骨粗しょう症の薬が必要な人
骨粗しょう症によって骨折を起こした人は、その後続けて骨折する危険性が2~4倍になるという報告があります。骨粗しょう症の予防や治療には運動と食事が大切ですが、それだけで不十分な場合には、骨折を防ぐために、薬による治療が行われます。
次のような人は、いずれも骨折の危険性が高いため、薬による治療が必要です。
- わずかな衝撃で骨折した(脆弱(ぜいじゃく)性骨折がある)人(大腿骨(だいたいこつ)近位部骨折または椎体骨折)
- 骨密度が若年成人の平均の70~80%未満の場合で、大腿骨近位部骨折の家族歴など、骨折の危険因子がある人
骨粗しょう症の薬の作用とは


薬の作用を理解する上では、骨の新陳代謝の仕組みを知ることが重要です。破骨細胞が古い骨を壊して窪みを作り、その窪みを埋めるように骨芽細胞が集まり、新しい骨を作ります。健康な成人では、破骨細胞と骨芽細胞の働きのバランスがとれているので、骨は常に新しく作り替えられ、丈夫な骨が保たれます。
しかし骨粗しょう症の場合、骨を壊す破骨細胞の働きが、骨を作る骨芽細胞の働きを上回り、骨の量が減少します。
骨粗しょう症の薬には次の3つのタイプがあり、破骨細胞と骨芽細胞の働きのバランスを整えます。

- 骨を壊す働きを抑える薬
破骨細胞が骨を壊す働きを抑える作用があり、骨が作られる働きとのバランスを保ちます。 - 骨を作る働きを高める薬
骨芽細胞が骨を作る働きを促進する作用があり、骨が壊される働きとのバランスを保ちます。 - 骨の作り替えのバランスを整える薬
骨を壊す働きを抑え、さらに、骨を作る働きを促進する効果もあります。両方の作用によって、骨の作り替えのバランスを調整します。
投与間隔が長期化!骨粗しょう症の新薬

骨粗しょう症は、骨折しなければ症状はあらわれず、骨の強度が低下していることを実感できません。そのため、骨粗しょう症と診断されせっかく薬物治療をはじめても、1年後には患者さんの約5割が処方通りの服薬ができていないという報告もあります。実際、骨粗しょう症が治らないまま背骨の圧迫骨折や大腿骨骨折を起こしてしまい、最後には寝たきりになってしまう人が多いのです。
こうした状況を打破するひとつの対策として「投与間隔が長い、骨粗しょう症の薬」が開発されています。まずは「デノスマブ」。半年に1回の注射で効果が持続します。そして「ゾレドロン酸」。こちらは1年に1回の点滴で済みます。要介護の人や認知症の人、そして高血圧や糖尿病など他の病気で薬を多く服用している人に適していると考えられています。