わが道を行くような行動をする「前頭側頭型認知症」 家族の接し方やケアが生活維持のカギ

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「前頭側頭型認知症」とは

前頭側頭型認知症とは

前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉や側頭葉が萎縮することで起こる認知症です。前頭葉が萎縮すると、「毎日同じ時刻に同様の行動をとる」、「同じ食べ物・特に甘いものにこだわる」、「周囲の状況にかかわらず突然立ち去ってしまう」など"わが道を行く"ような言動が現れます。

前頭側頭型認知症の症状例

たとえば、大雨なのにも関わらず午前10時になるといつも行く店に行ったり、毎日同じドーナツばかり食べたりします。こうした同じことを繰り返す症状を「常同行動」といいます。

側頭葉が萎縮すると、「言葉の意味がわからなくなる」などの症状が現れます。進行に伴い、萎縮は脳全体に広がっていきます。発症年齢はアルツハイマー型認知症に比べると若い傾向にあり、もの忘れの症状はそれほど強くありません。そのため、周囲の人からは「人が変わってしまった」などと思われていることがよくあります。前頭側頭型認知症は、進行を抑えるような薬はありません。家族など周囲の人が適切なケアや接し方をすることが、本人や家族が穏やかな生活を続けるための対処の基本となります。

家庭でも実践できる「ルーチン化療法」

この病気の特徴である、「何かにこだわる」「同じことを繰り返す」という常同行動を活用して行うのが、「ルーチン化療法」です。一部の介護施設や医療機関で行われていますが、家庭でも行うことができます。これは、生活していく上で困る常同行動を、日常生活に支障を来さないものに置き換えていく方法です。

たとえば、毎日散歩に行って同じ自動販売機の甘い飲み物を買って飲むために、健康管理に問題が生じている場合、散歩に行くはずの時間をデイサービスに行く時間に変えるといったことです。

ルーチン化療法 作業の例

新しい行動は、これまでの患者さんの生活の中から向いていると思われる作業や活動を考えます。たとえば編み物や折り紙、パズル、ビデオ鑑賞など、さまざまですが、この病気の人は道具を上手に使えることが多いです。作業が、「集中して行えているかどうか」、「楽しそうに行えているかどうか」などを観察し、集中して楽しく行える作業を続けてもらうことが大切です。

家族の接し方 10か条

患者さんや家族が日常生活を穏やかに過ごすために重要なのが、家族や介護をする人がこの病気の特徴を知って「適切な接し方」をすることです。接し方の工夫は、介護をするうえでの負担を軽減し、よりよい介護も可能になってきます。以下は、介護の現場での多くの実例から導き出された前頭側頭型認知症のケア10か条です。できる範囲で実践してみるとよいでしょう。

家族の接し方10か条
大阪市福祉局高齢者施策部高齢福祉課 発行「認知症の医療・介護に関わる専門職のための前頭側頭型認知症&意味性認知症こんなときどうする!」より引用

①自然体で接する

介護をする人が緊張したり、不安に思ったりしてしまうことがあるが、できるだけ自然体で接すようにしましょう。そうすることで患者さんの感情も安定しやすくなり、介護をする人の負担も減ります。

②症状の特徴をケアに生かす

常同行動に対してはルーチン化療法を実践するなど、症状の特徴を生かして対処することが大事です。

③「周徊(しゅうかい)」は放置しない

周徊とは、本人が決めた特定のルートを毎日歩き回ることです。疲れていても歩き続けるため、骨折やけがをしてしまうことがあります。たとえば、「3時は家で一緒におやつ」と決め、常同行動にすると、家に帰ってくるようになります。

④しっかりと行動を観察

患者さんに適したケアを見つけるためには、毎日どのように行動し、何に興味を示しているかなど、行動パターンを知り、手がかりを得ることが大切です。

しっかりと行動を観察
しっかりと行動を観察

たとえば、特定のメーカーの、特定の種類の缶コーヒーを飲むことが常同行動となっているため、店頭にある缶コーヒーをその場で開けて飲んでしまう場合、店員に病気である事情を説明しておくようにします。また家族が定期的に代金を払うなどの対処することでトラブルになるのを防ぐことができます。

⑤本人の「これまでの生活」を振り返る

どんな仕事をしていて、何が趣味だったかなどもケアの大きなヒントになります。

家族の接し方10か条
大阪市福祉局高齢者施策部高齢福祉課 発行「認知症の医療・介護に関わる専門職のための前頭側頭型認知症&意味性認知症こんなときどうする!」より引用

⑥コミュニケーションの方法を工夫

この病気は、言葉だけでメッセージを伝えることが次第に難しくなります。手招きなどのジェスチャーや、直接物を見せるといった視覚に訴える方法が有効です。

⑦環境を整える

患者さんは、周囲の人の行動や声、あるいはざわめきなどに反応しやすく、突発的な行動をとることがあります。たとえば、食事や作業は、静かな場所で行ったり、集中できるスペースを作ったりするなどの工夫をするとよいでしょう。

⑧無理強いや強引な制止をしない

患者さんの記憶力は比較的保たれるため、嫌な記憶が残り、そのあとの関係が難しくなってしまうことがあります。

⑨得意なことを生かす

患者さんが日課にできるよう、得意だったことをするように促してみるとよいでしょう。

⑩食行動の変化を見落とさない

甘いものや濃い味を好むようになる、同じ料理や食品にこだわるようになる、過食になるなどの変化が現れることが多くあります。生活習慣病などを防ぐためにも、対処が必要です。甘いものは多く買っておかない、視界に入らない場所にしまっておくなどの工夫をしましょう。また、甘いものを食べすぎる場合、「毎日決まった時間に甘いものを少量渡す」ようにすると、甘いものへのこだわりが次第に減ることがあります。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2019年4月号に詳しく掲載されています。

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