動脈硬化をチェック・診断する検査(健康診断・最新の検査方法)

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動脈硬化脂質異常症高血圧胸が痛い動悸(どうき)がする息切れがする・息苦しい脳・神経胸・心臓

動脈硬化の危険度は検査でわかる

動脈硬化を観察できる2つの検査について

動脈硬化が進行すると心筋梗塞脳梗塞などの重い病気を招きます。そうした病気をどれくらい起こしやすいのか、検査を受けることで予測できます。
検査は大きく2つに分かれます。1つは一般的な健康診断です。血液検査などから自分が持つ危険因子をチェックできます。もう1つは医療機関で受ける検査です。動脈硬化を、さまざまな装置を使って観察します。

健康診断では脂質異常・高血圧・高血糖などをチェック

職場や自治体で受ける一般的な健康診断では、脂質異常・高血圧・高血糖がチェックできます。複数の数値に異常が見られる場合には、動脈硬化の疑いありと指摘されます。

脂質異常症

血液検査では、動脈硬化を進行させる危険因子を持っているかどうかがわかります。
脂質は、悪玉とも呼ばれるLDLコレステロール、善玉とも呼ばれるHDLコレステロール中性脂肪の3つを調べます。それぞれ空腹時に140mg/dL以上、40mg/dL未満、150mg/dL以上だと「脂質異常症」と診断されます。さらに、LDLコレステロール120~139mg/dLを境界域と言い、高血圧や高血糖など他の危険因子が多い人は、この値でも注意が必要です。

高血圧も動脈硬化を進行させる危険因子です。血圧が高いと血管が傷つけられて動脈硬化が進みやすくなるので、血圧を測って異常がないか確認します。
また、尿検査でたんぱく尿を調べます。血液検査でクレアチニン値を調べることもあります。どちらが異常でも慢性腎臓病が疑われます。慢性腎臓病も心筋梗塞や脳梗塞の危険因子です。

メタボリックシンドロームもチェック

メタボリックシンドローム

健康診断ではメタボリックシンドロームもチェックします。内臓脂肪の蓄積に脂質異常・高血圧・高血糖の2つ以上が重なった状態がメタボリックシンドロームです。へその上から腹囲を測り男性85cm以上、女性90cm以上だと内臓脂肪が蓄積していると判断します。メタボリックシンドロームも心筋梗塞や狭心症の危険因子です。

メタボリックシンドロームの判定でチェックされる脂質は、善玉のHDLコレステロールと中性脂肪だけで、悪玉のLDLコレステロールは診断基準に入っていません。そのため、LDLコレステロールだけが高い場合はメダボリックシンドロームと判断されません。しかし、LDLコレステロールが高いことは非常にリスクが高いことですので、油断をしないようにすることが大切です。

医療機関ではさまざまな装置で検査

動脈硬化を観察できる検査方法のまとめ

医療機関ではさまざまな装置を使い、動脈硬化がどれくらい進行しているかを調べます。次のような検査があります。

  • 体の外から動脈硬化を観察する:頸動脈(けいどうみゃく)エコー 眼底検査 CT MRI など
  • カテーテルを血管に挿入して行う:冠動脈造影 血管内超音波 OCT など
  • 血流や血管の硬さを調べる:ABI baPWV など

頸動脈(けいどうみゃく)エコー検査

頸動脈(けいどうみゃく)エコー検査

頸動脈エコー検査(超音波検査)は、首にゼリーを塗って器具を密着させて頸動脈を観察します。アテローム動脈硬化が進んでいると、「プラーク(コレステロールによってできた塊)」と呼ばれる隆起ができ、動脈が狭くなっている様子が確認できます。血管を観察する検査としては最も簡単で、医療機関の動脈硬化の検査では多くの場合、最初に行います。

頸動脈エコー画像

頸動脈エコー
画像:りんくう総合医療センター

1枚目の画像は正常です。血液が通る血管の内腔が広くなっています。
2枚目の画像では血管の壁に動脈硬化でできたプラークがあり、血管が狭くなっています。こうなると危険です。大動脈や心臓を取り巻く冠動脈でも同じように動脈硬化が進行し、心筋梗塞を起こしやすいと推測されるからです。また、超音波検査は画像で確認できるため、血管の厚さだけでなく形を見ることもできます。表面がもろくなっていたり、中が黒く抜けるようになっていたりする場合は、血栓ができやすい状態と判断でき、脳梗塞の危険があると言えます。頚動脈に血栓ができると、剥がれて脳の方に流れていき、脳の血管に詰まってしまう可能性があるからです。

眼底検査

眼底検査の画像

眼底検査は、目の網膜の状態を調べることができる検査です。目の網膜を映して、動脈を直接見ることができるので、動脈硬化の診断として活用されています。

血管の中央が白く輝いている「血中反射」の画像

動脈硬化が進行している網膜の動脈は、血管の中央が白く輝いて見えます。これを「血柱(けっちゅう)反射」と呼びます。

CT検査・MRI検査

CT検査

CT検査やMRI検査は、頸動脈のエコー検査でリスクが高いとわかった場合に行うことが多い検査です。CT検査では、装置の丸い穴の中を体が通過するときにX線が体の断面を撮影します。手から造影剤を注射して行います。

CT画像

CT画像
画像:りんくう総合医療センター

CTの画像では血管が立体的に描き出されます。高性能の装置が登場し、冠動脈のほか腹部の大動脈や脚の動脈も一緒に観察できます。冠動脈が動脈硬化で狭くなっていれば、かなり確実に発見できます。
例えば、1枚目の画像のように大動脈にこぶがあることや脚の動脈は狭くなっていることがわかったり、2枚目の画像のように冠動脈が狭くなっていることやカルシウムが沈着して石灰化していることがわかったりします。

