妊娠中に気をつけたい薬

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妊娠中の薬の注意点

妊娠中の薬の注意点

妊娠中の薬の使用には注意が必要です。妊娠中にのんでも胎児や母体への影響が少ない薬もありますが、なかには悪い影響を及ぼす薬もあるため、妊娠中は自己判断で薬を使わないようにしましょう。
また、市販薬は作用が弱くて安全だというイメージがあるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。「かぜ薬」や「解熱・鎮痛薬」のなかには長期にわたって使ったり、妊娠後期に使うと問題になる成分が含まれているものもあります。つらい症状があってやむを得ない場合は、なるべく一時的な処置にして、早めにかかりつけ医か産婦人科を受診しましょう。

かぜ薬 解熱・鎮痛薬

かぜ薬 解熱・鎮痛薬

妊娠中に使っても比較的安全だといわれている「かぜ薬」や「解熱・鎮痛薬」は、「アセトアミノフェン」です。一方、妊娠中に注意が必要な薬は、非ステロイド性消炎鎮痛薬・NSAIDsの「イブプロフェン」と「ロキソプロフェン」です。妊娠後期の8か月以降に大量に使うと、動脈管という胎児にとって大切な血管が収縮して、胎児に「心不全」や「全身がむくむ・胎児水腫」が起こるおそれがありますので注意しましょう。

持病がある場合

持病で薬を使っている人は、妊娠がわかった時点でかかりつけ医と産婦人科の医師に相談しましょう。かぜ薬は「使う」ことに注意が必要ですが、持病の薬は逆に「やめる」ことに注意が必要です。自己判断で薬をやめてしまうと、持病が悪化するだけでなく、胎児にも悪影響が出ることがあります。
例えば、ぜんそくの場合、発作を起こすと母体と胎児の血液中の酸素濃度が低くなることがあります。そのことが一因となって重症化すると「妊娠高血圧症候群」や「早産」、「胎児の発育が遅れる」などのリスクが高くなるという報告があります。ぜんそくの場合「吸入薬」は部分的に作用する薬なので、全身への影響が少ないと言われています。自己判断で薬をやめてしまい、重症化してしまうと、全身に作用する注射やのみ薬を使用しなければならなくなります。

妊娠の時期別の薬の影響

受精後~妊娠1か月

受精後~妊娠1か月

妊娠の時期によっても薬の影響は異なります。受精後~妊娠1か月は、薬の影響が出ない場合と出る場合があります。受精卵へ薬の影響が出ない場合は、後遺症を残すことがなく、胎児に後に残るような影響を及ぼしません。一方、影響が出る場合は、着床できずに流産してしまいます。ですから、妊娠を希望している女性は、妊娠の前から慎重に薬を使うようにしましょう。

妊娠2か月~4か月(14週未満)

妊娠2か月~4か月(14週未満)
妊娠2か月~4か月(14週未満)

妊娠2か月~4か月すぎ(14週未満)は、胎児が薬の影響を最も受けやすく、「先天異常」の発生と関連する重要な時期です。図の赤色が濃いほど影響があります。特に妊娠2か月は、中枢神経や心臓などの重要な臓器、そして手や足などが作られる時期のため、最も注意が必要です。
妊娠3か月~4か月すぎは、薬の影響はやや低くなりますが、男女の"性"の分化に影響があります。また、口の中の「口蓋[こうがい]」という上あごが作られる時期です。引き続き、薬の使用は慎重に検討しましょう。

妊娠4か月(14週以降)~出産

妊娠4か月(14週以降)~出産

妊娠4か月(14週以降)~出産までの時期は、基本的に薬による先天的な体の異常は起こりません。しかし「胎児毒性」といって、胎盤を通過した薬が胎児に悪い影響を及ぼすおそれがあります。一般に胎児への影響は、図で言うと紫色が濃いほど、つまり出産に近い方が大きいと言われています。具体的には、発育が抑えられたり、臓器に障害が出たり、羊水が減少したりすることがあります。

妊娠初期に注意したい主な薬

妊娠2か月~4か月(14週未満)に注意したい薬の例です。

妊娠初期に注意したい主な薬

抗血栓薬「ワルファリン」
血栓ができるのをおさえる薬です。本来ならば薬を中止してから妊娠したいところですが、薬をやめてすぐに妊娠するとは限りません。そのため妊娠を計画的に行います。薬を使用したまま妊娠にトライしてモニタリングし、妊娠がわかった時点でほかの薬に変更するなどして対処します。

免疫抑制薬の「ミコフェノール酸」
ミコフェノール酸は、妊娠可能な20~40代の女性に多い病気の「全身性エリテマトーデス」の治療薬として、2015年に保険適用になった薬です。この薬は、使用を中止してから6週間以上あけて妊娠することがよいとされています。
妊娠を希望している患者さんは事前に薬の変更を担当医に相談しましょう。

妊娠中期以降に注意したい主な薬

妊娠4か月(14週以降)~出産までの間に注意したい薬の例です。

妊娠中期以降に注意したい主な薬

妊娠中期から影響する 降圧薬の「ACE阻害薬」と「ARB」
胎児の腎臓を障害します。生命に関わる場合もあるため、この薬を使っている方は計画的に妊娠をして、妊娠がわかったらほかの薬に変更しましょう。

精神神経系の薬
胎児毒性とは違いますが、精神神経系の薬「SSRI」や「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」を、出産直前まで使用していた場合には、生まれたあとの赤ちゃんに影響が出る場合があります。これらは「新生児薬物離脱症候群」と言われています。その場合、赤ちゃんに、「授乳を受け付けない、おう吐する」「ふるえ・不機嫌」などの症状が現れることがあります。しかし、これらは一過性の症状なので、過度の心配はいりません。
安全な妊娠・出産をするためには、精神症状のコントロールが重要です。自己判断で薬をやめずに、メンタルの主治医と産婦人科の医師に薬の種類や量などを相談しましょう。

サプリメント

サプリメントのうち、「ビタミンA」については、妊娠初期に大量に摂取すると先天異常の危険性が高まることが報告されています。適量を守りましょう。

相談の窓口

妊娠中に薬に関して不安なことがあれば、産婦人科や持病の担当医、薬剤師に相談をしましょう。また、厚生労働省の事業として、国立成育医療研究センター内に、妊娠と薬に関するデータを集めている「妊娠と薬情報センター」があります。妊娠を希望している人、あるいは妊婦さん自身が申し込み、手紙や電話、面談などの方法で相談することができます。

この記事は以下の番組から作成しています

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