特集インデックス
流行期は11~3月 ノロウイルス
ノロウイルス(感染性胃腸炎)は感染力がとても強く、感染すると強い吐き気やおう吐、下痢が起こります。
感染経路は主に2つ。1つは食べ物を介した感染で、特にノロウイルスをためやすい牡蠣(かき)による感染が多くなっています。もう1つは人から人への感染で、感染者が「吐いたもの」や「便」に触れた手を介して、ノロウイルスが口から体内に入ることで感染します。
感染を広げないためにも汚物をきちんと処理することが大切です。
ノロウイルス感染による症状と受診の目安
体内に増殖したノロウイルスを体外に排出しようとして強い吐き気やおう吐、下痢が起こります。多くの場合、1~2日で症状は治まり、自然に回復します。ただし、乳幼児や高齢者などの抵抗力が弱い人は、症状が長引くことがあります。

家庭で対処するときは、下痢止めの薬を使わないでください。下痢止めの薬を使うと腸の動きが抑えられて、ウイルスが排出されにくくなって治りが遅くなります。おう吐が治まり水分をとれるようになったら、脱水を防ぐために経口補水液やスポーツドリンクで水分や電解質を少量ずつこまめにとります。
感染予防の基本・手洗い
感染予防・調理の際の注意点について知りたい方はこちら
身近な人が感染した場合の対処
まず人を遠ざけ、部屋の換気をします。そして、掃除や消毒をするときには、吐いたものに直接触れたり、飛散したノロウイルスを吸ったりするのを防ぐために、使い切りの手袋やマスクなどを着用してください。
ノロウイルスはアルコールで消毒することができません。家庭用の塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウムが含まれているもの)を用意します。
- 汚れ(おう吐物や便)を拭くためには、高濃度希釈液を使います。
■作り方:塩素濃度が5%程度のものは水で50倍、1%程度のものは水で10倍に薄めます。 - 汚れを拭いたあとの消毒や、感染した人が触ったものの消毒には、低濃度希釈液を使います。
■作り方:塩素濃度が5%程度のものは水で250倍、1%程度のものは水で50倍に薄めます。



感染した人が触ったものは、低濃度希釈液とペーパータオルで拭きます。色落ちや金属の腐食を防ぐために、消毒して10分ほどたったら水拭きします。掃除や消毒が終わったら、手袋やマスク、掃除に使ったペーパータオル、おむつなどはポリ袋に入れたうえで高濃度希釈液をゴミ全体にかかるように注ぎ、密封して燃えるゴミに出します。
ノロウイルスなどの感染症胃腸炎を広げないための汚物処理法やホームケアについてはこちら
夏以外も注意が必要!食中毒
食中毒になると「腹痛」、「下痢」、「吐き気やおう吐」、「発熱」、「血便」などの症状が起こります。カンピロバクターが原因の場合は、1000人に1人の割合で、「手足のまひ」や「呼吸困難」などを起こす「ギラン・バレー症候群」を発症する場合もあり、重症化すると、命に関わることもあります。
生肉や生魚に要注意! 食中毒の原因菌と感染源
食中毒は、主に細菌が原因となって起こります。食中毒を起こす主な細菌と[感染源]は次の通りです。
(1)カンピロバクター[鶏・牛]
(2)サルモネラ[鶏・卵]
(3)腸炎ビブリオ[魚]
(4)O-157(腸管出血性大腸菌)[牛]
(5)ウェルシュ菌[豚・牛・鶏]
(6)黄色ぶどう球菌[人]
食中毒の予防法


食中毒の対処法

小さなお子さんは、大人よりも重症化しやすいので、すぐに病院を受診してください。
気をつけなければならないのが、下痢の症状があるからといって、「下痢止め」を使ってしまうことです。下痢は、体に害となる物質を排除するための生理的な反応です。下痢止めによって腸の動きを止めると、菌自体や細菌の作り出した害となる物質を排出しにくくなります。下痢止めは使用しないようにしましょう。
命の危険も!脳の病気が引き起こす吐き気・おう吐
吐き気・おう吐を伴う病気として特に危険なものは、くも膜下出血や脳腫瘍など命に関わる脳の病気といった命の危険がある病気が潜んでいることもあります。
くも膜下出血
くも膜下出血とは、脳の太い血管に動脈瘤と呼ばれるこぶができ、そのこぶが破裂して出血する病気です。くも膜下出血になると、バットで殴られたような激しい頭痛に突然襲われ、吐き気やおう吐を伴う場合もあります。患者さんの3分の1が亡くなり、3分の1に重い後遺症が残り、社会復帰できるのは3分の1といわれています。吐き気・おう吐の程度によっては病院など医療機関で検査や治療を受けるようにしましょう。
脳腫瘍
脳腫瘍は、頭蓋骨の中にできるすべての腫瘍を指します。タイプによって症状や治療法が異なりますが主な症状は下記の通りです。
- 「起床時の頭痛」
- 「吐き気がないのに突然起こるおう吐」
- 「片側だけに起こるしびれや運動まひ」など
ほかにも発生する部位によって特有の症状が現れます。
脳腫瘍は多くの場合、サインとなる症状が初期から現れます。良性でも悪性でも違いはなく、同じような症状が出るため、悪性である可能性を考えて、できるだけ早く受診することが大切です。
薬の副作用による吐き気とおう吐
吐き気やおう吐は、薬の副作用として現れることもあります。
抗がん剤
がん治療のひとつに抗がん剤治療があり、吐き気などの副作用に苦しめられる人もいます。
抗うつ薬
うつ病は、脳の神経細胞の働きに異常が生じることで起きると考えられています。抗うつ薬は、神経細胞間で情報を伝える神経伝達物質の働きを高める作用があるため、うつ病の症状を改善させることができます。
抗うつ薬の種類にはいくつか種類があり、その種類によってさまざまな副作用があります。

抗うつ薬の副作用は、服用を開始して最初の1~2週間に強く出ることが多く、それ以降は治ってくることがほとんどです。また、抗うつ薬の効果が現れるまでに日数がかかることもあり、初めのうちは副作用だけが感じられることがあります。
「薬をのんだらかえって具合が悪くなった」と治療を中断せず、副作用がつらい場合は医師に相談するようにしてください。
抗うつ薬の種類や効果、副作用、正しい使用法について詳しく知りたい方はこちら
鉄欠乏性貧血の治療薬
鉄欠乏性貧血の治療は、不足している鉄を補うために「鉄剤」を使用するのが基本です。
鉄剤の副作用として、吐き気、胃痛、下痢などの胃腸障害や発疹がみられることもあります。
副作用が強い場合には、服用する薬の種類を変更する、服用するタイミングを変更するなどして対応します。

鉄欠乏性貧血の治療、鉄剤の効果・副作用と食生活による改善について詳しく知りたい方はこちら
その他の吐き気・おう吐の原因となる病気の例
吐き気・おう吐は、さまざまな病気のサインとしても現れます。