骨盤臓器脱(子宮脱)の対処法と効果的な装具(ペッサリー・サポート下着)

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症状が軽い場合に自分でできる対策

骨盤臓器脱は、症状が軽い場合は、日常の生活で自分で行うことができる対処法があります。症状の改善と悪化予防が目的の「骨盤底のケア」が中心となります。自分でできる対処法は「生活の工夫」、「指で押し戻す」、「骨盤底筋トレーニング」です。

「生活の工夫」と「指で押し戻す」

自分でできる対処法

「生活の工夫」としては、3つあります。重いものを持たない、便秘で力まない、体重を増やさないです。この3つを「3ない」と言って、お勧めしています。重いものはなるべく他の人に持ってもらいましょう。また便秘で力むと余計に臓器が下がってくるので、便秘対策はとても重要です。

「指で押し戻す」のは、たとえばトイレで排尿の前や座る前に腟(ちつ)から臓器が出てきたときです。指で優しく押し戻します。そうすると尿も出やすくなります。腟を触ってはいけない、バイ菌が入ると考えがちですが、出てきたものを放置していると、血流が悪くなって症状がますますひどくなってしまいます。

骨盤臓器脱に効果的な運動「骨盤底筋トレーニング」

骨盤臓器脱に効果的な自分でできる運動は、骨盤底筋トレーニングです。骨盤底の緩んだ筋肉を鍛えて症状を改善し、悪化を予防する運動で、肛門や腟を意識的に締めたり、緩めたりします。

「骨盤底筋トレーニング」どこの筋肉を鍛えるのか

「骨盤底筋トレーニング」どこの筋肉を鍛えるのか


恥骨(ちこつ)の後ろ側に筋肉があり、指で恥骨を触りながら、ギューと後ろ側の筋肉を締めるという意識をもちます。

「骨盤底筋トレーニング」のやり方

骨盤底筋トレーニング
①締める
骨盤底筋トレーニング
②締めながら持ち上げる

[1回の運動:5秒から10秒くらい行う]

  1. 穴をすぼめるようなイメージで尿道や腟、そして肛門を締めます。おならを我慢するような感じです。
  2. 骨盤底筋をギュ―と締めながら、骨盤底筋を頭の方向に引き上げます。1・2・3・4・5・6・7・8、と数えます。締め続けながら、さらにギュ、ギュ、ギュと3回、固く締めてください。
  3. 同じくらい休みましょう。

※立った姿勢で行う場合は、ころばないように椅子などにつかまり体を支えてください。
※足を肩幅くらいに開いて、足を軽く曲げてください。力を抜いてリラックスします。

【トレーニングのポイント】

  • 骨盤底筋トレーニングの回数:10回を1セット、1日に5セット。
  • 大体、2~3か月すると効果が出てきます。
  • トイレの後、お風呂に入ったとき、横になって行うこともできます。座っても、寝ても、立ってもできる運動なので、生活の中に取り込むことがとても大切です。
  • 医療機関では、専門家の指導や専用の機械で調べるバイオフィードバック療法を受けることもできます。

効果的な装具「ペッサリー」

効果的な装具「ペッサリー」

骨盤臓器脱が軽度の場合や手術の希望がないときの治療方法です。ペッサリーは、腟に入れて下がっている膀胱や子宮などを支えます。

最初に医療機関でフィッティングを行います。形やサイズはいくつかあり、症状や腟の大きさなどによって適切なサイズを選びます。医療用のシリコンで安全な素材です。

※はじめに医療機関で指導を受けてください。
※リングペッサリーというタイプのみ保険適用です。

[ペッサリーの使い方]

  • 長期間入れておく:医療機関を定期的に受診、交換してもらう。
  • 自己着脱:自分で朝ペッサリーを腟に入れて、夜取り出す。

「リングペッサリーの使い方」自己着脱

ペッサリーの使い方
①子宮脱の症状の場合

ペッサリーの使い方
②指で子宮を押し込む

ペッサリーの使い方
③リングペッサリーを自分で腟の中に入れ、適切な位置に

①腟から出ている臓器を、②指でぐっと体の中に押し込みます。
③リングペッサリーに人差し指をかけて、縦にして真っすぐ腟の中に入れます。腟の中に入るとリング自体が回転をして自然に奥に入っていきます。あとは指で少し押して、適切な位置にリングが収まるようにします。

リングが自分の腟サイズに合っていれば、適切な位置で留まっていることができます。

効果的な装具「サポート下着」

効果的な装具「サポート下着」

サポート下着は、日常生活で普段着けている下着の上からはきます。骨盤臓器脱では、臓器が下がってくる下垂感や股の間の違和感などがありますが、サポート下着は、それを骨盤底の下から支える機能がしっかりあるので安心感があります。

「サポート下着」着用前後の変化

「サポート下着」着用前後の変化

[左側の図]
何も下着をつけていない状態で膀胱(ぼうこう)の中の造影をしながら、膀胱の位置を確認したものです。膀胱瘤(りゅう)といって、こぶのようになった部分が落ちてきているのがわかります。

[右側の図]
骨盤底のサポート用の下着をはいて、造影をとったものです。はいただけで、こぶで下がっていた位置が上がり、膀胱自体の位置が上がることが明らかになります。
※サポート下着は、自費購入です。

生活の工夫や自分でできる運動、装具で改善するという骨盤臓器脱の治療は、手術を受けたくない人や手術が困難な状況では、とても良い選択肢になります。しかし、根本的な治療を考えたいときには、医師や医療機関などに相談し、手術についても検討する必要があります。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2019年4月 号に掲載されています。

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この記事は以下の番組から作成しています

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    腟(ちつ)から臓器!安心できる対処法「どんな症状?初期の治療法」
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