認知症の原因「正常圧水頭症」とは?症状やアルツハイマーとの違い

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正常圧水頭症の3つのタイプ

正常圧水頭症

正常圧水頭症は、脳を保護する脳脊髄液が過剰にたまるために起こります。脳脊髄液は、脳の中央にある脳室で毎日一定量がつくられ、脳と脊髄の周りを流れ、循環しながら静脈などに吸収されていきます。何らかの原因で、この流れが滞ると、正常圧水頭症が起こります。

正常圧水頭症のタイプ

正常圧水頭症には3つのタイプがあり、最も多いのが特発性正常圧水頭症です。原因は不明で、主に高齢者に起こり、国内の複数の研究から、65歳以上の人の1~2%にこの病気があると考えられています。70~80歳代で多く発症します。
二次性正常圧水頭症は、くも膜下出血や髄膜炎などを発症した数か月後にその後遺症として起こりますが、非常にまれなタイプです。原因となる病気の定期的な診察により、多くの場合、早期に発見されます。
家族性正常圧水頭症は、遺伝的要因により発症しやすいと考えられるもので、やはり極めてまれなタイプです。

正常圧水頭症の症状

正常圧水頭症の症状

正常圧水頭症では、過剰に増えた脳脊髄液の影響で、脳の前頭葉が広範囲にわたって障害されることにより、歩行障害、認知障害、排尿障害が現れます。
正常圧水頭症とアルツハイマー病を見分けるために最も重要なのは、歩行障害と認知障害が併せて現れるかどうかという点です。アルツハイマー病の場合、歩行障害はかなり進行するまで起こりません。この2つの症状が重なる場合は、正常圧水頭症であることが疑われるので、早めの受診を検討しましょう。さらに排尿障害もある場合は、すぐに受診してください。

ただし、これらの症状が現れて医療機関を受診していても、医師が正常圧水頭症に詳しくないために、正常圧水頭症という診断にたどりついていないケースが少なくないと考えられています。正常圧水頭症が疑われる場合は、脳神経外科を受診することが勧められます。正常圧水頭症の治療・手術を実際に行うのは脳神経外科なので、この科には正常圧水頭症に詳しい医師が多くいるためです。脳神経外科を受診するのが難しい場合は、まずは脳神経内科精神科を受診するとよいでしょう。

歩行障害

歩行障害の特徴

正常圧水頭症の初期から現れやすいのが、歩行が小刻みになる症状です。同じく脳の病気により歩行障害が起こるパーキンソン病でも歩行が小刻みになりますが、正常圧水頭症の場合は両足の左右の間隔が広がるのが特徴で、区別することができます。まっすぐ歩くときは目立たなくても、方向転換するときや狭い場所では、こうした特徴的な症状が現れやすくなります。

認知障害

認知障害は、情報処理能力の低下、物忘れ、意欲の低下などの症状のことで、順番、頻度ともに歩行障害の次に現れることが多い症状です。
アルツハイマー病の場合は、記憶をつかさどる海馬に障害が起きているため、初期から物忘れが強く現れます。一方、正常圧水頭症の場合は、アルツハイマー病に比べるともの忘れは軽度で、ヒントをもらったり、時間をかけたりすれば思い出せることが多くあります。ただし、思考に時間がかかるようになり、受け答えや反応が鈍くなるのが特徴です。

排尿障害

排尿障害は、認知障害の次に現れやすい症状で、まず頻尿になり、その後次第に、尿意を感じてから我慢できる時間が短くなって失禁しやすくなります。

脳画像検査で特徴をチェック

正常圧水頭症の検査では、まず問診や認知機能の検査、歩行などをチェックする身体診察が行われ、症状の有無やその程度が確認されます。そのあと、MRI(磁気共鳴画像)などによる脳の画像検査が行われます。

脳のMRI

正常圧水頭症のほとんどを占める特発性正常圧水頭症の場合、脳画像に3つの特徴があります。1つは、脳の真ん中にある「脳室」が拡大していることです。2つ目は、頭蓋骨と脳の隙間が狭くなっていること。3つ目は、脳の左右に位置する「シルビウス裂」という溝が拡大していることです。歩行障害・認知障害・排尿障害の症状に加え、脳画像でこの3つの特徴がそろっていれば、特発性正常圧水頭症が強く疑われるため、タップテストという検査を行います。

タップテスト

タップテスト

タップテストは、腰椎に特殊な針を刺し、脳脊髄液を30ml程度抜く検査です。その結果、歩行障害がよくなるなど一時的に症状が改善すれば、より強く正常圧水頭症であることが疑われます。また、脳脊髄液を抜く手術である髄液シャント術による効果も期待できます。

正常圧水頭症の治療・髄液シャント術

髄液シャント術

正常圧水頭症と診断された場合は、主に髄液シャント術が行われます。髄液シャント術は、脳室にたまった過剰な脳脊髄液を、直径2mmほどの細い管を腹腔に導いて吸収させる手術です。主に2つの方法が行われています。
L-Pシャント術は、脊髄のくも膜下腔という部分から、管を腹腔に通す方法です。現在主流になりつつある方法で、髄液シャント術の過半数を占めています。

V-Pシャント術は、隋骸骨に小さなあなをあけ、管を脳室から腹腔に通す方法です。脊柱管狭窄(さく)症などがあり、脊柱が変形している場合には、L-Pシャント術は適さないため、V-Pシャント術が行われます。
どちらの手術でも症状が軽い早期の段階で行うことができれば、日常生活に困らない程度まで、症状を改善することが期待できます。

特発性正常圧水頭症の前段階・AVIM

脳のMRI

近年、特発性正常圧水頭症には、前段階があることがわかってきました。歩行障害、認知障害、排尿障害といった症状はまだ現れていないものの、脳に正常圧水頭症と同じような画像検査上の特徴が現れている状態で、AVIM(エイビム)と呼ばれます。

AVIM

厚生労働省の研究班による全国調査では、AVIMの見つかった人のうち約半数(52人のうち27人)が、3年後に特発性正常圧水頭症に進んでいたことがわかりました。脳の画像検査でAVIMが判明した場合は、定期的に経過観察を行い、症状が現れたらすぐに治療を開始します。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2018年8月号に詳しく掲載されています。

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