【特集】物忘れが多い 原因となる病気(認知症など)と予防・対処法

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【特集】物忘れが多い 原因となる病気(認知症など)と予防・対処法

最近忘れっぽくなっていませんか?加齢などによる物忘れと認知症による物忘れの違いやそれぞれの対処法を解説。また、今からできる認知症予防のポイントや効果的な運動なども合わせてご紹介します。認知症以外にも物忘れが現れる病気もまとめました。

認知症とは?ただの物忘れとの違い

朝ご飯を食べたことは覚えているけれど、何を食べたかを忘れることは認知症による物忘れではありません。認知症による物忘れでは、朝ご飯を食べたことなど体験したことをすっかり忘れてしまいます。

認知症とは?

認知症は、脳がダメージを受けて記憶力や判断力が低下し、日常生活に支障が出る状態です。認知症は、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病がリスクを高めることがわかっているので、日頃から食生活の改善や適度な運動などを心がけることが大切です。

認知症の初期症状チェック項目

【認知症初期症状チェック】

  1. 同じことを何回も話す・尋ねる。
  2. 物の置き忘れが増え、よく捜し物をする。
  3. 以前はできた料理や買い物に手間取る。
  4. 以前はできた料理や買い物に手間取る。
  5. ニュースなど周りの出来事に関心がない。
  6. 意欲がなく、趣味・活動をやめた。
  7. 怒りっぽくなった・疑い深くなった。

「認知症とは?さまざまな原因・初期症状セルフチェック」についてを詳しく知りたい方はこちら



認知症の種類やそれぞれの特徴

認知症で最も多いのがアルツハイマー病で、認知症の大体7割くらいを占めると言われています。続いて多いのが脳梗塞や脳出血などの脳血管障害を原因とする「血管性認知症」です。

アルツハイマー病とは?治療薬と効果、注意点

アルツハイマー病は、記憶を司る脳の海馬の周辺から萎縮が始まる病気で、最初に物忘れが起こるのが特徴です。アルツハイマー病による物忘れは初期から自分の体験自体を忘れてしまい、進行するにつれて脳全体が萎縮して認知機能全体が徐々に低下していきます。

アルツハイマー病が進行すると運動機能にも障害が起こる

アルツハイマー病は進行性の病気で、初期段階では日常生活にほぼ支障がありませんが、進行すると、日常生活に支障が出る認知症になります。
進行に伴い、着替えや食事などの日常生活動作に障害が出始め、重度になってくると立つ、歩くといった運動機能にも障害が起こるようになります。

現時点では発症してしまうと、元の状態に戻すことは難しいと言われています。以前は簡単にできたことが、なぜか忘れてできなくなってきたという異変を感じられたら、早い時点で検査をして、予防や治療を行うことが重要です。

アルツハイマー病の薬の効果は

アルツハイマー病の薬を使用した時の進行を表すグラフ

現在使われているアルツハイマー病の薬は、症状を改善する効果はあるものの、根本的に治す効果はありません。そのため、薬によって記憶力などの認知機能が改善しても、病気は次第に進行していきます。
ただ、早い段階で診断して適切な薬を使えば、症状が軽い状態を維持することができます。

※注意点
アルツハイマー病は物忘れが起こるため、薬ののみ忘れを防ぐ工夫が重要です。

薬ののみ忘れを防ぐ対策

「アルツハイマー病とは?治療薬と効果、注意点」についてを詳しく知りたい方はこちら

アルツハイマー病と似ている正常圧水頭症とは?

