アキレス腱が太くなる家族性高コレステロール血症とは?治療・診断基準

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家族性高コレステロール血症とは

家族性高コレステロール血症とは

家族性高コレステロール血症は、遺伝子が原因で悪玉LDLコレステロールの値が特別に高くなる病気です。治療をしない場合、若年期の狭心症・心筋梗塞の発症率は一般の人の20倍と言われています。
日本人の200人から500人に1人は、家族性高コレステロール血症だとみられます。ところが、病気と診断されているのはその1%未満しかいません。つまり、病気の人のほとんどは自分がそうだと気づいていないのです。

脂質異常症との違い

通常の脂質異常症は、食べ過ぎや運動不足、肥満などが大きく影響しますが、家族性高コレステロール血症はこれらの生活習慣と関係なく発症します。
生まれつき全身の細胞でコレステロールの取り込みに根本的な異常が見られます。

LDL受容体に異常が見られる

コレステロールは血液で全身に運ばれる

コレステロールは全身の細胞にとって必要なものであり、LDLという粒子になって血液を介して肝臓から全身に運ばれます。このときLDLは細胞の表面にあるLDL受容体にくっつき、細胞の中に入っていきます。このような仕組みによって細胞は必要なコレステロールを取り込むことができます。

家族性高コレステロール血症ではLDL受容体にかかわる遺伝子に異常がある

しかし、家族性高コレステロール血症ではLDL受容体に関わる遺伝子に異常があり、LDLがLDL受容体にくっつくことができず細胞内にうまく入っていくことができなくなります。その結果、LDLが血液中に増えると悪玉になって血管の壁に入り込み、動脈硬化を引き起こします。

若くても狭心症や心筋梗塞になりやすい

家族性高コレステロール血症の場合、LDLコレステロールの値は胎児の時から高く、10歳ごろから動脈硬化が急速に進行します。
20-30代から狭心症や心筋梗塞が起こりやすく、通常より15年から20年も早く発症します。

家族性高コレステロール血症の人の狭心症・心筋梗塞の発症率

上のグラフは、狭心症や心筋梗塞を発症した人の割合です。家族性高コレステロール血症の人は、男性では20代から、女性では30代から狭心症・心筋梗塞を発症する人が増えてきます。年齢と共に急激に発症が増え、男性では最終的に30%を超える人が狭心症や心筋梗塞を発症します。死亡原因としても、家族性高コレステロール血症の人の場合、男性6割以上、女性5割以上が狭心症や心筋梗塞であると言われています。

どのように親から子へ引き継がれるのか

一般に、遺伝子は2つで1組になっており、両親から1つずつ受け継ぎます。家族性高コレステロール血症の遺伝子も2つが1組となります。

変異のある遺伝子(ヘテロ型・ホモ型)

2つのうち1つに変異がある場合をヘテロ型といい、2つともに変異がある場合をホモ型といいます。この病気は変異が1つでも2つでも発症します。

ヘテロ型・ホモ型の発症頻度

ヘテロ型はLDLコレステロール値が平均300mg/dL程度まで高くなります。家族性高コレステロール血症の人の大半はヘテロ型で、日本では200~500人に1人と見られています。ホモ型は症状がさらに重くなり、LDLコレステロールが平均700mg/dL程度まで高くなります。16万人~100万人に1人がホモ型と見られています。

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家族性高コレステロール血症の診断基準

家族性高コレステロール血症の診断基準
家族性高コレステロール血症の診断基準

家族性高コレステロール血症が疑われるのは次の3つの場合です。
2つ以上に思い当たる場合は、糖尿病・内分泌代謝内科や循環器内科などの専門の医療機関を受診することがすすめられます。病気を早く見つけて早く治療すれば、狭心症や心筋梗塞をかなり食い止めることができます。

(1)未治療時のLDLコレステロール値が180mg/dL以上
特に、若いのに値が高い場合や、薬をのんでもなかなか値が下がらない場合は、家族性高コレステロール血症が疑われます。

(2)2親等以内の家族に家族性高コレステロール血症の人または若年で狭心症や心筋梗塞を発症した人がいる
男性は55歳未満、女性は65歳未満の場合を指します。

(3)黄色腫と呼ばれるコレステロールのかたまりが体にできている
黄色腫は、特にアキレス腱に起きやすく、両脚とも太くなります。患者さんの8割に現れるという調査結果もある一方、若い人には現れないことも多くあるようです。

薬を使った治療法

家族性高コレステロール血症の治療法

家族性高コレステロール血症と診断されたら、LDLコレステロール値100未満を目標に治療します。治療は、薬が積極的に使われます。まず、コレステロールの合成を抑えるスタチンが使われます。ただ、スタチンだけでは治療効果が不十分な場合が多く、その場合にはコレステロールの吸収を抑えるエゼチミブ、LDLの酸化や黄色腫を抑えるプロブコール、胆汁酸の吸収を抑えるレジンなどを併用します。

2016年に登場した薬が、PCSK9阻害薬(エボロクマブ)です。2~4週間に1回注射する薬で、スタチンと併用して使用します。日本人には特に効果があり、スタチンとの併用で、スタチン単独の場合に比べ、LDLコレステロール値が平均7割近くも下がることがわかっています。まれですがホモ型という重症のタイプでは、スタチンに加え、エゼチミブ、プロブコール、レジン、PCSK9阻害薬などの薬を併用したり、2016年に登場したMTP阻害薬(ロミタピド)を使うこともあります。しかし、薬だけでは十分な治療効果が得られくい場合は血液から直接、LDLを除去する治療も行われます。

家族性高コレステロール血症 生活習慣の改善

薬による治療だけでなく、生活の改善も大切です。食べ過ぎや運動不足、肥満などが重なると、さらにLDLコレステロール値が上がってしまうので、動物性脂肪やコレステロールを制限しましょう。また、喫煙は動脈硬化を進行させるので禁止します。

この記事は以下の番組から作成しています

  • きょうの健康 放送
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