性腎臓病のメカニズム
慢性腎臓病のメカニズム

腎臓は尿を作る臓器で、腎臓に流れ込む全身の血液から老廃物を取り除き、余分な塩分・水分とともに、尿として体の外に排出します。老廃物を取り除くのは、腎臓の中にある「糸球体」という小さい無数の組織です。きれいになった血液は腎臓から全身に流れます。

慢性腎臓病では糸球体が少しずつ壊れていきます。その結果、血液中の老廃物が十分に取り除けなくなったり、尿にもれないはずのたんぱくが尿に交じったりします。
慢性腎臓病の多くは、「尿検査」や「血液検査」で早期発見できます。

慢性腎臓病の検査方法について詳しく知りたい方はこちら



尿の異常がサインとなるがん

腎臓がん

尿をつくる働きをもつ腎臓に発生するがんは、腎皮質にできる「腎がん」と、腎うにできる「腎うがん」に大きく分けられ、性質や治療法が異なります。腎臓にできるがんの約9割が腎がんとされています。

腎臓のがんの種類

腎がんは、早期には自覚症状がほとんどありませんが、進行すると血尿、側腹部痛(脇腹の痛み)、脇腹のしこりなどの症状が現れることがあります。

腎がんの特徴や進歩する手術・薬について詳しく知りたい方はこちら

膀胱がん

膀胱は、腎臓でつくられた尿を一時的にためておく袋状の器官です。膀胱がんの90%以上は尿路の内側にある尿路上皮という粘膜から発生する「尿路上皮がん」というタイプです。

膀胱がんの90%以上は尿路上皮がんというタイプ

膀胱がんを発症する人は、日本では年間2万人以上。男性に多く、喫煙や加齢が膀胱がん発症の要因とされています。

膀胱がんの早期発見のサインは血尿

膀胱がんを早期発見する重要なサインとなるのが、目で見える血尿です。
すぐに受診すれば、多くの場合、早期がんの段階で発見できます。血尿が現れない場合もありますので、特に50歳以上で喫煙歴がある人は、年に1回は尿検査を受けることがすすめられます。

男性に多い「膀胱がん」とは 症状や原因・検査・治療法についてはこちら

前立腺がん

前立腺は男性特有の生殖器官で、精液の成分をつくるなどの働きをしています。

局所進行がん

前立腺がんは進行が比較的ゆっくりなので、初期は自覚症状が現れることはありませんが、進行して局所進行がんになると、頻尿や尿が出にくい、血尿などの症状が現れます。

前立腺がんの進行と症状、検査についてについて詳しく知りたい方はこちら

卵巣がん

卵巣は子宮の左右に一つずつある臓器です。女性ホルモンを分泌するほか、閉経までの間、卵子を周期的に放出する「排卵」の働きもあります。卵巣がんは40歳代から急激に増え、早期発見の難しいがんといえます。
初期症状はほどんとなく、進行した場合に下腹部の張り、圧迫感、痛み、しこりなどが現れます。「食後でなくても、おなかが出ている」「圧迫感があってトイレに行きたくなるが、尿は出ない」「風船のようにおなかが膨らんできた」などの場合には注意が必要です。

卵巣がんについて詳しく知りたい方はこちら



尿もれ

男性の尿もれ

男性の尿もれの大きな原因となるのは「過活動膀胱」と「前立腺肥大症」です。特に「前立腺肥大症」が原因で「過活動ぼうこう」を引き起こすことが多いのが男性の尿もれの特徴です。ほとんどが良性の疾患で、生活に支障がなければ治療の必要はありませんが、まれに脳血管障害などが原因の尿もれもあり、注意が必要です。

男性の尿もれの主な原因

男性の尿もれについて詳しく知りたい方はこちら

女性の尿もれ

タイプ別 女性の尿もれ

尿もれに悩む女性のおよそ8割が「腹圧性尿失禁」およそ5割が「切迫性尿失禁」とされ、それらを併発する「混合性尿失禁」も3割程度みられます。原因も異なり、腹圧性尿失禁では骨盤底筋という筋肉のゆるみが、切迫性尿失禁では「脳と膀胱」の連携がうまくいかないことが原因で起こります。

女性の尿もれ原因と治し方・治療法について詳しく知りたい方はこちら
尿もれに関するQ&Aはこちら



頻尿

夜間、尿をするためにトイレに起きなくてはならなくなる症状を「夜間頻尿」と言います。通常、寝ている間は抗利尿ホルモンの働きで、尿を作る量が制限されます。そのため、夜間は排尿をしなくてすむため安眠することができます。しかし、加齢に伴って抗利尿ホルモンの分泌量が減ると、寝ている間も尿が多く作られるため、起きる回数が増えてしまうのです。

年代別 夜間に尿に起きる確率

夜間尿量が1日の尿量の33%以上ならば、夜間多尿が原因だと考えられます。
膀胱は筋肉でできていますが、加齢によって筋肉組織のしなやかさが失われると、膀胱があまり広がらなくなります。そのため膀胱内にためられる尿の量が減り、夜間頻尿になってしまうこともあります。

夜間頻尿について詳しく知りたい方はこちら



関連する特集