ネフロンとは?尿をつくる腎臓の構造と血液浄化の仕組み

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人体(NHKスペシャル)慢性腎臓病(CKD)腎臓循環器・血管

みなさんは、腎臓の中で「血液から尿がつくられている」ことを知っていますか?その際、血液をろ過するフィルターとも言うべき役割を果たしているのが、腎臓に百万個もある「ネフロン」と呼ばれるミクロの構造です。人体で最も複雑とも言われる、その驚くべき構造と仕組みが、最新の顕微鏡技術などによってつぶさに見えてきました。

電子顕微鏡でとらえた「糸球体」
(旭川医科大学 甲賀大輔/日立ハイテク/NHK)

ネフロンは、さらにその中にいくつもの複雑な構造を含んでいます。その中心的存在と言えるのが、その名の通り糸玉のような形をした「糸球体」です。毛細血管が球状になった構造をしており、血液から尿をこし出す、いわば「ろ過フィルター」の役割を果たしている場所です。

糸球体の血管の中 血管の壁に無数の穴がある
CG 糸球体の血管の中 血管の壁に無数の穴がある

糸球体の中を走る血管の壁には、小さな穴がたくさん開いています。赤血球のような大きなものはこの穴を通れませんが、血液中を流れる栄養成分などさまざまな物質は、ほぼすべて一旦この穴から血管の外に吸い出され、尿のもと=「原尿」となります。

糸球体の表面「足細胞」がたくさんはりついている
糸球体の表面 「足細胞」がたくさんはりついている

糸球体の表面には、まるでタコのように複雑な形の足を広げた「足細胞」がたくさんはりついています。足細胞の足と足の間には「スリット膜」と呼ばれる膜があり、フィルター機能の一部となっています。そのフィルターを通って、ヒダのように見える部分のすき間から、原尿が出てきます。慢性腎臓病になると、この足細胞がはがれたり、硬くなったりして、糸球体がフィルターの役目を果たせなくなることがわかってきました。

糸球体のフィルターで止められるのは、たんぱく質など、比較的大きな粒をもつ物質だけです。そのため、原尿の中には、老廃物だけでなく、糖分・塩分・カルシウム・カリウム・マグネシウムなど、体に必要な成分も多く含まれています。これらを、体に必要な分だけ再び血液に戻す「再吸収」を行うのが、糸球体の先にある「尿細管」と呼ばれる場所です。

電子顕微鏡でとらえた「近位尿細管」の表面の微絨毛(びじゅうもう)
(旭川医科大学 甲賀大輔/日立ハイテク/NHK)

尿細管には、「近位尿細管」と「遠位尿細管」があり、それぞれ少しずつ違った役割があります。また、その先にある「集合管」と呼ばれる管でも、原尿から血液への再吸収は行われています。尿細管の内側には、微絨毛(びじゅうもう)と呼ばれる毛がびっしりと生えています。表面積を増やし、たくさんの物質を効率的に吸収するためのもので、栄養を吸収する腸の表面とよく似た構造です。

尿細管では、いったん原尿に出てしまったさまざまな物質を、体に必要な分だけ再吸収しています。体の状況に合わせて、絶妙に各成分の再吸収量を調節し、血液の成分を適正に保つ働きをしています。その際、腎臓は全身の臓器などと情報を交換しながら、いまどんな成分がどれくらい必要かを判断しているのです。腎臓が1日に作る原尿の量はおよそ180リットルですが、そのうちのおよそ99%が再吸収され、血液に戻されます。血液は体内におよそ4~5リットルほどしかありませんから、1日のうちに何度も何度も血液のろ過を繰り返していることがわかります。腎臓は、非常に働き者の臓器なのです。

この記事は以下の番組から作成しています

  • NHKスペシャル 放送
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