新しい対策 3つのポイント

乳児では約10パーセントに食物アレルギーがあると言われます。自然に治ることも多いのですが、幼児や学童でも少なくありません。最近はアレルギーの研究が進み、これまで常識だと思われていた対策が変わりつつあります。新しい対策は「離乳食を遅らせない」「食物除去をしすぎない」「アトピー性皮膚炎との関係をよく知る」がポイントです。
更新日
乳児では約10パーセントに食物アレルギーがあると言われます。自然に治ることも多いのですが、幼児や学童でも少なくありません。最近はアレルギーの研究が進み、これまで常識だと思われていた対策が変わりつつあります。新しい対策は「離乳食を遅らせない」「食物除去をしすぎない」「アトピー性皮膚炎との関係をよく知る」がポイントです。
離乳食の時期には「アレルギーを起こしやすいものは食べさせないほうがよい」と考えられていたことが過去にありました。しかし最近では、離乳食を遅らせても食物アレルギーの予防にはならないことがわかっています。色々な食物を早めに食べたほうが、むしろ食物アレルギーを発症しにくいという報告まであります。したがって、食物アレルギーの症状が出ていない赤ちゃんであれば、離乳食は通常どおり開始し幅広く食べたほうがよいのです。
ただし、湿疹やアトピー性皮膚炎などのお肌のトラブルを経験した赤ちゃんは、離乳食でアレルギーを起こす可能性があります。耳かき1杯くらいのごく少量から慎重に開始しましょう。心配な場合は医師に相談してください。
食物アレルギーの症状がある場合には原因の食物を避けることが対策の中心です。しかし、食事は子どもの発育にも生活にもきわめて重要なので、最小限の除去にとどめなければなりません。ところが、心配のあまり食べられるはずの食物まで食べない、少しは食べられるのにまったく食べないというケースがみられます。それには食物アレルギーの検査が関係しています。
食物アレルギーは血液検査でしばしば診断されます。血液検査は様々な食物に対する抗体を調べ食物アレルギーの可能性を判断するものですが、血液検査が陽性であっても食物アレルギーの症状が必ず起こるわけではありません。それなのに、血液検査で抗体があると言われただけで過剰な食物除去をしているケースがあるのです。
適切に食物除去をするには食物経口負荷試験を受けることがすすめられます。アレルギーが疑われる食物を実際に口にして反応を見る検査です。たとえば、卵なら まずアレルギーを起こしにくい黄身1gから、牛乳なら1滴から、小麦なら ゆでたうどん2cm程度から口に入れ、アレルギー症状が起こるかどうかを確かめ、問題がなければ少しずつ量を増やしていきます。ただし、すべての人が同じ方法で行うわけではありません。
食物経口負荷試験を受ければ、除去しなくてよい食物の種類がわかります。アレルギー症状を起こす食物であっても、どれくらいの量までは安全に食べられるのかもわかります。また、食物アレルギーは年齢とともに改善することが多いので、定期的にこの検査を受け、改善に応じて食物除去を軽くしていくとよいでしょう。
なお、食物経口負荷試験は、アレルギー症状に対応できる医療機関で経験のある医師が行うものです。自分で試すことは危険なので絶対に行ってはいけません。
食物アレルギーはアトピー性皮膚炎と合併するケースがよくあります。過去には「食物アレルギーがアトピー性皮膚炎の原因になる」という説が一部にありました。しかしこのケースは実際にはあまりありません。現在では反対に「アトピー性皮膚炎が食物アレルギーの原因になる」という説が有力です。
生活環境にある食物のごく小さい成分は皮膚から体内に入り込みますが、アトピー性皮膚炎で皮膚に炎症がある場合には皮膚にある免疫細胞が過剰に反応します。すると、その食物に対してアレルギーを起こす準備が整ってしまいます。そして次にその食物を食べたときにアレルギー症状が出てしまうと考えられるのです。
したがって、食物アレルギーを合併している場合、アトピー性皮膚炎を治療するには保湿剤やステロイドを使ったスキンケアが最も効果的です。スキンケアを十分に行ってもアトピー性皮膚炎が改善しない場合には、食物アレルギーの影響を確かめたうえで最小限の食物除去を行うことがあります。