統合失調症の再発率

統合失調症では、治療を中断すると1年後に70%の人が再発してしまうことがわかっています。
一方で、薬を継続した場合は再発する人の割合が30%に減少します。さらに薬とリハビリテーションなどの治療を組み合わせること、8%まで減らすことができます。
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統合失調症では、治療を中断すると1年後に70%の人が再発してしまうことがわかっています。
一方で、薬を継続した場合は再発する人の割合が30%に減少します。さらに薬とリハビリテーションなどの治療を組み合わせること、8%まで減らすことができます。
統合失調症と診断されると、薬物療法とリハビリテーションを組み合わせた治療を行い、症状が落ち着いて安定した状態を目標にします。同時に、就労や就学などの社会復帰を果たすなど、その人らしい生活を取り戻すことを目指しています。
統合失調症の治療では、まず薬物療法が行われます。使われるのは「抗精神病薬」という薬です。幻覚や妄想などの陽性症状を抑える効果があります。およそ6~7割の患者さんに効果がみられ、服用開始後1~2週間で陽性症状が落ち着いてくるといわれています。
薬を中断してしまうと再発率が高いにもかかわらず、使用をやめてしまう患者さんが少なくありません。その理由の1つが薬の副作用です。抗精神病薬の副作用には、主に次の3つがあります。
現在、主に使われている抗精神病薬は、従来のものに比べると副作用が少なく、治療効果は高くなっています。副作用の現れ方には個人差があるので、担当医とよく相談して、自分に合った薬を探しましょう。
薬を中断してしまうもう1つの理由は、患者さん自身が「自分は病気だ」と認識するのが難しいことです。そのため、治療を始める前に病気について十分に説明をし、薬の効果と重要性を理解してもらいます。患者さんと一緒にどう治療を選択するか、一緒に決めていく、これは、シェアード・ディシジョン・メイキング、頭文字をとって、SDMと呼ばれていて、近年、大変重視されています。
また、患者さんの生活スタイルに合わせて選べるように、さまざまな剤形の薬が開発されています。錠剤や粉薬、液剤のほか、口の粘膜から吸収される舌下錠もあります。
医療機関で、肩やお尻の筋肉に注射する「持効性注射剤」は効果が長時間続くので、2~4週間に1回の注射で済み、毎日のむ必要も、のみ忘れの心配もなくなります。
最近登場した「テープ剤」は、24時間安定した血中濃度を維持できるのが特徴で、体に貼ってあることで、周囲も使用を目で確認できます。毎日、おなかや背中などに少しずつ場所を変えて貼りますが、貼りにくい場所に貼るときに家族などに手伝ってもらうことで、よいコミュニケーションのきっかけになることもあるようです。
薬物療法と並んで重要なのがリハビリテーションです。統合失調症の患者さんは、社会生活のさまざまな場面で苦手や不都合を感じています。また、感情の表現や人づきあい、日常生活の基本的なこと、リラックスすることなどに困難を感じています。それらの能力を回復させるリハビリテーションには、神経認知機能のリハビリテーションと社会認知機能のリハビリテーションなどがあります。リハビリテーションはできるだけ早期に始めることが望まれます。
ロールプレイという模擬練習によって、社会生活で適切な行動を考えられるようにしていきます。作業療法士や臨床心理士などが進行役となり、実際に困った場面を再現し、患者さんどうしで役割を演じながら対応のしかたを話し合います。
例「ロールプレイ」
テーマ「昼休みに何を話したらいいのかわからない」
まず事実を確認する
患者さんのそのときの気持ちを確認する
みんなで解決策を出し合う
模擬練習
患者さんどうしが相談者と相談役になって会話の練習をする。
リハビリテーションには、デイケアなどに参加して患者さんどうしで料理を作ったり、フットサルなどグループでできるスポーツに取り組んだりするといった共同作業があります。
料理ならば、予算を決めて、その範囲内でメニューを考えます。そして、実際に買い物に行き、手順や段取りを考えながら料理をします。その結果、認知機能の改善につながります。また、役割を得ることで自信をもつことができ、社会復帰のための体力づくりや、コミュニケーション能力の向上が図れます。
薬物療法やリハビリテーションを継続するには、焦らないことが大切です。また、家族など周囲の人は、本人のつらい気持ちや、回復に向かう過程で生じる不安などに理解を示すことが大切です。周囲からの理解が患者さんの理解につながり、回復力を高めます。
まず、治療を継続する事が第一ですので、近くの治療施設を尋ねることが大切です。主治医の先生との相性が良いかどうかも選ぶ基準になります。また、ビアと呼ばれる同じ病気をした経験のある方から話を聞けるところも良い施設と言えます。
家族や周りの人は本人が病気になってがっかりした気持ちになっていたり、回復に向けて不安になっていたりすることを理解してあげることが大切です。理解されている、分かってもらえると感じることができると、安心につながり、自信が出てきてリカバリーにもつながっていきます。
こうした事については、いくつもの研究で科学的にも証明されており、治療において、安心して自分らしい生活ができるような環境作りが大事になります。