運動の健康効果「心臓・血管を若々しく保つ」

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歩行時間と死亡リスク

歩行時間と死亡リスク

日本人約7万人を10年間追跡した研究によると、毎日30分歩く人と1時間以上歩く人を比較した場合、1時間以上歩く人は、脳の血管が詰まる脳梗塞で死亡するリスクが3割近く減少し、心筋梗塞を含む心血管疾患で死亡するリスクは2割近く減少するという結果が出ています。運動というと、スポーツを思い浮かべるかもしれませんが、歩くだけでも効果があるのです。運動は英語で「マジック・ピル」魔法の薬とも呼ばれています。運動は健康によく効く薬で、特に心臓血管に良いことがわかっています。

運動+生活活動=身体活動

運動+生活活動=身体活動

普段、運動と呼んでいるものは、スポーツなどのいわゆる「運動」と日常生活の中の「生活活動」に分けられます。運動と生活活動を合わせて「身体活動」と呼んでいます。身体活動は「強度」によって分けられます。低強度の身体活動には、運動ではストレッチング、生活活動では立位、オフィスワーク、洗濯、炊事などがあります。中強度以上の身体活動には、運動では速歩、ジョギング、テニス、水泳など、生活活動では歩行、階段の上り下り、床そうじ、子どもと遊ぶ、庭仕事などがあります。心臓・血管には、中強度以上の身体活動が効果的と言われています。

心臓・血管への健康効果1 血管の拡張・血圧の低下

心臓・血管への健康効果1 血管の拡張・血圧の低下
心臓・血管への健康効果1 血管の拡張・血圧の低下

心臓・血管への運動の健康効果は複数あります。一つは「血管の拡張・血圧の低下」です。中強度の運動をすると、心拍数が増えて血流が増加します。すると、血液と血管の摩擦が増え、血管の内膜から一酸化窒素「NO」が分泌されます。NOが血管の平滑筋という筋肉に作用すると、筋肉がゆるんで血管が広がります。血管が広がると血圧が下がります。血圧が下がると心臓への負担が減ります。これまでの研究で、習慣的に運動を行うと、上の血圧が5mmHg前後下がることがわかっています。これは食事で減塩をしっかり行うのと同じ程度で、とても大きな効果です。

心臓・血管への健康効果2 血液凝固性の低下

心臓・血管への健康効果2 血液凝固性の低下

次に「血液凝固性の低下」があります。血液が固まりやすいと血栓ができやすくなり、脳梗塞心筋梗塞の原因になってしまいます。運動をすると、運動した後に自律神経の一つである交感神経の緊張が低下し、副交感神経が働くことによってリラックスモードになります。すると血液を固める血小板の働きが抑えられるのです。その結果、血液が固まりにくく、血栓ができにくくなります。

心臓・血管への健康効果3 動脈硬化の予防

心臓・血管への健康効果3 動脈硬化の予防

もう一つは動脈硬化の予防です。動脈硬化が起きると、悪玉と呼ばれるLDLコレステロールが血管の壁の中にたまってコブを作り、血管を狭くしてしまいます。そして、このコブが破れると血栓ができて血管を詰まらせてしまいます。しかし、運動をすると、善玉と呼ばれるHDLコレステロールが血液中に増えます。HDLコレステロールは血管の壁にたまった悪玉コレステロールを回収して、動脈硬化を進みにくくしてくれます。

運動の目安 18~64歳

運動の目安 18~64歳

心臓・血管に良い運動の目安は、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準2013」によると、18歳から64歳の人は、中強度以上の身体活動を1日1時間。そのうち、汗をかくような運動を週に1時間行うことが推奨されています。

運動の目安 65歳以上

運動の目安 65歳以上

65歳以上の人は、強度を問わず、1日40分の身体活動を行うことが推奨されています。高齢者の場合は中強度以上の運動は危険な場合もあります。低強度の身体活動・運動は危険性が少なく比較的安全なため、強度を問わない身体活動を推奨しています。

不活動時間の悪影響

不活動時間の悪影響

座っている「不活動」の時間が長いほど、健康に良くないことがわかってきています。50歳~79歳の女性7万人を追跡したアメリカの研究では、1日1時間歩く程度の身体活動をしている人たちでみると、1日10時間以上座っている人は、心筋梗塞などの虚血性心疾患のリスクが高くなっています。座り続ける生活は良くないことがわかってきているため、立ったり、家事をするなどの低強度でもいいので、こまめに体を動かすことが大切です。