正常圧水頭症とは脳脊髄が過剰にたまることで発症する病気です。歩行障害、物忘れなどの認知障害、排尿障害が現れます。

正常圧水頭症とアルツハイマー病を見分けるために最も重要なのは、歩行障害と認知障害が併せて現れるかどうかという点です。アルツハイマー病の場合、歩行障害はかなり進行するまで起こりません。この2つの症状が重なる場合は、正常圧水頭症であることが疑われるので、早めの受診を検討しましょう。さらに排尿障害もある場合は、すぐに受診してください。

「アルツハイマー病と似ている正常圧水頭症」についてを詳しく知りたい方はこちら

進行によって異なる血管性認知症の症状・予防・治療

血管性認知症は、脳の血流障害が原因となって起こる認知症です。血管性認知症は大きく2つのタイプに分けられます。

血管認知症のタイプ
  1. 脳卒中による認知症
    脳の血管が詰まる脳梗塞や脳の血管が破れる脳出血などの脳卒中によって脳の神経細胞の一部が死滅して起こるもの。
  2. 脳小血管病による認知症
    脳の太い血管に起きるのではなく、脳の細い血管に梗塞や出血が起こります。

血管性認知症の症状

血管性認知症の症状は進行によってさまざまです。進行に伴って起こりやすい順番に並べました。

①以前はスムーズにできたことが段取りよくできなくなった。
②物忘れが多くなった。
③歩く、食べるなど動作が全般的にゆっくりになった。
④活気がなくなった、言葉数が少なくなった。
⑤急に怒ったり、泣いたり、笑いだしたりするようになった。

血管性認知症の予防

血管性認知症 脳卒中の再発を防ぐ
血管性認知症 脳小血管病の悪化を防ぐ

脳卒中が原因で血管性認知症になった場合は、脳卒中の再発予防が認知症の発症や進行を防ぐために欠かせません。対処の基本は、食事や運動、禁煙など生活習慣の改善で、それで不十分な場合は薬を使用します。

「血管性認知症の症状や予防、薬による治療」についてを詳しく知りたい方はこちら

記憶力低下などの症状がみられる軽度認知障害とは

軽度認知障害や認知症の原因の60~70%は、アルツハイマー病と考えられています。
軽度認知障害とは、正常と認知症の間のグレー状態のことで、MCIとも呼ばれます。この状態になると、記憶力や判断力、物事を組み立てて行う能力、言語能力といった認知機能に多少の低下があるものの、日常生活にはさほど支障はありません。たとえば、外出したという、自分の体験そのものを忘れてしまうことがありますが、「昨日はあそこに出かけたじゃない」などと指摘すると思い出します。
物忘れが目立つようになったなど、日常生活における変化を家族や周りの人がいかに早く気づけるかが重要です。

「記憶力低下などの症状がみられる軽度の認知障害」についてを詳しく知りたい方はこちら

若年性認知症の対策・初期症状・原因・対処法

若年性認知症とは、65歳未満で発症した認知症をいいます。

血管性認知症の初期症状

認知機能低下による症状

認知機能低下による症状が早くから現れます。

  • 物忘れ
  • 月日がわからない
  • 計算ミス
  • 言葉が理解できない
  • 言葉が出てこない
  • 読み書きが困難
  • 着替えができない
  • 道に迷う

若年性認知症の原因

若年性認知症の原因

若年性認知症は、脳卒中のあとに起こる血管性認知症が最も多い原因で、約40%を占めています。2番目の原因がアルツハイマー病で約25%。次いで、交通事故などのあとに起こる頭部外傷後遺症の約8%、前頭側頭型認知症の約4%などが続きます。

若年性認知症の対策

若年性認知症を発症する人は若い人が多いため、本人が認知症と思わない場合が多く発見が遅くなりがちです。本人の行動だけでなく周囲の理解なども大切です。

若年性認知症の対策として、主に以下の4つが挙げられます。

  1. 異変を感じたら迷わず専門医へ。
  2. 本人が安心できる環境づくりを心がける。
  3. 経済的な問題を考え、仕事はなるべく続ける。
  4. 若年者向けデイサービスを探す。

「若年性認知症の主な問題と対策、初期症状など」についてを詳しく知りたい方はこちら



認知症になる前に予防する

認知症予防運動プログラム

認知症のリスクは運動で下げることができます。認知症の大半はアルツハイマー型認知症で、脳がどんどん痩せていく病です。運動をすると脳の痩せを防いだり、脳を大きくしたりする効果があることが分かってきました。

認知症予防運動プログラムを1年間行った人たちは、記憶力が向上した

国立長寿医療研究センターが開発した「認知症予防運動プログラム」を1年間行った人たちは、記憶力を向上することができました。

では、「認知症予防運動プログラム」とは、どのようなプログラムなのでしょう。
基本はウォーキングなどの有酸素運動です。さらに、運動に加えて脳に負荷をかける計算やしりとりなどを同時に行うと、記憶力が向上し、認知症予防が期待できます。

認知症予防運動プログラムの動画はこちら

認知症は発症する20年以上前から脳に異変が起こっています。予防の取り組みは、できるだけ早くから始めることが重要です。

認知症予防法はこれ!

