関節痛・腰痛・関節リウマチに処方される漢方薬 種類と効果を徹底解説

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東洋医学腰痛関節リウマチ関節痛腰が痛い関節

関節痛と漢方

漢方薬による関節痛の治療

体内を循環する要素

漢方では、慢性的な関節の痛みの背景には「冷え」と、「気・血・水(き・けつ・すい)」のうち「血と水の異常がある」と考えます。特に、血の巡りが悪い「瘀血(おけつ)」、水の巡りが悪い「水滞(すいたい)」が関係すると捉えます。治療では、まず体を温めて「気・血・水」のバランスを整えます。関節の症状に対する漢方治療では、病気や症状に応じて西洋薬と漢方薬を併用します。

関節痛に効く漢方 基礎になる生薬

関節痛に効く漢方 基礎になる生薬

関節の痛みや腫れによく使われる漢方薬にはさまざまありますが、基礎になるのは、「桂皮(けいひ)」「麻黄(まおう)」という2つの生薬(しょうやく)です。桂皮は木の皮で、シナモンティーや京都の八つ橋などにも使われるものです。痛くて縮こまっている状態に対して、気を巡らせる作用があるとされています。また、麻黄は関節の炎症や腫れをとる際に使用されます。

関節痛に効く漢方 基礎になる生薬

桂皮と麻黄は東洋医学の考え方における表・裏のうち、表に効く生薬とされています。表とは、口くう〜上気道、皮膚、神経、関節などを対象としており、裏は消化管のことを指します。経皮や麻黄は関節痛だけでなく、かぜの初期や神経痛、皮膚の治療の際にも使用されます。

関節痛によく用いる漢方薬

関節痛によく用いる漢方薬

関節痛に対する処方としては、「葛根加苓朮附湯(かっこんかりょうじゅつぶとう)」「桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)」「越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)」などがよく用いられます。
さらに症状が強い場合には防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)が処方されます。

関節痛に効く漢方の選び方

関節痛に効く漢方 どう選ぶ?

薬を選ぶ際には、「生薬の配合」「冷えの有無」「水滞の状態」などから、患者さんにあった薬を選びます。
関節痛の場合、多くは基本的に桂皮もしくは麻黄、ときには両方入っている処方の中で、陰証・陽症どちらに近いかや抵抗力の強さなどを勘案しながら処方を選んでいきます。さらに慢性の場合は冷えると痛みが強くなり、温めると楽になるため、「附子(ぶし)」が入ります。

その他、水滞の場合では、関節の炎症・はれに「朮(じゅつ)」が用いられ、さらに効果を促進したいときに「茯苓(ぶくりょう)」が入ります。
さらに症状が強く、十分な効果が得られない場合には「防已(ぼうい)」と「黄耆(おうぎ)」を加えます。
これらの生薬を状況を見ながら調整していきます。

腰痛と漢方

腰痛に主に使われる漢方薬

腰痛には、関節の異常のほか、筋肉の異常、心理的な問題などさまざまな要素が関係している場合があります。“漢方治療だけで治したい”と思っていても、神経の圧迫がある場合などは、西洋医学的な治療が優先されます。まず、画像検査などにより、漢方治療が適しているかどうかを確認する必要があります。

腰痛のなかでも、急性期の痛みや筋肉の突っ張りには「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」が使われます。高齢になって体力がなくなり、ウエストラインの高さに痛みがある場合によく使われるのが「八味地黄丸(はちみじおうがん)」です。「苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)」は、腰骨より下の痛みがある場合によく使われます。冷えが強い場合には附子(ぶし)を加えることがあります。

漢方治療の事例(関節リウマチ)

関節リウマチ患者のAさん(71歳)の漢方治療

関節痛に効く漢方 どう選ぶ?

Aさんは10年以上前に関節リウマチという診断を受け、ステロイドの服用やほかの治療を行っていました。しかし、最近だんだんと関節の症状が強くなってきて、漢方治療を求めて受診しました。基本的には寒がりで、足も冷えるということから陰証であり、関節の痛みや腫れがあるため水滞があると診断。Aさんは、ステロイド治療と並行して葛根加苓朮附湯(かっこんかりょうじゅつぶとう)が処方されました。

それだけではなかなかよくなりませんでしたが、さらに水滞をとる漢方である防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)を用いることで症状が軽くなり、2か月後、腫れと痛みが軽減されました。その後、これら2つの併用を続けながらステロイドの量を減らし、最終的にはステロイド治療なしでも関節リウマチを効果的に治療できるようになりました。

この記事は以下の番組から作成しています

  • きょうの健康 放送
    漢方を知ろう「関節痛があるとき」