MRI画像
画像:りんくう総合医療センター

MRI検査は、CTと同じような装置を使いますが、X線ではなく磁気を当てます。脳や脳の動脈を調べるのによく使われます。MRIのなかでも血管を目立たせるMRAという手法では、血液が流れているところが白く描き出されます。上の画像では、左側は正常な脳動脈です。右は凸凹していることに加えて、脳梗塞を起こして血流が完全に途絶えていることがわかります。こうした、脳梗塞にいたる前の、血流が少し低下している段階でも発見できます。早期発見ができれば、早期治療につながります。

冠動脈造影検査

冠動脈造影検査

冠動脈造影検査は、カテーテルという細長い医療器具を手首などの動脈から挿入して行います。心臓の入口まで到達させたカテーテルから、造影剤を冠動脈に注入し、心臓をX線で撮影します。

血管
画像:りんくう総合医療センター

画像では血液の流れているところが黒く写ります。血管が狭くなり血液の流れが悪くなっていれば、はっきり観察できます。血管が狭くなっているところがあれば、つまらないようにしていくことが必要になります。

血管内超音波検査

血管内超音波画像
画像:りんくう総合医療センター

冠動脈造影で血管が細くなっていることがわかった場合は、プラークの状態を調べるための血管内超音波検査を行います。

血管内超音波検査はカテーテルを冠動脈の中まで挿入して行います。カテーテルの先端から超音波を発生させ血管内のプラーク自体を観察します。上の画像は血管を輪切りにして見ています。動脈硬化があれば超音波の反射が異なるため画像の濃淡が変化します。正常な血管は内腔(ないくう)が広いのに対し、動脈硬化の血管では、プラークによって内腔が狭くなっています。

血管内超音波画像
画像:りんくう総合医療センター

検査データを解析するとプラークの成分までわかります。上の画像はどちらも動脈硬化のプラークですが、左は線維性の部分が多いため安定しています。右はコレステロールなどの脂質が多いため破れやすく、心筋梗塞を起こす危険性が特に高いと考えられます。

OCT(光干渉断層法)検査

OCT(光干渉断層法)画像
画像:りんくう総合医療センター

OCT検査も血管内にカテーテルを挿入して行います。近赤外線を使い顕微鏡並みの精度で血管を観察できます。画像は動脈硬化を起こした血管です。中心の黒いところは血管の内腔(ないくう)、周囲が血管の壁です。プラークに含まれる脂質の成分は暗く描き出されます。この画像では脂質の多いプラークが内腔を大きく塞いでいます。線維性の成分は明るく描き出されますが、この血管ではプラークを覆う線維性の膜が非常に薄くなっています。このようなプラークは破れやすく、心筋梗塞を起こす危険性が特に高いと考えられます。

ABI検査(腕と足の血圧比)・baPWV検査(脈の速度)

血流や血管の硬さを調べる検査

ABI検査(腕と足の血圧比)やbaPWV検査(脈の速度)は、血流や血管の硬さを調べるものです。どちらもベッドに横になり両腕と両足首に計測用のベルトを着けて行います。

ABI検査

ABI検査は、上腕の血圧と足首の血圧を測定しその比を計算します。正常な場合、足の血圧は上腕よりも「高く」なります。足首の血圧が低く、ABIの値が正常の比より低い場合、脚の血管が狭く血流が悪くなっていると考えられ、下肢の末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症、足梗塞)という病気である可能性があります。末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)になると、足先に血液が届かなくなるため、歩くと足が痛くなり、さらに進行すると足先が壊死することもあります

baPWV検査は、血管の硬さを調べる検査で、脈波伝播速度検査(みゃくはでんぱそくどけんさ)とも言われます。脈が心臓から腕や足まで伝わっていく速度を調べます。健康な軟らかい血管では脈がゆっくりと伝わり、動脈硬化が進んだ硬い血管では脈が速く伝わります。正常より速く伝わる場合、全身の血管が硬くなっていると考えられ、この検査によって血管の老化がどれくらい進んでいるのかを示す「血管年齢」を割り出すことができます。また、baPWV検査の結果が速ければ速いほど、脳卒中や心筋梗塞などの心血管病を起こす危険性が高いことがわかっています。

PWV検査の内容・特徴
PWVと心血管病の危険度

ABI検査、baPWV検査は循環器内科や血管外科、心臓血管外科で受けることができます。人間ドックの際にオプションで選ぶことも可能です。

FMD検査

動脈硬化の段階別に検査の種類を表しているイラスト図

FMD検査は、動脈硬化を早い段階で捉えることができる検査法です。動脈硬化の初期は、血管の一番内側にある内膜の内皮細胞が傷つくことから始まりますが、FMD検査では、この内皮細胞の機能が正常かどうかを調べます。検査方法は、安静時の血管の直径を測定後、腕の動脈を圧迫して、5分程度血流を止めたあと、圧迫を解除して血流を再開したときの血管の直径の変化を超音波で測定します。

動脈硬化の検査を受けるタイミング、勧められる人

動脈硬化の危険に気付くためには、健康診断を毎年受けて、自分が危険因子を持っているチェックすることが大切です。そして、以下の項目にあてはまる方は、定期的に医療機関で検査を受けることが勧められます。

  • 脂質異常や高血圧、高血糖、喫煙などの危険因子が多い
  • 運動時に胸痛などがある
  • 狭心症や心筋梗塞をすでに起こしている

検査を通して動脈硬化が進行していることがわかった場合は、生活習慣の改善や継続的に治療をおこなって、心筋梗塞や脳梗塞になるリスクを減らしていくことが大切です。

動脈硬化のQ&A

『Q&A動脈硬化』はこちら

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2018年10月 号に掲載されています。

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