
うつ病は「気分が落ち込む」といった心の状態だけではなく、「食欲がない」「体が重い」など、体にも症状が出る病気です。うつ病は検査では判定できないため、症状で判断します。
下記の診断基準1のどちらか1つを含み、診断基準2と合わせて5つ以上の症状が、ほとんど一日中、2週間以上続き、仕事や家庭などに何らか問題が生じている場合に、うつ病と診断します。このうち軽症のうつ病は、日常生活において生産性は落ちてはいるものの、なんとか休まず続けられる程度のものを指します。
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うつ病は「気分が落ち込む」といった心の状態だけではなく、「食欲がない」「体が重い」など、体にも症状が出る病気です。うつ病は検査では判定できないため、症状で判断します。
下記の診断基準1のどちらか1つを含み、診断基準2と合わせて5つ以上の症状が、ほとんど一日中、2週間以上続き、仕事や家庭などに何らか問題が生じている場合に、うつ病と診断します。このうち軽症のうつ病は、日常生活において生産性は落ちてはいるものの、なんとか休まず続けられる程度のものを指します。
うつ病への対応は、その重症度によって異なるため、重症度の判定も大切です。判定のポイントは、診断基準の項目に当てはまる数と、日常生活にどの程度問題が生じているか、の2つです。当てはまる項目の数はあくまでも目安で、実際の診断では、仕事や学校、家庭など、社会的な機能に問題が生じていないかどうかがより重視されます。うつ病かどうかの判断や、重症度の判定は自分で行わず、心配な場合は医療機関を受診しましょう。
うつ病の診断は難しく、他の病気との見極めも重要です。うつ病でよく見られがちな気分の落ち込みなどの症状は、アルコール依存症や認知症、甲状腺やがんなどの病気でも起こります。症状がうつ病によるものか、他に原因があるかどうかを正確に診断することも大切です。
中等症・重症のうつ病についてはこちらうつ病の治療では休養が必要だということは広く知られていますが、これまでのガイドラインには休養に関する記述がありませんでした。
日本うつ病学会が2016年に改定した「うつ病治療ガイドライン」では、軽症のうつ病についても内容が新しくなりました。「休養についてどう考えるか」について書き加えられ、軽症のうつ病では「患者さんの状態に応じて休養をとることが望ましい」とされています。
病状によっては漫然と休むのではなく、何かできることに少しずつチャレンジすることや、役割を回復していくことも必要だという考え方です。長く休むと社会復帰が難しい場合もあるため、無理のない範囲で職場や学校と接点をもつようにします。
漫然と休まず、挑戦することも大切としたガイドラインの改定にある考え方の背景には、うつ病の治療方針が「ストレスを減らすこと」から「レジリエンスを刺激すること」に重きを置くようになったことがあります。
レジリエンスとは、ストレスと相対する言葉で、誰もが持っている「心の自己回復力」のことです。心にはストレスがかかったとき、それを跳ね返す力があります。「よくなりたい」「前向きになりたい」といった気持ちそのものがレジリエンスで、うつ病の治療では、この力を刺激するようにします。
軽症のうつ病の治療の柱になるのは、「心理教育」と「支持的精神療法」です。心理教育では、患者さん本人や家族に「うつ病はどんな病気か」「どんな治療が必要か」という情報を与え、うつ病について理解してもらいます。
支持的精神療法では、医師が患者さんのつらい体験や感じ方をよく聞いて受け止め、共感します。そのうえで抱えている問題を一緒に考えて整理していきます。この「心理療法」と「支持的精神療法」の2つである程度よくなることが多いのですが、さらに、患者さんの希望や症状のケースによって「薬物療法」や「認知行動療法」を併用することもあります。
抗うつ薬についてはこちら認知行動療法についてはこちら軽症のうつ病の場合、回復するために自分でもできることがあります。患者さんが自分で心がけることとして参考になるのが、オランダで行われた調査で、うつ病から回復した患者さんに、効果があったセルフケア方法について聞いたものです。それによると、次の3つの方法が効果的とわかりました。
いつ会社に復帰できるかなど遠い将来のことではなく、「明日は公園に行こう」など明日のことを考える。また、楽しかったことなどポジティブな記憶を思い出す。
毎日決まった時間に家を出るなど。
余力がある場合は、外に出て散歩やウォーキングなどの運動をするなど。ただし、無理は禁物なので医師と相談しながら行うこと。
うつ病の患者さんは、「がんばれない自分」を責めてしまいがちです。なので、家族や周囲の人たちからの「がんばれ」という励ましは逆効果。励まさずに受け入れるといった対応が大切です。
うつ病は再発を繰り返すほど重症化していきます。軽症だからといって軽い病気というわけではありません。治療を開始したら、途中でやめずにきちんと治療を続けるようにしましょう。
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