肺炎による死亡が増加・高齢者に多い


肺炎は、肺に炎症を起こす病気です。肺炎で亡くなる人は、国内では年間およそ12万人と推計されています。その数は増加しており、2011年には、がん、心臓病に次いで、肺炎が日本人の死因第3位になりました。2018年は、第5位となっています。
亡くなる人のほとんどが65歳以上の高齢者で、特に入院中や介護を受けている人に多く発症します。ただし、元気に過ごしている高齢者も安心はできません。特に、75歳以上の後期高齢者は、肺炎をきっかけに体力が低下し、介護が必要になったり、亡くなることもあります。
肺炎が重症化しやすい要因

肺炎は、特に75歳以上の高齢者のほか、肺や気管支など呼吸器の病気、心臓や肝臓、腎臓の病気、糖尿病、がん、関節リウマチなどの持病があると、発症しやすくなります。また、ステロイド薬、免疫抑制薬、生物学的製剤など薬を使っている場合も、免疫機能が低下し、感染症を起こしやすくなります。また、これらの要因がある場合は、発症すると重症化しやすく、命に関わる状態になることが多くなります。
肺炎はかぜやインフルエンザのあとに起こりやすい

肺炎を起こす病原微生物は、私たちの生活環境に存在しており、体内に住みついていることもあります。ただし、すべての人に肺炎が起こるわけではありません。それは、私たちの体内には、病原微生物の感染や増殖を抑える仕組みがあるからです。
のどの入り口から肺につながる気管や気管支には、表面を粘膜におおわれた繊毛細胞が無数にあります。健康であれば、病原微生物が気管や気管支に侵入しても、粘液に付着し、繊毛細胞によって痰として口のほうへ戻されます。そして、飲み込まれて胃で消化され死滅します。
しかし、かぜやインフルエンザにかかり、それらのウイルスが気管に感染すると、繊毛細胞が破壊されて、はがれ落ちることがあります。そこに病原微生物が付着すると 感染し増殖しやすくなります。そして、肺にまで達してしまうと、肺炎を起こしやすくなります。
はがれた繊毛細胞が元に戻るには、約3週間かかると考えられています。そのため、かぜやインフルエンザにかかってしばらくの間は肺炎を起こしやすい状態になっているので、異変を感じたら早めに医療機関を受診してください。
肺炎の症状をかぜと区別する
肺炎は、症状がかぜとよく似ているため、気づかずに放置しているケースが多く、その結果、重症化して亡くなることがあります。しかし実際には、かぜと肺炎の症状には次のような違いがあります。

かぜの多くは、せき、のどの痛み、鼻水などの症状が出ます。たんが出ても多くは白っぽいたんです。熱が出ても38℃程度までのことが多く、1週間ほどで症状が軽減していきます。
一方、肺炎の場合、その多くで38℃以上の発熱、激しいせきや胸の痛み、息苦しさが出て症状が長引きます。黄色や緑色のたんが出ることもあります。
“隠れ肺炎”に注意


高齢者では典型的な症状が出ない、いわゆる〝隠れ肺炎〟に注意が必要です。「軽いせき」「息切れ」「体がだるい」「食欲がない」「微熱」といった症状でも肺炎の可能性があり、重症化するまで気づかないことがあります。本人が体調の変化に気づいていないこともあるので、周りの人もいつもと違う様子を見逃さないようにすることが大切です。
肺炎の原因はさまざま

肺炎を起こす原因には、細菌やウイルスなど病原微生物の感染のほか、関節リウマチなどの病気、薬の副作用、羽毛やカビなどに対するアレルギーなどさまざまあります。
適切な治療を受けるためには、早めの受診はもちろん、必要に応じて呼吸器内科など専門医を受診するなどして、こうした原因を特定することが大切です。
最も多い肺炎の原因「肺炎球菌」
肺炎を起こす原因として最も多いのが病原微生物の感染で、その中で最も多いのが肺炎球菌です。日本人では、高齢者の3~5%の鼻やのどの奥に住み着いていると考えられています。こうした人が、かぜなどをきっかけに免疫機能が低下したり、「誤えん」といって食べ物や唾液と一緒に肺炎球菌を気管に吸い込んでしまうと、肺炎を発症しやすくなります。
肺炎球菌による肺炎の治療は抗生物質(抗菌薬)が基本で、のみ薬や注射薬を使います。重症化していなければ、多くの場合は回復します。ただし、重症化すると命に関わることが少なくありません。そのため、肺炎が重症化しやすい高齢者や持病がある人は、予防のために肺炎球菌ワクチンを接種しておくことが重要です。
肺炎を予防する!肺炎球菌ワクチンの受け方

肺炎球菌ワクチンの代表的なものは23価ワクチンです。23価ワクチンは、23種類の肺炎球菌に対して効果があります。肺炎の重症化のリスクをおよそ70%下げることができるといいます。主に65歳以上の方はワクチンを公費の助成で一度受けることができます。対象となる年齢は5歳おきで毎年度異なります。