群馬県中之条町では、20年も前から住民の生活と健康の関係性を調査しています。その研究から早歩きを一定時間している人ほど、認知症などさまざまな病気にかかりにくいことがわかりました。

同じく「早歩きが脳にいい」ということが、アメリカでも明らかになりました。早歩きをすると脳の中で記憶をつかさどる「海馬」の体積が大きくなります。その理由は血流の増加だと考えられています。早歩きをすると脳の認知機能もより多く使われるため、脳への酸素や栄養を運ぶ血流が増加するのです。

【ここがポイント!】
一日20分の早歩きをすると、認知症をはじめ、さまざまな病気になりにくいことが明らかに
★5分ずつのこま切れでもOK!大切なのは一日に合計20分早歩きすること
★早歩きのコツ

その1.いつも通る道を時間短めに歩く(10分を8分半で歩くのが目安)
その2.一日8000歩を目指して歩くと、早歩きは自然と20分に!



物忘れの原因となるその他の病気

加齢によるものや認知症以外にも、物忘れが症状で現れる病気があります。



物忘れの対処法

血糖値が高いと物忘れしやすくなる?

近年、物忘れに血糖値が深く関係していることが分かってきました。もともと糖は脳に欠かせないエネルギーですが、血糖値が高い状態が続くと、なぜか物忘れをしやすい状態になってしまうのです。

いったいなぜ高血糖が物忘れを引き起こすのか。そのカギを握るのが膵臓から出るインスリンです。インスリンは体の細胞に糖を取り込むよう指示を出し、血糖値を調整する役割を担っています。食べ過ぎや運動不足などによって血糖値が高くなると、脳に届くインスリンの量が減ってしまい、その結果、特に脳の中でもインスリンを必要とする記憶力や注意力に関係する機能に影響が出て、物忘れをしやすい状態になってしまうと考えられています。

注意してほしいのはこんな人

  • HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)
    65歳未満の方 5.7% 以上
    65歳以上の方 6.2% 以上
    ※HbA1cは1~2か月の血糖値の平均を示す値です。
  • 食後2時間後の血糖値 140mg/dL 以上

※食後血糖値は、市販の血糖値の検査キットなどで測定することができます。
※糖尿病の疑いのある方は、専門の病院などで検査を受けることができます。

血糖値改善で物忘れを予防

生活習慣を見直して、高血糖の状態を改善することは、物忘れや認知症を予防する上でも重要と考えられています。見直した生活習慣は主にこの3つです。

  • 週2~3回の適度な有酸素運動
  • 適度な糖質制限
  • 野菜から先に食べる

※血糖値の下げすぎも脳に悪影響を及ぼします。既に糖尿病と診断されている方は必ず医師に相談してから、こうした対策を行ってください。

今すぐできる「忘れもの・忘れごと」 対処法のポイント

忘れものを自分で意識してなくそうとするのではなく、リマインダーアプリの活用や、物の置き場所や持ち物確認のルールを決めておくなど、忘れものが起こりにくくなるような仕組みや環境をつくることが大切です。

道具を使うだけでなく、周囲の人たちの助けを借りることも大切です。たとえば、以下のように自分の忘れものや確認ミスが起こりにくくなるようにサポートしてもらいましょう。

【サポートの例】

  • 仕事が複数・同時並行的に走っているときは、上司や同僚に、作業の優先順位をつけてもらったり、途中で確認のタイミングを入れてもらったりして、抜け漏れが起こりにくいように進捗管理をする
  • 書類などの重要な作成物は必ず誰かにWチェックをしてもらうようにする

詳しいことを知りたい方はこちら