生理前のつらい症状(乳房の痛み・発熱・関節痛・おなかの張り・寒気など)原因や対処法、PMSの治療

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生理前につらい症状が起こる「月経前症候群(PMS)」とは

月経前症候群(PMS)とは

月経前症候群(PMS)は、生理期間が始まる前、長い人では10日ほど前から症状が起こり、生理が始まるまで続く不調です。症状が強い人ですと、生活の質を著しく低下させてしまいます。

現在は、生理がある女性の30~40%ほどに月経前症候群があると推定されていますが、中には、社会生活が困難になるほどつらい症状を起こしている人もいます。受診して治療を行えば改善するのですが、生理前に不調が起こるのは当たり前と思い込んでいる人が多く、受診せず我慢している人が多いのです。

抑うつや頭痛など。月経前症候(PMS)の症状とは

月経前症候群の症状

月経前症候群は、人によって症状の現れ方がさまざまです。心理的な症状と身体的な症状があります。心理的な症状は、抑うつ気分、怒りの爆発、イライラ、不安感、混乱した気分などです。身体的な症状は、乳房の痛みや張り、おなかの張り、関節痛や筋肉痛、頭痛、体重増加、手足のむくみなどです。これらの症状のうち、どれか一つでも、過去の生理で3回以上連続して起こっている場合に、月経前症候群と診断されます。

[月経前症候群の例]26歳 会社員
「生理の3~4日前から張りやむくみ、頭痛の症状が出る」

月経前症候群の例

月経前症候群と診断された26歳の会社員Aさんの例です。
Aさんは就職した頃から、生理が始まる3~4日前になると胸の張りや手足のむくみが起こるようになっていましたが、生理前だから仕方がないとやり過ごしていました。

ところが、最近新しい部署に異動してから頭痛もう起こるようになりました。痛みがある日は仕事に集中できず、会議の資料準備が間に合わなくなったり、ミスが目立つようになり、生理前になると仕事に行きたくないと思うようになってしまいました。そこで思い切って婦人科を受診したところ、月経前症候群 PMSと診断され治療を行うことになりました。

月経前症候群による影響

月経前症候群による影響

月経前症候群は、生理のある女性であれば誰でも起こり得ます。そして、それぞれのライフステージで影響を及ぼします。思春期であれば、学校生活に支障を来します。症状がつらいために、学校を欠席しなければならなくなったり、試験や大事なイベントで本領発揮できないことがあります。働く女性の場合は、仕事に集中できずにミスが増えたり、人間関係を悪化させてしまうケースが目立ちます。家庭内の主婦の場合は、家事が手につかなかったり、イライラして家族に八つ当たりするケースが多いようです。気になる症状がある場合は、婦人科を受診してみましょう。

生理前に特に気分が不安定になる
「月経前不快気分障害(PMDD)」とは

PMDD

月経前になると感情が不安定になり、日常生活が全く送れないほど深刻な状態になる人が、生理がある女性の1.2%ほどいると報告されています。これは、月経前症候群の重症型で、月経前不快気分障害(PMDD)と呼ばれています。

[月経前不快気分障害の例]30歳 主婦
「生理前になると人が変わったよう暴力的になる」

月経前気分不快障害の例

月経前不快気分障害と診断された30歳の主婦のBさんの例です。
Bさんは1年前に夫の転勤で引っ越しましたが、その頃から毎月生理前になると気分の浮き沈みが激しくなりました。とにかくイライラして怒りっぽくなり、夫にボゲンを吐いたり、時にはものを投げつけるなど暴力的になることもありましたが、生理が始まると落ち着きます。

家族からは人が変わったようになる時があると言われ、自分でも訳がわからなかったそうです。
毎回、生理前にこうした状況が起こるため、生理が関係しているかもしれないと思い婦人科を受診しました。その結果、月経前症候群より重症の月経前不快気分障害と診断されました。

月経前不快気分障害(PMDD)による影響

PMDDでは、精神的な症状が重く出るのが特徴で、うつ病や双極性障害と間違われるほどです。「著しく感情が不安定」「著しい怒り・人間関係の摩擦」「抑うつ気分・絶望感・自己批判的思考」「著しい不安」などの症状があるかどうかが、診断の基準になります。PMDDを発症すると自制が困難になるため、子どもを虐待したり、夫婦関係が悪化して離婚に至ったりするケースもまれではありません。PMDDの治療は産婦人科だけでは難しいことがあり、その場合には、PMDDの治療ができる精神科などを紹介してもらい、適切な治療を受けることが大切です。

