漢方薬による治療 効果と診断方法、症状別の処方について詳しく解説

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漢方薬が役立つケース

漢方薬は、植物や鉱物、動物などの天然成分を加工した「生薬」を組み合わせたもので、さまざまな種類があります。生薬の成分が体内で複合的に作用することで、さまざまな症状を改善します。いくつかの症状がある場合も、基本的には1種類の漢方薬で治療します。

一方、より一般的な薬である西洋薬は、そのほとんどが人工的に合成された化学物質を主原料としており、複数の症状がある場合は、それぞれの症状に対して効果のある薬が併用されるのが一般的です。このように、漢方薬と西洋薬は成分や使用法が異なり、それぞれに得意分野があります。

漢方薬が役立つケース

漢方薬が役立つことが多いケースは、主に5つあります。

  • ケース1
    自覚症状があるのに、医療機関で「異常なし」「原因不明」などと診断された場合。この場合、西洋医学では治療の対象とならないことがありますが、漢方薬であれば、患者さんの体質や状態に合わせて選ぶことができます。

  • ケース2
    病名を診断されたが、有効な西洋薬がない場合。

  • ケース3
    「不眠」と「イライラ」がつらいなど、心身の両方に症状がある場合。漢方では体の症状だけでなく、感情やストレスなどといった精神的な症状も治療対象となります。

  • ケース4
    「疲れやすさ」と「冷え」など、さまざまな症状がある場合。

  • ケース5
    使用している西洋薬が多い場合。特に高齢者の場合、副作用が起こりやすくなり、そのために西洋薬の使用が難しくなることがあります。

漢方薬による治療を希望する場合

実際にこうした悩みがあり、漢方薬による治療を希望する場合は、まず主治医に相談してください。そのうえで漢方の専門医への受診を希望する場合、日本東洋医学会のホームページから、専門医を検索することができます。

検索のしかたは、まずトップページで「一般の方はこちら」をクリックし、次のページで「漢方専門医の検索」をクリックします。そうすると、都道府県別などの条件で専門医を検索できるページになります。

漢方の診断

漢方の診断

適切な薬の処方には、適切な診断が欠かせません。その方法も、漢方と西洋医学では大きく異なります。患者さんの症状に対して、西洋医学では心と体を分けて考え、体はさらに臓器や期間ごとに分けて考えます。そして、病気の原因を探して、見つかれば病名が確定します。そして、治療は腰痛なら腰に対して、便秘なら腸に対してというように、部位を絞って行うのが一般的です。

一方、漢方医学では心と体を1つのものとして捉え、病気は心身の働きのバランスが崩れたときに起こると考えます。そのため、漢方薬で心身全体のバランスを整え、自然に治癒する力を高めることで症状の改善を促します。そのために、漢方では、まず患者さんの体質と心身の状態を診ます。そして、その結果をもとに、患者さんに合った漢方薬を見立てていきます。

漢方

体質は「陰・陽・虚・実」という概念で表し、診断します。
「陰」は、寒がりで、顔色が青白く体温は低めで、食欲があまりないようなタイプです。「陽」は逆に、暑がりで、顔色が紅潮しやすく体温は高めで、冷たいものをよく飲んだり食べたりするようなタイプです。「虚」は、体力がなくて疲れやすく、胃腸が弱くて、どちらかというと下痢をしやすいタイプです。「実」は逆に、体力があって無理が効きやすく、胃腸が強くて、どちらかというと便秘をしやすいタイプです。たとえば、「あなたは陰で虚です」「あなたは陽で実です」というように診断されます。

心身の状態

心身の状態は「気・血(けつ)・水(すい)」という概念で表し、診断します。
「気」は、いわば元気の"気"で、心身全体のエネルギーのことです。「血」は、血液とその流れを指します。「水」は、リンパ液や消化液など体内を循環する血液以外の水分のことです。この「気・血・水」のいずれかでも量が不足したり、流れが悪くなったりすると、心や体の不調が起こると考えます。

気・血・水

たとえば、疲れやすさや食欲不振があれば、気の量が不足している「気虚(ききょ)」と診断されます。顔色の悪さや頭痛、肩こりがあれば、血の巡りが悪い「瘀血(おけつ)」と診断されます。体のどこかにむくみがあれば、水の流れが滞る「水滞(すいたい)」と診断されます。

漢方の診察方法

漢方では、次のような方法で診察が行われ、体質や心身の状態が診断されます。

望診(ぼうしん)

顔色、表情、皮膚・唇・歯ぐきなどの色つや、体つき、爪、歩き方などを目で見て診察します。特に、舌の状態を重視します。

舌の状態

たとえば、舌の先が紫色になっている場合は、血の巡りが悪い「瘀血」、舌に歯形がくっきりついている場合は水分の流れが滞る「水滞」と診断されます。

聞診(ぶんしん)

声の大きさや張り、話し方、呼吸音、せきの音などを聞きます。体臭や口臭がある場合も、判断材料となります。

問診

自覚症状や全身の状態について、医師が患者さんに質問をします。具体的には、冷え、のぼせ、のどや口の渇き、汗のかき方、めまい、便通や排尿の状態、だるさなど、診察でみただけではわからない自覚症状の訴えが重視されます。

切診(せっしん)

手で体に触れて調べます。特に、手首の脈を診る「脈診」と、おなかを触る「腹診」が重要です。

脈の状態

脈診では、脈の打ち方がしっかりしているか、弱々しくないかなどを診ます。たとえば、脈が遅ければ、寒がりな「陰」、脈を触って反発力が感じられれば、体力のある「実」と診断されます。

おなかの状態

腹診では、腹部の弾力や緊張感、押したときに痛みを感じるかなどを診ます。たとえば、おなかを触るとチャポチャポと音がする場合は、水分の流れが滞る「水滞」と診断されます。

漢方薬の処方

診察により体質や心身の状態を診断されたら、それに応じて漢方薬が選ばれます。

漢方薬の処方

たとえば、「陰」と診断された場合は「人参(にんじん・オタネニンジンを乾燥させたもの)」など体を温める生薬の入った漢方薬が使われることが多く、「陽」と診断された場合は「石膏(せっこう・硫酸カルシウム)」など体を冷ます生薬の入った漢方薬が使われることが多いです。

漢方薬の処方

たとえば、気の量が不足している「気虚(ききょ)」と診断された場合、「気」の取り込みをよくすると考えられている「人参」の入った漢方薬などが使われます。血の巡りが悪い「瘀血(おけつ)」と診断された場合、血の巡りをよくすると考えられている「桃仁(とうにん・桃の種)」の入った漢方薬などが使われます。水の流れが滞る「水滞(すいたい)」と診断された場合、「蒼朮(そうじゅつ・オケラという植物)」の入った漢方薬などが使われます。

漢方薬の使い方ですが、慢性的な症状に対しては、多くの場合、処方された漢方薬をまず2週間ほど服用します。症状が改善に向かっている場合はそのまま服用を続けますが、症状に変化がなかったり、悪化した場合は別の漢方薬に切り替えます。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2019年6月号に詳しく掲載されています。

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