乳がんになりやすい人とは?早期発見で9割が完治!

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約9割が完治できる!? 乳がんのできる部位を知ろう

乳房の断面図

乳がんとは、乳腺組織にできるがんです。乳房には、小葉という母乳を作る組織と、小葉で作られた母乳を乳頭まで運ぶ乳管がありますが、乳がんが発症する場所は約90%が乳管で、5〜10%が小葉です。
乳がんは、女性がかかるがんのなかで最も多く、患者数は年々増加しています。ただ、一方で、近年は乳がんの手術が進歩し、また乳がんのタイプ分けの研究が進んで、タイプごとに効果的な薬を使えるようになってきました。そのため、早期の段階で適切な治療をすれば、約9割が治る病気です。

こんな人は要注意! 「乳がん」になりやすい人とは?

年代別 乳がんと新たに診断された人のグラフ

乳がんになりやすい年齢は、30代後半以降と考えられています。また、乳がんの7〜8割が女性ホルモンのエストロゲンが関係しているため、エストロゲンの分泌が高くなる月経の回数が多い人ほど、乳がんになりやすいといえます。また、飲酒や喫煙、肥満なども乳がんを発症する要因なので、注意が必要です。

医療機関での検診・検査の方法 乳がん検査の3つの種類

現在、乳がんの検診は、40歳以上の人であれば2年に一度、自治体で受けることができます。この検診ではマンモグラフィーが使用されますが、自治体によって超音波検査(エコー)も併せて受けることができます。

マンモグラフィーによる検診

マンモグラフィー検査
石灰化

マンモグラフィーは、乳房のしこりのほか、カルシウムの沈着による石灰化がないかどうかを確認します。石灰化の多くは良性ですが、大きさが不ぞろいだったり、棒状の細長い形をしていたり、1か所にたくさんの石灰化が集まっている場合は、がんが疑われます。石灰化は触診をしても、しこりとして確認できないことが多いので、マンモグラフィーでしか見つけることはできません。

自治体の乳がん検診は、40歳以上の女性を対象に2年に1回行われているので、必ず受けましょう。
なお、この検査は痛みを伴うことがあります。少しでも痛みを和らげるためには、月経開始後10日目くらいの乳房が張っていないときに受けるのがお勧めです。痛い場合は、我慢せずに検査技師に伝えましょう。乳がんを発症する確率の低い35歳以下の若い女性の場合、マンモグラフィー検査による早期発見のメリットよりも、被ばくのデメリットのほうが大きくなるため、マンモグラフィー検査はお勧めしません。

超音波検査(エコー)

乳房の断面図
乳腺濃度

乳房に超音波をあてて画像を調べるのが超音波検査(エコー)です。2015年に発表された東北大学の大規模な調査研究によると、マンモグラフィーと超音波検査を併せて行えば、乳がんの早期発見率は約1.5倍になるということが明らかになりました。じつは、マンモグラフィーではがんが見つけにくいケースもあるのです。

乳房の小葉と乳管は、併せて乳腺といいますが、乳腺はマンモグラフィーに白く映る一方、しこりも白く映ります。乳腺の濃度が高い人がマンモグラフィーの検診を受けても、しこりは見つけにくいのです。
50歳未満のアジア人の約8割は、乳腺濃度が高いといわれているので、50歳未満の人や授乳経験のない人などは、マンモグラフィーだけでなく超音波検査も受けたほうがよいでしょう。

遺伝学的検査

遺伝学的検査

乳がんの5〜10%は、遺伝性によるものと言われていますが、最近、この遺伝性による乳がんの発症リスクを調べる遺伝学的検査が行われることもあります。
遺伝学的検査は、血液を採取して、乳がんと乳腺がん、どちらの発症にも関係しているBRCA1とBRCA2という2つの遺伝子の変異を受け継いでいるかどうかを調べます。

遺伝学的検査は、これまでは全額自己負担で受けなくてはなりませんでしたが、2020年4月から一定の要件を満たせば、健康保険で受けられます。

記事『新たに保険適用に!遺伝性乳がん卵巣がん症候群の検査と治療』

プライバシーに関わる検査であることから、検査前に遺伝カウンセリングを受けられる施設もあります。
遺伝カウンセリングでは、最初に家族構成や病歴などをヒアリングすることで、おおよその発症率を推測します。ほかにも、遺伝子の変異があっても必ずしも乳がんになるわけではないといった、遺伝性乳がんの知識を得ることができます。

自治体以外で受ける乳がん検診

乳がん検診は、職場の事業者検診、所属する健康保険組合や人間ドックなどで受けられることもあります。費用は職場や健保組合などで異なります。人間ドックでも受けられますが、費用は健康保険組合などの補助がなければ全額自己負担となります。

新しい検査方法

最近は痛みが少なく、乳房を見られずに受けられる検査方法も登場しています。検査は健康保険の適用外で、全額自己負担です。また、検査が行える施設は限られています。

乳がんの新しい検査方法
乳房下垂
  • 乳房専用PET
    がん細胞に取り込まれる放射性試薬を注射して、その分布を撮影する。検査機器にうつ伏せになり、中央に開いた穴に乳房を入れて行います。痛みもなく、乳房を見られることもありません。
  • リングエコー
    検査機器にうつ伏せになり、中央に開いた穴に乳房を入れて超音波検査を行います。痛みもなく、乳房を見られることもないほか、被ばくの心配もありません。
  • MRI検査
    乳房の形にくりぬかれた穴に胸を合わせてうつ伏せになり、磁場を利用して撮影する特殊なMRI検査です。そのため被ばくの心配はなく、造影剤も使いません。服を着たままでも受けられます。

ブレスト・アウェアネス

ブレスト・アウェアネス

乳がんは、早期発見・早期治療ができれば9割は治ります。そこで近年勧められているのが、ブレスト・アウェアネスです。これは、日頃から自分の乳房の状態に関心をもち、乳房を意識する生活習慣のことで、乳がんの早期発見につながります。具体的には、次の4つを実践してください。

自分の乳房の状態を知る

月に1回は、自分の乳房にしこりや変形がないかどうかをチェックします。乳がんのしこりは、触れると硬くゴツゴツした感触です。一方、良性のしこりはグミのように軟らかく、動くような感じがします。ただし、自身で良性か悪性かを判断するのは難しいので、気になるしこりがあれば、医療機関を受診しましょう。

  • 閉経前の人
    乳房が張っていない月経開始後10日目くらいに行うのがお勧めです。
  • 閉経後の人
    月に1回、同じ日にちに行うとよいでしょう。
  • 月経前にしこりに気づいても、月経終了後に再度確認し、しこりが消えていれば水がたまっただけなので、受診する必要はありません。

乳房の変化に気をつける

乳房に以前より硬いところや、しこりはないかどうか、乳頭から分泌液が出ていないかどうかをチェックします。また、乳頭や乳輪の皮膚のただれ、へこみ、くぼみ、ひきつれなどがないかどうかも定期的にチェックします。

変化に気づいたらすぐに受診

乳房の変化がすべて乳がんの症状というわけではありませんが、乳がんの早期の症状の可能性もあります。ささいなことでも変化に気づいたら医師に相談しましょう。早期に適切な治療を受けられることにつながります。

40歳になったら2年に1回乳がん検診

自治体の乳がん検診は、40歳以上の女性を対象に2年に1回行われているので、必ず受けましょう。

記事『【乳がんセルフチェック】見て、触って、乳がんを早期発見』

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詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2022年10月 号に掲載されています。

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