慢性腎臓病
慢性腎臓病とは
慢性腎臓病は、腎臓の働きが低下した状態や、尿の中にたんぱくが漏れ出る状態(たんぱく尿)の総称で、日本には1300万人を超える慢性腎臓病の人がいると推計されています。
慢性腎臓病は腎臓の働きがかなり低下するまで自覚症状がありません。そのため気づきにくく、油断しがちな病気といえます。
慢性腎臓病の症状

慢性腎臓病は病気がかなり進行して初めて症状が現れます。主な症状はだるさ、食欲不振、頭痛、吐き気、むくみ・動悸・息切れ、高血圧、貧血、骨が弱くなるなどです。
いろいろな症状が現れるのは、腎臓の働きが低下することで体内にさまざまな有害物質がたまってしまうためです。体内に余分な水分もたまるので、むくみが生じ、血圧も高くなります。
慢性腎臓病は、「脳卒中」や「心筋梗塞」などの原因になることも明らかになっています。最後まで進行すると腎臓が機能しなくなり、透析治療など、自分の腎臓の働きの代わりをする治療を行わなければなりません。
透析治療
透析が必要になるのは、腎臓の機能がかなり失われた段階です。透析治療を受ける人の大半は「血液透析」を選択しています。これは血液を体の外に送り出し、透析器という機械で老廃物や余分な塩分・水分を除去したあと、血液を体の中に戻す方法です。
もうひとつは「腹膜透析」です。胃・腸・肝臓などの表面と腹壁の内側を覆っているひとつづきの膜、「腹膜」を使って、血液を浄化します。
【特集】慢性腎臓病の対策と治療 食事の改善や運動で進行を遅らせる
IgA腎症
IgA腎症とは
腎臓病が進行し、やがて腎不全になると透析治療が必要になります。現在、透析治療を受けている患者さんの3割近くが「IgA腎症」という病気です。
「IgA」とは、細菌やウイルスなどから体を守る免疫物質の一種で、のどなどの粘膜の表面で活躍します。たとえば、かぜのウイルスなどが鼻や口の中に侵入すると、IgAがウイルスにくっついて無力化します。そのIgAが、血液中でかたまりをつくることがあります。
そのかたまりが血流にのって腎臓まで運ばれると、腎臓の組織を攻撃し炎症が起こります。これが「IgA腎症」です。
指定難病に認定
腎臓病の多くは、糖尿病や高血圧など、なんらかの病気が原因で起こります。ところがIgA腎症の場合、病気が原因とならないのが特徴とされ、原因がはっきりわかっていません。重症な場合は完治につながる治療法がないことから、指定難病に認定されています。IgA腎症は、特に20~30歳代に多くみられますが、子どもも含めてどの年代でも起こります。
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薬剤性腎障害
薬剤性腎障害とは
鎮痛薬などの薬が原因で腎臓の働きを低下させてしまうことを「薬剤性腎障害」と呼びます。腎臓は体内の老廃物や余分な塩分、水分を尿にして排せつしていますが、体内に入ったほとんどの薬も同じように腎臓から排せつされます。そのため、腎臓は薬の影響を非常に受けやすく、障害が起きやすいのです。場合によっては慢性腎臓病を発症したり、慢性腎臓病が悪化したりする可能性もあります。
薬剤性腎障害の原因となる主な薬

薬剤性腎障害の原因となる主な薬は鎮痛薬、抗がん剤、抗菌薬、造影剤です。
最も多いのがNSAIDsと呼ばれている鎮痛薬で、その次に多いのが抗がん剤となっています。鎮痛薬や抗菌薬で腎障害が出やすいのは、毒性が強いからというわけではなく、処方する機会が多いために、原因となることが多くなっていると言われています。
薬による腎臓への影響

薬で腎障害が引き起こされると、「腎臓への血液の減少」「薬の毒性による腎臓の障害」「薬に対するアレルギーの発生」「薬の成分で尿の通り道が詰まる」などの影響が出て、腎臓の機能が低下します。
薬の種類ごとの薬剤性腎障害の症状や予防法を詳しく知りたい方はこちら
急性腎障害
急性腎障害とは
急性腎障害はAKIとも呼ばれ、最近、注目を集めています。急性腎障害とは、「数時間から数日の間に腎機能が急激に低下した状態」のことで、重症の場合は「多臓器不全」に陥り、1か月以内に命を落とすことも少なくありません。
急性腎障害の原因
① 腎臓への血流の低下
【主な原因】
- 出血・下痢・おう吐、脱水などによる血液量の低下
- 心不全による、心臓のポンプ機能の低下
- 敗血症による全身の血圧低下
- 脱水
- 血圧を下げる薬や鎮痛薬の服用など
② 腎臓の細胞の障害
腎臓への血流が低下した状態がずっと続くことにより、尿細管の細胞が酸欠状態に陥り、やがて細胞が死んでしまい、急性腎障害が起こります。また、薬剤が尿細管の細胞に直接障害を与えてしまうこともあります。
③ 尿路の閉塞
尿路にできた石や、がんなどが原因で尿路が閉塞し、「水腎症」が起こることが原因で尿が排出されず、腎臓にたまってしまうことで、急性腎障害が起こることがあります。
腎がん

腎臓に発生するがんは、腎皮質にできる「腎がん」と、腎うにできる「腎うがん」に大きく分けられ、性質や治療法が異なります。腎臓にできるがんの約9割が腎がんとされています。
腎がんの特徴
腎がんは、50歳ごろから増え始め、70歳代までは年齢が高くなるにつれて多くなっていきます。腎がんの原因ははっきりとはわかっていませんが、喫煙や食べ過ぎ、運動不足などの生活習慣や、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病、いわゆる「メタボリックシンドローム」が関係すると考えられています。
腎がんは、早期には自覚症状がほとんどありません。腎がんが進行すると血尿、側腹部痛(脇腹の痛み)、脇腹のしこりなどの症状が現れることがあります。
腎がんの検査と治療
腎がんは、腹部の超音波検査を受けることが早期発見につながります。
腎がんを早期発見するためには、40歳ごろから、年に1回、腹部超音波検査を受けることがすすめられます。腹部超音波検査で腎がんが疑われる場合、確定診断のためにCT検査が行われます。腎がんは早期に診断されれば、基本的に根治が可能です。
早期の腎がんは手術で根治を目指します。手術には「部分切除」と「全摘出」があり、がんの大きさなどを考慮して選択されます。
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