急性腎障害の症状と対策 脱水と薬に注意し、クレアチニン・eGFRをチェック

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セルフケア・対処急性腎障害(AKI)慢性腎臓病(CKD)心不全腎臓

急性腎障害とは

急性腎障害とは

急性腎障害AKIとも呼ばれ、最近、医学界で大きな注目を集めています。急性腎障害とは、「数時間から数日の間に腎機能が急激に低下した状態」のことで、重症の場合は「多臓器不全」に陥り、1か月以内に命を落とすことも少なくありません。急性腎障害は、入院している人に起こりやすいことがわかってきましたが、そればかりでなく、自宅で生活している人にも起こることがわかってきました。

急性腎障害の原因①「腎臓への血流の低下」

腎臓への血流低下の主な原因

腎臓の主な働きは、血液をろ過して尿を作ることですが、もしも腎臓に流れてくる血流が低下すると、排出すべき老廃物がうまく排出できなくなったり、必要な塩分や糖分などの再吸収に異常が起こったりします。
入院患者の場合、出血・下痢・おう吐などで、体内の血液量が少なくなると、腎臓に流れてくる血液量も低下してしまいます。また、心臓病などで心不全になり、心臓のポンプ機能が落ちると、全身の血液循環が悪くなり、やはり腎臓の血流低下が起こります。敗血症という重い感染症になった場合も、全身の血圧低下が起こり腎臓への血流が低下してしまいます。

一方、自宅で生活している場合に、最も気をつけなくてはならないのが「脱水」です。脱水状態になって体内の水分の量が減ると、血液の量も減ってしまい、腎臓への血流が低下します。また、自宅での生活では、薬の服用によって、腎臓への血流不足が起こることがあります。特に高血圧の人が脱水気味のときに、血圧を下げる薬の「ACE阻害薬」や「ARB」や「利尿薬」をのんでいる場合、腎臓の血流不足が起こることがあります。そのため、汗をかいて脱水を起こしやすい夏場には、医師が高血圧の薬を減らす場合もあります。
また、「非ステロイド性消炎鎮痛薬」(NSAIDs)の、のみすぎにも注意が必要です。頭痛薬や、腰痛や膝の痛みの痛み止めとして、鎮痛薬(NSAIDs)を長期にのんでいる人がいますが、腎臓への血流を低下させて、急性腎障害が起こりうることが最近の研究でわかっています。

急性腎障害の原因②「腎臓の細胞の障害」

腎臓の細胞の障害

腎臓自体も血液を必要としているため、腎臓への血流が低下した状態がずっと続くと、やがて尿細管の細胞が酸欠状態に陥り、やがて細胞が死んでしまい、急性腎障害が起こります。また、薬剤が尿細管の細胞に直接障害を与えてしまうこともあります。直接障害を与える主な薬剤には、「血管造影剤」、「抗生物質(抗菌薬)・抗ウイルス薬」、「一部の抗がん剤(シスプラチンなど)」があります。

急性腎障害の原因③「尿路の閉塞」

尿管の閉塞

腎臓でつくられた尿は、ぼうこうに流れていきますが、尿路に石ができたり、がんができて詰まってしまったり、前立腺肥大があったりすると、尿が正常に排出されないため、腎臓に尿が溜まってしまう「水腎症」が起こることがあります。その結果、尿が排出されず、腎臓にたまってしまうことで、急性腎障害が起こることがあります。

日常生活の注意点

日常生活の注意点

軽い急性腎障害も、繰り返すことで、どんどん腎臓が悪くなり、やがて慢性腎臓病に陥り、場合によっては人工透析が必要になることもあります。
日常生活の注意点として重要なのは、「脱水を防ぐ」ために水分補給に気をつけること、「痛み止め(鎮痛薬)をのみ過ぎない」ことの2つです。また、急性腎障害は、腎臓の機能が悪い人ほど起こりやすいといわれているので、健診結果などで、自分の腎機能の数値(クレアチニンeGFR)をチェックしておいてください。

「eGFRの値」についてはこちら

この記事は以下の番組から作成しています

  • きょうの健康 放送
    メディカルジャーナル 腎臓が危ない!注目される急性腎障害