月経前症候群(PMS)の原因

月経前症候群(PMS)の原因

月経前症候群(PMS)が発症する直接の原因は不明ですが、女性ホルモンのひとつである黄体ホルモン(プロゲステロン)が関係しているのは確かとされています。黄体ホルモンは、子宮内膜を厚くして妊娠しやすい体を作るホルモンです。

排卵後の黄体期に多く分泌され、妊娠に備えて、食欲を増したり、基礎体温を上げたり、体の水分の排出を抑えたりするなど、体の中でいろいろな現象を誘発します。妊娠が成立しないと、黄体ホルモンの分泌は急激に減り、不要になった子宮内膜を体の外に排出する月経が起こります。この黄体ホルモンの増減が、体に何らかの作用をして、むくみや張り、頭痛などのさまざまな症状を引き起こしていると考えられています。

生理前のつらい症状が起こりやすくなる要因

生理前のつらい症状が起こりやすくなる要因

黄体ホルモンは、セロトニンやドパミン、ノルアドレナリンなど、感情を調整する脳の神経伝達物質にも作用しています。黄体ホルモンの影響を受けやすい性質を持っている場合は、黄体ホルモンの増減によって神経が過敏になり、心の変化が起こりやすくなります。また、これらの神経伝達物質は、ストレスや生活リズムと関係するため、生活習慣が症状の現れ方に影響を与えると考えられます。

月経前症候群の要因①ストレス

環境の大きな変化や、緊張状態が長く続いた後などは、症状が出やすくなることがあります。

月経前症候群の要因②几帳面な性格

几帳面、まじめ、負けず嫌い、自分に厳しい人などは、症状が出やすいとされています。

月経前症状群の要因③食生活

栄養バランスのよくない食事をしている人、コーヒーや紅茶などカフェインを多く含む飲み物やお酒をよく飲む人は、症状が重くなりがちです。

月経前症候群の要因④体力の低下

体力が低下していたり、自律神経が乱れていたりすると、症状が出やすくなることがあります。

生理前の不調があるときは受診を!月経前症候群(PMS)の治療法

月経前症候群(PMS)の治療の柱

月経前症候群(PMS)の治療の柱は、カウンセリング、生活指導、薬です。まずはカウンセリングや生活指導で症状の改善を図ります。なかなか改善しない場合や症状が強い場合には、薬による治療が検討されます。生理前になると心や体の不調が起こり、生活の質が低下している場合は、症状が軽くてもためらわずに婦人科を受診しましょう。適切な治療で症状の改善が期待できます。

月経前症候群の治療法①カウンセリング

まず、月経前症候群について正しく知ることが大切です。そのために、日々の症状を記録します。記録を続けると、自分の症状の重症度や症状が現れるパターンやタイミングが分かるようになり、仕事量を調整したり、家事などの負担を軽減したりできるようになります。

月経前症候群の治療法②生活改善

十分な睡眠、適度な運動、ストレスの軽減など生活の改善も大切です。また、コーヒーや紅茶などカフェインを多く含む飲み物やお酒、たばこなどのし好品、甘いものを制限すると、症状が改善することもあります。

月経前症候群の治療法③薬による治療

症状に応じて薬を処方される場合もあります。イライラが強い場合は精神安定薬、むくみには利尿薬、頭痛などの痛みには鎮痛薬などです。漢方薬も効果が認められ、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、加味逍遥散(かみしょうようさん)、抑肝散(よくかんさん)などが使われます。また、西洋ハーブのひとつであるチェストベリーも効果が認められ、要指導医薬品として購入することができます。

これらの治療で改善しない場合は、低用量経口避妊薬(EP配合剤)によるホルモン療法を行います。いわゆるピルですので、毎日規則正しく飲まないと、かえってホルモンバランスを崩してしまうので注意が必要です。

また、高血圧や肥満のある人、喫煙している人などは、まれに血栓ができやすくなる危険性が高まるので、使用できない場合もあります。のみ始めに吐き気や乳房の張り、頭痛などの副作用が現れることがありますが、通常は継続するうちにおさまります。副作用がつらい場合は、自己判断で中止せず医師に相談してください。

うつ症状がある場合は、抗うつ薬を生理前の短期間に限って使うこともあります。副作用について眠気が出る場合がありますが、重大な副作用は報告されていません。
また、抗うつ薬はずっと飲んでいるイメージがありますが、PMSの治療時に使い場合は月経前の短期間だけに使用します。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2018年4月 号に掲載されています。

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