透析開始の原因は糖尿病が最も多い
腎臓の働きが徐々に低下していく慢性腎臓病。最後まで進行すると、透析などの治療によって腎臓を代替しなければなりません。

慢性腎臓病は、腎臓自体の病気である慢性腎炎や、生活習慣病の糖尿病や高血圧が原因になります。透析を新たに開始する原因を1年ごとに調べると、以前は慢性腎炎が最も多かったのですが治療の進歩などによって減ってきました。一方、現在では糖尿病が最も多く43%を占めています。
腎臓のカナメ 糸球体が壊れる
糖尿病は血液中のブドウ糖の濃度が異常に高くなる病気です。それにより全身の血管がさまざまに障害されます。腎臓は血管のかたまりのような臓器であるため特に障害されやすく、腎臓のカナメともいえる糸球体が壊れていきます。


糸球体は0.1~0.2mmの非常に小さい組織で、細い血管が糸玉のようになっています。腎臓には無数の糸球体があり、そこに全身の血液が流れ込みます。糸球体の血管にはたくさんの小さな隙間があり、ふるいのように働いて血液がろ過され、尿のもとになります。これには老廃物などが多く含まれています。

上は糖尿病が原因で慢性腎臓病になった人の糸球体を捉えた画像です。糸球体の入口の血管が拡張し出口の血管が収縮するという異常が起こっています。


そのため、糸球体内が高圧になり、糸球体が壊れ始めます。また、通常ほとんどろ過されない血液中のたんぱくが、高圧によって糸球体から尿に漏れていきます。このたんぱくが一定量を超えると、健康診断の尿検査で「たんぱく尿」として検出されます。
糖尿病の人はアルブミン尿の検査を
慢性腎臓病は健康診断(特定健診)で調べる たんぱく尿または血液中のクレアチニン値によって発見されます。しかし糖尿病が原因の慢性腎臓病は、それだけでは早期発見できません。なぜなら、多量のたんぱく尿が検出される以前から糸球体が壊れ始めるからです。

早期の段階では、たんぱくの主成分であるアルブミンがごくわずか尿に混じります。その「アルブミン尿」の検査が早期発見には不可欠なのです。

アルブミン尿は健康診断では検査しません。そこで糖尿病の人は受診先などでアルブミン尿の検査を3か月から1年に1回受けてください。実際には受けていない人も多いのですが、意識を改めなければなりません。