臓器の機能をもつ小さな細胞の塊が医療を切りひらく

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人体(NHKスペシャル)

番組では、横浜市立大学先端医科学研究センターがシャーレの中で作りだした「ミニ肝臓」を紹介しました。ミニ肝臓は肝臓と同じような構造をもっており、専門的には「肝臓のオルガノイド」と呼ばれています。新たな医療を切りひらくものとして注目される「ミニ肝臓」とは、いったいどのようなものなのでしょうか?

小さな細胞の塊が肝臓の機能をもった!

横浜市立大学先端医科学研究センターで行われている研究では、iPS細胞から作りだした肝臓になる途中の細胞(肝臓前駆細胞)・血管の細胞(血管内皮細胞)・周りを支える細胞(間葉系細胞)を混ぜ合わせ、母親の胎内で胎児の肝臓ができる過程に似た環境で培養しました。

すると細胞同士がメッセージをやりとりし、毛細血管の構造を兼ね備え、肝臓の機能をもった「ミニ肝臓」ができたのです。これを肝臓の働きが悪くなったマウスに移植したところ、30日後の生存率が飛躍的に高まり、肝臓の働きが回復したことがわかりました。この「ミニ肝臓」は2020年度までの臨床研究の開始を予定しています。重い肝臓病の子どもに移植することを目指し、ミニ肝臓の製造方法や移植方法の検討が重ねられています。

横浜市立大学先端医科学研究センターで作られた大きさ数ミリほどの「ミニ肝臓」。ミニ肝臓を体内に移植する治療を目指している。
(画像:武部貴則・横浜市立大学先端医科学研究センター)

「細胞は何になるべきかを知っている」

シンシナティー小児病院オルガノイドセンターのアーロン・ゾーン所長は「細胞は、自分が何になるべきかを知っている」と言います。環境を整えてあげさえすれば、その機能を果たすようになるというのです。iPS細胞から作りだされた 臓器の機能をもった細胞の塊は「臓器の芽=オルガノイド」とも呼ばれ、シンシナティー小児病院では、胃酸を出す胃のオルガノイドや、神経細胞を兼ね備えているため蠕動(ぜんどう)運動できる腸のオルガノイドなども作られ始めています。そして、これらのオルガノイドを利用し、将来、難病の治療などを行うための準備を進めています。

シンシナティー小児病院オルガノイドセンターでは、臓器の機能をもった細胞の塊である「オルガノイド」の研究が進められている。先天的に臓器に障害がある子どもたちへの移植を目指している。

この記事は以下の番組から作成しています

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