「"ふつう"は人の数だけある、を前提に」 番組プロデューサーが語る、制作に込めた思い

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発達障害の「困りごと」を抱えた当事者の経験を、2分間のアニメで表現する「ふつうってなんだろう?」が、11月11日から総合テレビとEテレの番組と番組の間、いわゆるスポットで放送されます。
各話それぞれ異なる症状で悩む5人が登場し、「ご本人」がナレーションを担当。アニメも毎回違う方が制作をしており、個性豊かな映像になっています。

今回は佐藤正和プロデューサーに、
制作エピソードやこのアニメーションに込めた思いを伺ってきました!

当事者しか分からない感覚を、アニメで表現する

――登場する5人は、それぞれどんな症状と闘っているのでしょうか?

文字を読むのが苦手だったり、「アスペルガー症候群」を周囲から理解してもらえないことによる「うつ」と「睡眠障害」、「コミュニケーション障害」、味覚・聴覚・視覚の「感覚過敏」、注意して話を聞いていても、突然音声が聞こえなくなってしまう...などの症状です。

――制作する上で心がけたことは?

いまその症状を抱えている方のリアルな声で「僕は世の中をこういう風に見ています」「日常生活でこんな困難を抱えています」とご本人の口で伝えてもらうことを、ひとつ大きなミッションとして捉えました。

そして僕らはもちろんのこと、ご本人たちもふくめて意識し続けていたのが「発達障害を知らない人に、端的にわかりやすく伝えるための表現として合っているか?」ということです。その落としどころを双方で見つけていく作業は、なかなか大変でした。けれど、絵や音でビジュアル化することでご本人たちにも「ああ、自分はこんな感じ方をしているのか」と新たな発見があったそうです。

制作の流れとしては、はじめに5人へじっくり取材をし、その内容を2分間分のナレーション台本に落としこんで細かい調整を行いました。この取材を通じて、発達障害に悩まされているみなさんが、これまでどれだけ辛く苦しい思いをしてきたのか、改めて痛感しました。
ただ、今回は各2分という限られた時間のなか、発達障害の実情を重く描いて"かわいそう"で終わるだけにしたくなくて。この症状を持った方々が、「独自の感覚や捉え方をする」ということ、そして魅力ある素敵な方たちであることを中心にお届けしたいと、当事者のみなさんに事前にお伝えし、ご了解いただきました。

――アニメーションの絵は、5人のクリエーターが担当したそうですね。

2020年以降の日本のアニメーション業界を背負っていくような、新進気鋭の若手作家さんたちです。彼らには、僕たちが取材した内容や写真を共有し、そこからキャラクター案を練っていただきました。

普通、作家さんって自分の作品に対していろいろ言われるのは嫌がる方が多いと思うのですが、今回タッグを組んだみなさんは「むしろ言ってほしい、一緒に作りたい」とおっしゃられて、主人公となった彼らと何度も何度もコミュニケーションを取りながら一緒に制作を進めていました。

ふつうってなんだろう?
ふつうってなんだろう?

――具体的に、作家さんとご本人たちの間ではどんなやり取りがあったのですか?

例えば「感覚過敏」を抱えているフミヤさん。彼は味覚や聴覚が過敏で、例えばサラダを食べたときにラーメンとチョコレートをまぜたような食感を感じて、吐き出したくなるそうです。敏感であるが故にぬるぬるしたものとシャキシャキしたものを一緒に食べると、異物感が耐えられないと語ってくれました。

また、街を歩いていてもいろんな音が耳元で喋っているような感じで、ヘッドフォンをしていないと気が変になってしまいそうになると...。だから「こんなビジュアル表現でどうでしょう」「音の入れ方はどう?こんな効果音で感覚を表現するのはあっている?」と細かく確認をしていましたね。アニメーションだから感覚的なことが伝えられやすいというか、目には見えない、当事者にしかわからない"感じ方"を作家さんとご本人で共有しながら制作していました。

ふつうってなんだろう
しゃべっている声やタイヤの音など、気になるものは大きく描いて表現

ビジュアル化することで、新たな発見が!

――みなさん、ナレーション録りのときはいかがでしたか?

自分自身のことだけれど、ビジュアルキャラクターが生まれたことで、半分自分で半分自分じゃないみたいな不思議な感覚になり、「こいつの声を入れたらいいのね」と、人前で話すことが苦手な方もだいぶ言葉が言いやすかったようです。
だからみなさん、楽しみながらナレーションをしてくれました。実はアニメの中に主人公の友達も出てくるのですが、それは実際に彼らのお友達にやってもらったんですよ。

――最後に、観る方へメッセージをお願いします!

この2分アニメーションのラストは、毎回主人公が「私の"ふつう"、あなたの"ふつう"、ふつうって一体なんだろう?」と鼻歌のように語りかけて終わります。

発達障害を抱えている方は、みなさんこの"ふつう"に苦しんでいるんですよね。本当ならばその"ふつう"って個人の考え方でしかないのに、つい「ふつうだったらこんなことできるのに、なぜあなたはできないの?」「あなたってふつうじゃないよね」と得体のしれない"ふつう"というものさしで、他人を計りたがります。

でも、"ふつう"は人の数だけあるんです。それをまず前提にしましょうというメッセージをこの番組に込めました。発達障害を知らない方のなかに、この2分間を経て、新たなフィルターがひとつ出来れば幸いです。

「ふつうってなんだろう」全8話公開中!

#1 柳家花緑(47)のふつう

文字を読むのが苦手な落語家・花緑さんが「周りと違う」と悩んでいる子に伝えたいこととは?
アニメ/姫田真武

#2 ユウ(18)のふつう

アスペルガー症候群への無理解から怒られ続け、うつと睡眠障害に悩む高校生・ユウさんの「これからの夢」とは?
アニメ/水江未来

#3 サトシ(27)のふつう

子どもの頃から人の気持ちを読み取るのが難しく、コミュニケーションで悩んできた支援員・サトシさんが、いま子どもたちと接するときに心掛けていることとは?
アニメ/岡﨑恵理

#4 フミヤ(20)のふつう

ほかの人と感覚がちがうことで、周囲との差を感じてきたフミヤさん。
そんな彼が、いま伝えたいこととは...
アニメ/今津良樹

#5 ナオキ(15)のふつう

注意して話を聞いていても、突然聞こえなくなってしまうことがある中学生・ナオキくん。人との関わりをあきらめた彼が、再び人と関わるようになった理由とは...
アニメ/冠木佐和子

#6 ユウセイ(9)のふつう

みんなと野球がするのが大好きなユウセイくんは、自分の怒りをコントロールするのが苦手。でも2年前から、自分の中にひそむ「おこりんぼう」と向き合う修行を始めて・・・
アニメ/ミスミヨシコ

#7 学習障害(LD) ユウスケ(16)のふつう

手で文字を書くことが苦手なユウスケくん。でもパソコンを使えば"ふつうに"文字を書くことができるので高校を受験するとき、試験や入学後の授業でパソコンを使いたいと説明したが...
アニメ/中内友紀恵

#8 タカミ(29)のふつう

ステージで歌を歌う活動をしているタカミさん。幼い頃は、楽しいと思ったことは何でもマネをしていたが、友だちに注意され、それを封印した。やがて音楽と出会い、歌を追求する中でマネが「武器」になると気付き・・・
アニメ/大桃洋祐

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