高齢者に効果的な筋トレと運動時のコツ 筋力・脚力をつけるトレーニング

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運動の健康効果サルコペニアやせてきた筋肉足・脚全身

筋肉量の維持や増強には運動が欠かせない

75~84歳の高齢者の歩く速さと10年後の生存率を調べた最近の研究で、歩くのが速い人は長く生きられることがわかってきました。歩行速度は筋肉量と関係しているため、筋肉の量が多いほど長生きできることを表しています。

筋肉量と健康・寿命の関係とは 詳しくはこちら

筋肉量の維持や増強には、運動が欠かせません。筋肉量を維持するためには、少なくとも1日6000~8000歩は歩くことが必要ですが、さらに筋力を増やすには筋力トレーニング(筋トレ)を行う必要があります。
筋肉量は年齢とともに低下しやすくなりますが、筋トレを行えば、高齢になっても筋肉を増やすことができます。

筋肉量だけでなく、筋力も重要

ふとももの筋肉(CT)

写真はふとももの筋肉のCTで、左側が筋肉が多い人、右側がサルコペニアの人のものです。グレーに映し出されている部分が筋肉、黒い部分が皮下脂肪であり、サルコペニアの人は筋肉が少なく、皮下脂肪が多いことがわかります。
筋肉は「量」も重要ですが、「質」すなわち筋力も重要です。筋肉を増やすだけでなく力をつけるためには、筋トレのような特殊な運動が必要でしょう。

下半身を中心とした筋トレが効果的

筋力が落ち移動機能が低下した高齢者を対象に1時間程度の運動を週2回行った調査では、1年間で筋肉が5.5%増加しました。運動は継続して行うことが大切なので、比較的取り入れやすい運動を生活の中に取り入れて行うとよいでしょう。特に、下半身を中心に筋トレを行うと、効率的に筋力アップができます。

筋肉量の変化(要介護高齢者)

筋力の弱い人は、無理をしないで2日に1度くらいのペースで行いましょう。筋トレをするとき、一生懸命になりすぎて息を止めてしまうと血圧が上がってしまいます。数を数えながら行うと自然に呼吸ができ血圧が上がりにくくなります。運動のあとにコップ1杯の牛乳や豆乳をとるなど、運動と併せて栄養をとることも効果的です。

筋肉増強の栄養学 筋肉を増やす2つの栄養素とは

下半身を鍛える3つの筋力トレーニング

下半身の筋肉を増やすトレーニングを紹介します。無理のない回数から初めて、徐々に増やしていきましょう。ただし、ひざや腰の痛みなどのため、歩いたり、強い運動をしたりするのが難しい人もいます。比較的取り入れやすい運動を継続していくようにしましょう。若い人は負荷を上げて行うのもおすすめです。

【注意】

  • 高血圧などの持病がある人は、運動を行う前に医師に相談する
  • 無理はせず、痛みのない範囲で行う
  • いすは安定しているものを使用し、平坦で滑らない場所に置いて行う

(実技指導)筑波大学大学院 准教授 山田実

いすに座って脚上げ運動

いすに座って脚上げ運動

ふとももの大たい四頭筋や足の付け根にある腸腰筋を鍛える運動です。これを行うことで、いすからの立ち上がり、階段の上り下りが楽になる効果が得られます。

  1. いすに座り、背もたれに寄りかからず背筋を伸ばす。
  2. 少しひざを伸ばした状態から、ひざの角度を変えずにゆっくり上げ下ろしを行う。左右10回ずつが目安。この際、床にかかとを付けないように、また呼吸を止めないように注意する。

タオルを使った運動

タオルを使った運動

大たい四頭筋のひざに近い部分を鍛える運動です。加えて、腕の筋肉も同時に鍛え、握る力や引く力を強くすることができます。

  1. タオルを半分に縦に折って細長い状態にする。
  2. かかとにタオルを引っ掛けて、ひざとひじを少し曲げた状態で足を持ち上げる。
  3. 足を持ち上げるように腕を弾きながら、同時に足でタオルを押し、引っ張り合いのような形で力を入れる。かかとでぐっとタオルを押すことを意識するのがポイント。
  4. 3の状態を5秒間キープして、少し力をぬき、また5秒間キープを繰り返す。10回3セットが目安。

その場足踏み運動

その場足踏み運動

その場で足踏みをする非常に簡単な運動で、足の付け根にある腸腰筋を鍛えることができます。有酸素運動としての効果も高く、筋肉への負担が少ないのが特徴です。

  1. 背筋を伸ばし、やや浅くいすに腰かける。
  2. 腕をしっかりと振りながら、その場で足踏みをする。体の軸をまっすぐ保ち、腕は前ではなく後に動かすことを意識するのがポイント。目安は3分間。

【動画つき】無理せずできる"若返り"筋トレ

この記事は以下の番組から作成しています

  • きょうの健康 放送
    筋肉を強くしよう「筋肉増強運動学」