【Q&A】60代の適正な睡眠時間は?不眠に対する対処法について

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定年退職後3年ぐらいたったある日を境に、突然まるで眠れなくなってしまいました。
特段の理由は見あたりませんでした。
すぐに地元の内科医を訪ね軽い睡眠薬を処方していただきましたが、2、3か月たっても変わらなかったため、睡眠の専門医にお世話になり、生活習慣の改善などをはかりました。
しかし一向に症状は改善せず今に至っております。
現在は処方していただいている薬でなんとか睡眠をとっています。
普段運動も欠かさず、趣味や夫婦での個人の海外旅行等の活動もしており、孫にも恵まれ、精神的ストレスを受けている状況もありません。
加齢により脳の機能が一部損なわれたものでどうしようもないものとあきらめておりますが、何かご助言はいただけますでしょうか?(66歳 男性)

専門家による回答

夜によく眠れずに休養がとれないというのはとてもつらいものです。日本における住民調査では、60歳を越すと30%くらいの方が良く眠れないことがしばしばであると答え、不眠の頻度が、50代までの人と比べてと比べ1.5倍になることが報告されています。こうなると、よく眠れないのは年のせいで仕方ないと思ってしまうこともあるでしょう。しかし、実際は半分以上の人は不眠ではないのです。年をとったから脳の機能が損なわれて眠れなくなっていると考える必要はありません。睡眠習慣を見直して、眠りに対する意識を変えることが良い眠りを取り戻すのに大切です。
ストレスもなく健康に大きな問題もないのによく眠れない人にお話をよく聞くと、不眠の原因で大きいのは、やはり睡眠習慣の問題です。どのように眠れないのかによって違いますが、定年後に起こってくる不眠の原因で多いのは次のような場合です。
時間に余裕ができたからと、眠たくない早い時刻から就床すると、寝つきが悪くなります。例えば仕事をしている時にはいつも23時半に就床して6時に起床していた人が、例えば22時に就床すると、いつも眠りにつく時刻、つまりこの人では23時半まで、なかなか寝つけないのが普通です。そうなると、寝床に入って1時間半寝つけない苦しみを味わってしまうのです。私たちがいつも休む時刻に自然に寝つけるのは、その時刻になるころに、体内時計の働きで眠りの準備が自然に始まっているからです。寝床に入ったから眠れるわけではありません。寝つきは時刻と関係しているのです。
ゆっくり休んだ方がよいと思って長い時間寝床で過ごしていると、睡眠が浅くなり、何度も目が覚めるようになります。40~60代くらいですと健康な人の睡眠時間は、6時間ないし6時間半くらいです。これが脳と体が必要としている睡眠時間です。これよりたくさん眠ろうとしても健康な人であれば眠れないのが普通です。例えば、それまで6時間半くらい寝床で過ごし、よく眠れていた60代の人が、8時間寝床で過ごすようになったとします。そうすると、この差の1時間半くらい夜中に目が覚めるようになったり、全体に浅くなったりして、朝起きた時の休息感はかえって減ってしまいます。こうした場合には、働いていたころを参考にして、徐々に遅寝早起きにして行くことで、よりよい睡眠感が得られるようになってきます。
最近の一般住民調査では、睡眠時間は6時間台ないし7時間台の人が最も健康で、それより短い人も長い人も病気のリスクが高いことが分かっています。睡眠時間は普通が一番で、不足するのも良くありませんが、欲張っても健康になるわけではありません。どうも中庸が一番ということになると思います。

(2018年3月12日(月)、15日(木)放送関連)

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