末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)の初期症状
末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)は、初期は症状がほとんど現れません。ときどき、太ももやふくらはぎに痛みを感じることがある程度です。車での移動が多く、歩く機会が少ない方は気付きにくいので注意が必要です。また、症状がみられても「年のせいかもしれない」と放っておいてしまい、いつのまにか進行して重症化するケースも多く報告されています。
動脈硬化が進むと「間欠跛行(はこう)」の症状が現れる
動脈硬化によって動脈の内腔が50%以上狭くなると、間欠跛行(はこう)という症状が現れます。間欠跛行とは、長い距離を歩いたり階段や坂道を登ったりすると、ふくらはぎの筋肉に痛みを感じ、しばらく休むとまた歩けるようになるという末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)の典型例です。
間欠跛行は、歩くために十分な酸素を脚の筋肉に送れなくなるために起きますが、さらに末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)が進行すると栄養が行き届かないことで皮膚の傷が治らずに潰瘍となったり、最終的には壊死を起こしたりすることもあります。
末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)になりやすい人
末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)に注意が必要なのは、65歳以上の高齢者、50歳〜64歳の喫煙者で糖尿病がある人、脚の痛みや歩行障害がある人、高血圧や脂質異常症を長期間治療している人、透析療法を受けている人などです。該当する場合は、検査を受けるようにしましょう。
末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)は、ABI(足関節上腕血圧比)検査で診断を行います。
ABI検査は、あおむけの状態で足首の最高血圧を上腕の最高血圧で割った値で診断します。
正常値は1.00〜1.40です。0.90以下だと末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)が疑われます。
0.91〜0.99までは境界型と呼ばれ、脚の症状は現れないことがほとんどですが、心筋梗塞などの心臓・血管の病気による死亡率が正常値の人に比べて高いことがわかったため、区別するようになりました。
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治療の基本は生活改善から
末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)の治療には、なによりも生活改善が重要です。喫煙をしている人はすぐに禁煙をしましょう。また、高血圧・糖尿病・脂質異常症のある場合は、血圧・血糖値・コレステロール値の管理をしっかりと行います。
間欠跛行の治療では、主に薬物療法と運動療法が行われます。薬物療法では血液をサラサラにする抗血小板薬(アスピリン・クロピドグレル・シロスタゾール)を使い、病状の進行やほかの部位の動脈の閉塞による病気の予防を行います。
運動療法では、医師や理学療法士の指導の下で1日30分以上の歩行訓練を週3回、3か月以上続けると有効であるとされています。歩行訓練を続けることで細い血管が発達し、足への血流が改善します。
途絶えた血流を再開させる血行再建術
皮膚に潰瘍や壊死がある場合や、薬物や運動療法でも症状が改善しない時は、途絶えた血流を再開させる血行再建術を行います。血行再建術には、動脈硬化を起こした血管を内側から広げる血管内治療と、詰まった血管を迂回してその先の血管につなげるバイパス手術があります。
血管内治療では、カテーテルを通じて風船を膨らませ、血管を拡張させるバルーン拡張術や、ステントを血管内で広げて固定するステント留置術があります。ステント留置術は、太い血管であれば血管が完全に詰まった場合でも治療できるようになりました。血管内治療は、体への負担が少なくてすみますが、細い血管では再び血管が狭くなってしまうことがあります。
バイパス手術では、詰まった動脈を迂回してその先に血液が流れるように、新しい血管(バイパス)を作ります。この手術では、使う血管の形状やバイパスをつなぐ位置など、患者さんの血管の状態に合った血行の再建が可能です。また、カテーテルが挿入できない細い血管でも、バイパスを作ることができます。バイパス手術は劇的な血流の増加を促すので、症状の改善が期待できますが、体への負担は比較的大きくなります。
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