【高齢者のうつ】 原因や症状、検査・治療法について徹底解説

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高齢者のうつ病うつ状態が続く食欲がない眠れない・眠りが浅いこころ脳・神経全身

高齢者のうつ病とは

高齢になると、環境の変化に加え、加齢に伴う衰えや病気なども増え、うつ病になりやすいと考えられています。

環境的な原因としては、「退職」「家族、友人などの病気や死」「子どもの自立」など大きな生活環境の変化によって、気分が落ち込む理由が増えることが挙げられます。身体的な原因としては、「体力の衰え」や「病気」、加齢に伴う「脳の機能の衰え」などが挙げられます。

また、高齢者に多い、がんや脳卒中、認知症、パーキンソン病、糖尿病などの病気は、うつ病を併発しやすく、うつ病の発症をきっかけに持病が悪化することもあります。そのため、高齢者の場合は、うつ病と併発している病気も併せて治療していくことが必要となります。

高齢者特有のうつ病の症状

高齢者のうつ病とは

高齢者のうつ病には、若い人のうつ病とは異なる特有の症状があります。まず、心の不調よりも「頭痛」「胃痛」「息苦しさ」「しびれ」「めまい」など体の不調を多く訴えます。内科などで検査をしても原因が見当たらず、精神科を受診してうつ病と診断された、というケースが少なくありません。また、高齢者に特有の症状として、体の不調のほかに「妄想」や「不安・緊張」などがあります。

高齢者特有のうつ病の症状

妄想とは、現実ではないことを現実だと思ってしまうことです。たとえば、治る病気であっても「自分は不治の病にかかってしまった」と思う「心気妄想」や、「周りに迷惑をかけているから詫びなければ」と思う「罪業妄想」、お金があるのに「お金がなくて生きていけない」と思い込む「貧困妄想」などがあります。

さらに、不安や緊張にかられるのも特徴で、不安や緊張が強まると自殺につながることがあるので注意が必要です。

うつ病の検査

うつ病の検査

高齢者はほかの年代に比べて病気になりやすいため、うつ病が疑われる場合でも、ほかの病気がないかどうかを調べます。特に憂うつな気分を引き起こしたり、うつ病を併発しやすい認知症、脳卒中、パーキンソン病などの有無を調べるための「CT検査・MRI検査」や「認知症検査」を行う場合があります。

CT検査・MRI検査

脳の断面図が得られる画像検査です。脳卒中の有無を調べます。

認知症検査「脳血流シンチグラフィ」

脳の血流状態を画像で見ることができる「脳血流シンチグラフィ」を行い、認知症かどうかを調べます。進行した認知症では明らかな脳の血流が見られ、どの部位が低下しているかも、認知症のタイプを判断する参考になります。

認知症検査「脳機能のチェック」

医師が「あなたは何歳ですか」「知っている野菜をできる限り言ってください」などの質問を患者さんにして、認知症の有無を調べるテストです。

うつ病が原因で起こる仮性認知症とは

これらの検査は、「仮性認知症」を診断するのにも役立ちます。仮性認知症とは、認知症とは区別される病気で、うつ病が原因で起こる一過性の認知機能障害です。認知症に特有な記憶障害がなく、うつ病の治療をすれば改善される病気ですが、診断は専門医でも難しいとされています。

高齢者のうつ病の治療

うつ病の治療

高齢者のうつ病の治療は、基本的にほかの年代と変わりません。うつ病の治療の柱になるのは、「心理教育」と「支持的精神療法」です。

心理教育では、患者さん本人や家族に「うつ病はどんな病気か」「どんな治療が必要か」という情報を与え、うつ病について理解してもらいます。支持的精神療法では、医師が患者さんの訴えに耳を傾け、悩みを共感します。これらに併せて、必要に応じて「薬物療法」や「認知行動療法」など、ほかの治療を組み合わせることもあります。

薬物療法は、高齢者に多い食欲不振や睡眠障害、そして不安・緊張などの改善に効果的です。ただ、若い人に比べて副作用が出やすく、効果が出にくいというデメリットがあります。また、持病の治療薬とののみ合わせが悪い場合には薬が使えない場合もあります。抗うつ薬を服用する場合は、1種類の薬を少量からスタートし、効果や副作用を見極めます。うつ病の症状が重い場合は、入院し、場合によっては脳に電気を流す「修正型電気けいれん療法(ECT)を行うことがあります。

薬物療法

抗うつ薬についてはこちら認知行動療法についてはこちら

周りが気をつけたいうつ病のサイン

周りが気をつけたいうつのサイン

高齢者のうつ病は、症状が出ていても「年齢のせいだろう」と本人も家族も見過ごしてしまい、受診が遅れがちです。うつ病の場合はもちろん、認知症やほかの病気であっても早めの対処が大切ですから、家族や周囲の人は、うつ病のサインを見逃さないようにしましょう。

高齢者のうつ病のサインは、以下のようなものです。

  • 習慣だったことができなくなる
  • 無口になり、ぼーっとしている
  • 趣味や好きなことへの興味がなくなった
  • 体に不調があるが、検査をしても異常が見つからない
  • 死にたい気持ちをほのめかす

ポイントは「ふだんとは違う」ということです。たとえば、いつも早起きだったのに、早起きしなくなったなど、これまでの様子と違うと感じることがあったら、医療機関への受診を勧めてください。まずは、かかりつけ医に相談するのもよいでしょう。

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