高血圧の治療 徹底解説 薬の種類と症状に合わせた対策とは

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高血圧動悸(どうき)がする息切れがする・息苦しい循環器・血管

ある日突然襲いかかる高血圧

高血圧には自覚症状がほとんどありません。そもそも血管は痛みを感じないのです。しかしある日突然、高血圧は私たちに襲いかかり、命を奪ったり重大な障害を残したりします。脳卒中心筋梗塞はその代表です。実際に、日本では年間およそ10万人もの人が高血圧が原因で死亡していると推定されています。こうしたことから、高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれます。「静かな殺し屋」といった意味です。

また、高血圧は腎臓にも悪影響を及ぼします。腎臓の働きが悪くなり腎不全に陥ると、透析が必要になることがよくあります。さらに、高血圧は認知症のリスクであることもわかってきました。血圧をしっかり管理することで、こうした病気のリスクを減らし、日本人が健康長寿につながると期待できます。

薬は血圧を下げるだけが目的ではない

薬は血圧を下げるだけが目的ではない

日本ではおよそ4300万人が高血圧と推計されていますが、そのうち薬をのんでいる人はおよそ半数といわれており、さらに、薬をのんでいる人の中で140/90mmHg未満まで血圧を下げられている人は、3~4割程度だと報告されていて、多くの人が適切に血圧をコントロールできていないことがわかっています。

その原因のひとつとして考えられるのが、薬に対する認識不足です。薬が嫌いだったり、のんでいたけれど途中でやめてしまったりする人の中には、薬に対して間違ったイメージを持っていたり、薬をのむ本当の意味を理解していなかったりすることが考えられるのです。

実は、血圧の薬は、血圧を下げることだけが目的ではありません。血圧を下げるのはあくまでも通過点であって、脳や心臓、腎臓などの大切な臓器を守るのが、本当の目的なのです。
脳・心臓・腎臓は、高血圧によってとくにダメージを受けやすい臓器なので、血圧の薬をのむことで、大切な臓器を守っているという意識をもつようにしてください。

高血圧が脳・心臓・腎臓に影響する理由

脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎不全

高血圧が影響する主な病気には、脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎不全があります。どれも脳、心臓、腎臓の病気ですが、なぜでしょう。実はこの3つの臓器には、血管の構造にある共通点があるのです。

脳・腎臓・腎臓 血管構造の共通点

腕の動脈 だんだん細くなる

例えば腕の血管なら、太い血管から細い動脈へと、だんだん細くなります。そのため、高血圧があっても一番先の細い血管には影響しません。
脳の動脈(穿通枝)

それに対し、脳では、直径3~6mmの太い動脈が0.1mm以下の細い血管、穿通枝(せんつうし)に、いきなり枝分かれします。
心臓の動脈

心臓では、直径2.5cmの大動脈から、2~3mmの冠動脈に枝分かれします。
腎臓の動脈

腎臓では、直径3~5mmの動脈から、0.05mm以下の血管に枝分かれします。 このため、脳、心臓、腎臓では、高血圧によって起こる太い血管の高い圧力や強い拍動が、そのまま細い血管に伝わり、大きな負担を与えてしまうのです。

2タイプある高血圧の薬

高血圧の主な薬

血圧を下げる薬には、大きく分けて血管を広げることで血圧を下げるタイプと、血液の量を減らして血圧を下げるタイプの2タイプがあります。

血管を広げる薬には、カルシウム拮抗薬やARB、ACE阻害薬などがあり、血液の量を減らす薬には、利尿薬があります。一般的に、これらの薬は、血圧の値やほかの病気などを踏まえて2~3種類併用する場合もあります。

現在使われている薬は、工夫や改良がこらされていて、効果は高く、副作用も少ないものがほとんどです。万が一、いま薬をのんでいて気になる症状や不快な症状がある場合は、自分の判断でのむのをやめたりせず、担当の医師に相談して自分に合った薬を見つけましょう。

高血圧のQ&A

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この記事は以下の番組から作成しています

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