ドライマウスとは
唾液が少なくなり口が乾く「ドライマウス」
ドライマウスとは、唾液の量が減って口やのどが乾燥した状態のことを言います。正常であれば、1日に分泌される唾液の量は1リットルから1.5リットルです。しかしドライマウスの人の場合、唾液量が半分以下になります。下の写真のように口の中が乾燥して舌に潤いがなくなり、しわしわになってしまいます。

高齢者はドライマウスになりやすい
特に、高齢者になると唾液の分泌量が減ったり、使っている薬の副作用があったりするので、ドライマウスになりやすいと言われています。そのため、高齢社会に伴って、今後も患者数が増えていくことが予測されます。
歯周病や味覚障害などに繋がることも
唾液が減ると、しゃべりにくい、乾いた物が食べづらいなどの症状が出るだけでなく、「歯周病」「虫歯」「口内炎」「味覚障害」など、そのほかの病気も引き起こすことがあります。
「歯周病」についてはこちら
「虫歯」についてはこちら
「口内炎」についてはこちら
唾液の役割
そもそも唾液には、以下のような重要な働きがあります。

まず、唾液には口の中のウイルスや細菌を撃退する抗菌作用があります。そして細菌や食べかすなど口の中の汚れを洗い流し、口臭を予防する働きもあります。加えて、口の中を中性にする作用もあり、食後は口の中が酸性に傾きやすいため、唾液が中性に戻してくれます。その他、弱くなった歯の修復や味を感じやすくするなどの役割も担っています。
唾液が減ると起こる問題

唾液の分泌が減ることによって、さまざまな問題につながります。
口の中で細菌が増え、虫歯や歯周病になりやすくなり、歯の修復力も低下します。それだけでなく、口が乾くことでカンジダ菌が急激に増え、痛みを引き起こしたり、舌に炎症が起きて味覚障害を引き起こしたりすることもあります。
ドライマウスの原因

ドライマウスの主な原因は、さまざまありますが、特に多いのは加齢です。加齢によって、唾液を作る唾液腺の機能が低下し、唾液の分泌量が減ってしまいます。虫歯やフィットしない入れ歯を使っているせいで食べ物を噛む回数が減っていたり、ストレスを感じていたりするときも唾液の分泌量が減る場合もあります。また、抗うつ薬や抗アレルギー薬、降圧薬などの副作用として、唾液の分泌量の低下がみられることもあります。免疫細胞が自分の体の細胞を壊してしまう自己免疫疾患の一つ、シェーグレン症候群では、唾液腺や涙腺の細胞がダメージを受けるため、唾液や涙の量が減ります。糖尿病が重症化したときも口の渇きが現れることもあります。
ドライマウスの症状

ドライマウスになると、以下のような症状が出ることがあります。
- 口やのどのかわきがずっと続く
- 口の中がネバネバする
- 口の中が痛い
- パンやビスケットなど乾いた物が食べづらい
- 味覚がおかしい
- 夜、口が乾いて目が覚める
誰しも緊張したときなど、一時的に口が乾くことがあります。実際は、病気でない場合がありますが、心配であれば一度、歯科やドライマウスを専門にしている医療機関を受診しましょう。上記の症状が慢性的に続いている場合や、口に痛みなどの違和感があるときには特に注意が必要です。
ドライマウスの検査

ドライマウスが疑われる場合は、検査でその原因を探っていきます。
問診では、服用中の薬や、糖尿病かどうか、また、ストレスが原因となることも多いので、生活やうつ病の有無などについて聞きます。視診では、口の中を確認し、乾き具合や炎症があるかどうかを見ます。また、診断のために唾液分泌検査が行われます。決められた時間でどれだけの唾液が出るか調べます。シェーグレン症候群が疑われる場合には、唾液腺の造影検査や病理検査、血液検査などを行います。
ドライマウスの治療

ドライマウスの治療では、まず、その原因を取り除くことから行われます。
たとえば、入れ歯が合っていないために十分に噛めず、唾液の分泌が減っている人は入れ歯の調整を行う、シェーグレン症候群の場合には唾液の分泌を促進させる薬を処方するなどです。こうして原因別の治療をした上で、ドライマウス用のケア用品を使って対症療法も行っていきます。
洗口液(マウスウォッシュ)
保湿剤が入っていて、口をゆすいで使用します。
保湿スプレー
口の中にスプレーして使用します。外出先で使用しやすいのが特徴です。
保湿ジェル
ジェルを指で口全体に塗ります。この時唾液腺が刺激され、唾液が出てくる効果も期待できます。
マウスピース

医療機関でその人に合わせて作ります。夜寝る時に、上あごに装着して使用します。上あごには唾液を分泌している腺がたくさんあるので、これを覆うことで唾液の蒸発を防ぎます。
夜間口呼吸防止テープ
寝る時に唇に貼り付けて口を開かなくすることで、口呼吸による唾液の蒸発を防止します。マウスピース以外は市販されています。外出時は保湿スプレーを使い、寝る時にはマウスピースを使うなど、時と場合などによってうまく使い分けましょう。
ドライマウスの予防と対策

ドライマウスの対策として、まず口が開きやすい人は口を閉じる習慣を身につけましょう。また、かむ回数が少ない人は唾液の分泌が減ってくるため、柔らかいものばかり食べずに、かみ応えのあるものを食べると良いでしょう。よく噛むことを習慣化することが大切です。ストレスが続くと口が乾きやすいため、リラックスできる時間を持つようにすることもドライマウスの予防につながります。