変形性股関節症の治療 手術(関節鏡手術・骨切り術・人工股関節置換術)について

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変形性股関節症の手術

変形性股関節症の治療としては、生活スタイルの見直しや歩行時の注意などの「生活改善」のほか、「運動療法」「薬物療法」「手術療法」があります。生活改善や運動療法、薬物療法を行っても痛みが改善されない場合に手術を検討します。主な手術には「関節鏡手術」「骨切り術」「人工股関節置換術」があります。どの手術を受けた場合も、生活改善や運動療法を継続することが重要です。

関節鏡手術

関節鏡手術

関節鏡手術は関節に内視鏡を入れ、関節の中で治療をするものです。皮膚を2か所から3か所、1cmほど切開して、ここから関節の中に、直径5mm程度の関節鏡と手術器械を入れて行います。
軟骨がすり減ることで、軟骨の表面がザラザラになり周辺に炎症を起こしますが、その炎症が起きている場所を切除したり、痛みの原因になっている軟骨のかけらを取り除いたりします。病気の進行を遅らせることができますが、軟骨が増えるわけではないので、治療後に痛みなどの症状が再発したり、徐々に進行したりするので、定期的な検診が必要です。この手術は前股関節症から末期股関節症まで幅広い患者さんに行うことができます。

骨切り術

骨切り術の前と後の股関節

骨切り術には骨盤側の手術と大腿骨(だいたいこつ)側の手術がありますが、どちらも骨の一部を切り取り、それを移動させる手術です。
骨盤側の手術の場合、骨盤の臼蓋(きゅうがい)をくさび形に切り取って、外側に引き出して固定します。手術をする前は、臼蓋に接する大腿骨の部分が少ないため、軟骨の狭い部分に負荷が集中して、すり減りやすい状態ですが、手術を行うと、大腿骨全体が臼蓋に覆われるので、軟骨の広い面で体重を支えられるようになります。軟骨がすり減りにくくなるため、?い間関節が維持できるようになります。
この手術の対象になるのは、前股関節症から進行期股関節症の一部までの患者で、軟骨が十分に保たれている40歳ぐらいまでです。

人工股関節置換術

映像:日本ストライカー

股関節はカップ状の寛骨臼にボール状の大腿(たい)骨頭がはまりこんでいます。人工股関節置換術では、股関節の損傷している部分を切除したあと、寛骨臼にカップ状の部品を取り付け、大腿骨にステムという土台の部品を差し込み、その先にボール状の部品を取り付け、組み立てます。この手術を受ければ多くの場合、痛みはほとんど消失し、脚もほぼ自由に動かせるようになります。
人工股関節置換術は、変形性股関節症が末期まで進行した場合に行います。これまで患者さんは60〜70代が中心でした。しかし人工股関節の耐用年数が20年から30年程度まで伸びてきたことにより、より若い年齢でもこの手術を選択する人が増えつつあります。若い時期に活発で質の高い生活を送りたい人には、人工股関節は良い選択だと考えられています。

ロボティックアームを使った人工股関節置換術も

人工股関節置換術では、ロボティックアーム(ロボットのアーム)を使った手術が2019年に保険適用となりました。手術をより正確に安全に行えることがメリットです。

CTで撮影した股関節画像:日本ストライカー

事前に患者さんの股関節をCTで撮影し3次元のモデルを作成します。モデルを使って骨をどう削るか、人工股関節をどう埋めこむかといった計画案をシミュレーションしたうえで手術を行います。

ロボティックアーム
モニターに骨が削られていく様子が映しだされる

ロボティックアームは医師が動かしますが、計画案の範囲内でコントロールされます。
骨盤のカップの部分をロボティックアームで削るとき、そばのモニターに骨が削られていく様子がリアリタイムで映し出されます。緑色の部分が計画案で削ると決めた範囲です。実際に削られると白色に変わっていきます。万一、アームの動きが計画案から外れそうになるとロックされ静止します。

カップ状の部品
カップの位置が青色で表示される

削ったところに人工のカップをロボットアームを使ってはめこみます。カップの位置が青色で表示され、角度や深さを計画案に一致させることができます。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2023年4月 号に掲載されています。

きょうの健康テキスト
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この記事は以下の番組から作成しています

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