歯周病の原因、進行、チェックリスト、検査、治療法

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歯周病とは その原因と仕組みに迫る

歯周病とは
歯周病とは

歯周病は、歯を支える歯ぐきなどに炎症が起こる病気です。
歯周病を招く原因は、プラークという歯のネバネバとした付着物の中に潜む歯周病菌です。プラークは、口のケアが不十分な場合や、糖分を摂取しすぎたときに増えていきます。重症化すると、やがて歯ぐきや歯ぐきの中にある骨(歯槽骨)などが破壊され、歯が抜け落ちてしまうこともあります。
歯周病は、あらゆる年代で増加していますが、際立って増えているのが高齢者です。昔に比べて歯が残っている人は増えているものの、ケアが十分にできていないことが原因と考えられています。

歯周病はどのように進行するのか

歯周病は、歯肉炎と歯周炎の二つに分けられ、歯肉炎から歯周炎へと進行していきます。

歯肉炎

歯肉炎とは、プラークによって歯ぐきに炎症が起こり、腫れている状態のことをいいます。進行すると、歯と歯ぐきの隙間が深くなっていき、そこに歯周ポケットという溝ができてしまいます。すると、その中に歯周病菌が増殖し、炎症が進んでいきます。

歯周炎

炎症が進行すると、歯を支えている歯槽骨や歯根膜などが破壊される歯周炎が起こります。さらに重症化すると、歯を支えている歯槽骨が溶け出して、わずかな力が伝わるだけで歯が抜け落ちることもあります。
歯周炎が進行してしまうと、歯ぐきが下がり、虫歯になりやすい歯の根元の部分が露出します。歯周病になった場合は、あわせて虫歯にも注意しましょう。

「虫歯」についてはこちら

特に注意が必要 急速に進行する「侵襲性歯周炎」

歯周炎

歯肉炎が発症してから歯周炎になって歯が抜けるまでには、通常15~30年ほどかかるとされており、こうした歯周炎は慢性歯周炎と呼ばれます。一方、2~10年ほどで急速に進行するタイプの歯周炎もあります。これは侵襲性歯周炎と呼ばれ、特に注意が必要です。

侵襲性歯周炎の患者数は少ないものの、10代後半から20代の若い頃に発症し、歯の表面にプラークの付着が少なく歯肉に強い炎症がないにもかかわらず、急に歯がぐらつくなど、悪化のスピードも速いのが特徴です。どちらかといえば、女性に多く発症します。

侵襲性歯周炎の原因は、主に、口の中に特異的な細菌が多く存在していることだと考えられています。この細菌は、異物を排除して体を守ろうとする白血球などに対して毒性を持ち、歯周ポケット内で急速に増加します。その結果、炎症がますます強くなり、歯周組織が破壊されます。この特異的な細菌が歯周ポケット内に多く存在するかどうか、またそのことによって炎症が強くなるかどうかには、遺伝的な要因が関係していると考えられています。

30代から40代で歯がぐらつくなど重度の歯周病になっている人は、侵襲性歯周病の可能性があります。若い人で、プラークの付着が少ないにもかかわらず歯ぐきに出血がある場合も、侵襲性歯周病の恐れがありますので、早めに歯科を受診し、適切な診療を受けましょう。

歯周病が進行することでもたらされる病気とは

歯周病は、歯にまつわる病気だけでなく、全身にさまざまな影響を及ぼすことがわかっています。
歯周病菌の刺激によって、脳や心臓の血管が動脈硬化になりやすくなります。そのため、脳卒中心筋梗塞などを招く危険性が高まります。また歯周病菌は、誤えん性肺炎の原因になることもあります。
歯周病によって生じる炎症物質は、血糖値を高くしてしまうため、糖尿病の人は血糖の管理が困難になります。また、すでに糖尿病のある人は、歯周病を招きやすいと考えられています。さらに、炎症物質は脂肪をためこみやすい体内環境にするため、肥満にもなりやすいとされています。

妊娠している女性が歯周病にかかると、陣痛を促す物質が増えることで、早産や低体重児出産に影響すると考えられています。
ほかにも、歯周病によって歯を失い、噛むことができなくなると、認知症を発症するリスクが高まるといわれています。

歯周病かどうかがわかるチェックリスト

チェックリスト

歯周病になると、次のような症状が出ることがあります。いくつか当てはまる場合は、歯周病の可能性が考えられます。

  • 歯ぐきがむずがゆい
  • 歯みがきやフロスを使用すると出血する
  • 口の中がネバネバする
  • 歯が長くなった気がする
  • 歯がしみる
  • 歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなった
  • グラグラする歯がある

初期の歯周病であれば、しっかりとセルフケアをすれば改善が期待できますが、それでも良くならない場合や、上記の項目に多く当てはまる人は、受診をおすすめします。

歯科での歯周病の検査方法

治療

歯周病が疑われて歯科を受診すると、まず行われるのが、歯や歯ぐきの状態を調べる歯周組織検査です。この検査で歯周病と診断された場合は、歯磨きの指導や歯石の除去が行われます。その後、再評価を行い、改善がみられない場合は歯周外科手術を行います。

進行度に合わせて行われる歯周病の治療方法

歯周病の治療は、プラークや歯石を取り除くことが基本です。歯周病が進行して歯周ポケットが深くなり、たまった歯石がスケーラーでも十分に取れない場合は、外科手術を行うこともあります。

歯みがきの指導

スクラッビング法
バス法

歯周病の原因は、歯周病菌の住みかとなるプラークなので、自分で行う毎日の歯みがきが重要です。歯磨きをする時は、歯ブラシを鉛筆を持つように持ち、また、歯ぐきを傷めてしまうことがあるので、力を入れたゴシゴシ洗いは避けてください。

歯に対してブラシを90度にあて、細かく振動させるスクラッビング法や歯と歯ぐきの間にブラシを45度にあてて細かく振動させるバス法などのやり方で磨けば、効果的にプラークを落とすことができます。また、歯並びに合った磨き方や、歯科で歯間ブラシやフロスの使い方について指導を受けることも重要なポイントです。

歯石の除去

歯石
スケーラー

プラークがミネラルを吸着して石のように硬くなった歯石は、軽石のようにたくさんの穴があり、そこに細菌が住み着き、毒素をため込みます。この毒素が歯周病の炎症を進めてしまいます。
歯石は、スケーラーという器具で取り除きます。手用スケーラーで削り取る場合と、超音波スケーラーで粉砕する2つの方法があります。
また、歯石を削り取ったあと、歯の表面をなめらかにするルートプレーニングも行われます。

歯周外科手術

フラップ手術
歯周組織再生治療

歯石を除去後、再評価でも改善がみられない場合は、外科手術が行われることがあります。手術にもさまざまな種類がありますが、歯周ポケットの深い所に歯石がある場合にはフラップ手術を行います。

フラップ手術では、メスで歯ぐきを切開してから歯石を取り除き、ルートプレーニングをした後、歯ぐきを元に戻して縫い合わせます。
最近では、フラップ手術と合わせて歯周組織再生治療を行うケースもあります。人工の特殊な膜「GTR膜」や特殊なタンパク質を使って、歯を支える骨などの組織を再生する治療です。ただ、歯槽骨の状態によっては、行えない場合があるので、希望する場合は担当医にご相談ください。

歯周病のQ&A

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この記事は以下の番組から作成しています

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