胃がんの治療 進行度によって内視鏡治療、抗がん剤、手術を選択

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胃がん 腹痛 吐き気 食欲がない 胃・腸・食道

ふえる治療の選択肢

「胃がん」の治療では、患者さんの体への負担が少ない手術や、新しい薬が登場するなど、選択肢が広がっています。

切除による治療

内視鏡治療による切除

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

内視鏡治療は、がんが基本的に粘膜にとどまっていてほかの場所に転移が見られない場合に行われる治療法です。胃カメラを口から入れて、モニターを見ながら電気メスを使ってがんができている場所を切除します。
現在は、「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」と呼ばれる治療法が主流で、以前に比べるとがんの取り残しが少なく、再発も減少しています。体の負担は少なく、胃の機能も維持できる治療法ですが、深く切除するため、治療した部位からの出血や、胃に穴があく危険性があり、1週間程度の入院が必要です。

手術による切除

手術による切除

がんが進行して周囲のリンパ節に転移している可能性が高い場合は、外科的に胃を切り取る手術を行います。切除範囲はがんの位置や進行度で異なり、周囲のリンパ節も広く切除します。胃を大きく切除すれば、それだけ手術後の症状も出やすいため、現在は生活の質と切除範囲のバランスを考慮し、できるだけ胃を多く残すように手術が行われています。
ただし、胃の下の部分だけを残すと、少し食べただけでおなかがいっぱいになったり、逆流が起こりやすくなったりして生活の質が著しく低下するため、全摘したほうが良い場合もあります。

手術後の症状

手術後の症状

手術後は、胃の機能が低下するため、「胃切除後症候群」と呼ばれるさまざまな症状が起こりやすくなります。胃を残した場合も全摘の場合も同じです。
手術直後は胃が小さいために小胃症状が起こります。少量食べただけで満腹になってやせてきますが、3か月から半年ほどたつと、本来の胃の機能が戻ってきて少しずつ食べられるようになります。しかし、食べられるようになると、胃が小さいために胃の中の物や消化液などが食道に逆流する胃食道逆流症や、食べ物が急に小腸に流れ込むダンピング症候群などが起こりやすくなるため、食べ方を工夫する必要があります。これらの症状は、適切な対処をすれば治まります。

薬による治療

薬による治療

胃がんの進行を抑える治療では、従来の抗がん剤に加えて、「分子標的薬」や「免疫チェックポイント阻害薬」という新しいタイプの薬による治療が検討されます。2021年改訂の「胃癌(がん)治療ガイドライン」には、多くの選択肢が盛り込まれる見込です。一の矢、二の矢、三の矢と治療の選択肢が広がっています。

抗がん剤を使うのは

抗がん剤を使うのは

抗がん剤治療が必要になるのは、1つは、抗がん剤が治療の柱として使われるのは、手術ができない場合です。がんが腹膜や肝臓など、離れた場所に転移していて、切除しきれない場合は、抗がん剤で治療します。

もう1つは、手術後にがんが再発した場合です。がんの増殖を抑えるために抗がん剤を長期間に渡って使います。また、手術の前や後に補助的に使われる場合もあります。手術後に使うのは再発予防が目的です。離れた場所にがん細胞が潜んでいる可能性があるので、手術後半年から1年間、抗がん剤を使います。手術前に使うのは一部のケースで、がんを小さくして切除しやすくする目的で2~3か月使う場合もあります。

胃がんに対する薬の治療法

薬の組み合わせはたくさんあります。

薬の組み合わせはたくさんあります。

薬による治療を開始する前に、がん細胞の増殖を刺激する物質「HER2(ハーツー)」が胃がんの組織にあるかどうかを調べる検査が行われます。HER2がない(陰性)か、ある(陽性)かによって、最初に使う薬の組み合わせが変わることがあります。日本では、陰性の人が約8割、陽性の人が約2割とされています。

1次治療

HER2がない(陰性)の場合

HER2がない(陰性)の場合

第一選択の組み合わせは、S-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)とシスプラチンの併用です。そのほかカペシタビンとシスプラチン、S-1とオキサリプラチンなどの併用療法があります。患者さんの体調や持病、副作用の可能性に応じて選択されます。

抗がん剤一次治療

第一選択の組み合わせの場合は、S-1(のみ薬)を12回、3週間続け、その後2週間休薬します。シスプラチン(点滴)は8日目に投与します。この5週間を1サイクルとして繰り返します。

HER2がある(陽性)の場合

HER2がある(陽性)の場合

第一選択の組み合わせの場合は、カペシタビンやシスプラチンなどの抗がん剤に、分子標的薬のトラスツズマブを併用して治療します。

1次治療 陽性治療スケジュール

第一選択の組み合わせの場合は、カペシタビン(のみ薬)またはS-1(のみ薬)を1日2回、2週間続け、その後1週間休薬します。シスプラチン(点滴)とトラスツズマブ(点滴)は、1日目に投与します。この3週間1サイクルとして繰り返します。

2次治療

抗がん剤 2次治療

1次治療を続けても効果がみられなくなった場合や、薬の副作用などで1次治療を継続することが難しい場合は、HER2あり、なしを問わず基本的にパクリタキセルと分子標的薬のラムシルマブを併用します。

ラムシルマブは、血管新生阻害薬と呼ばれる分子標的薬です。がん細胞は、増殖に伴って栄養を得るために新しい血管をつくりますが、ラムシルマブは、それを阻害することによってがん細胞の増殖を抑えます。
また、遺伝子のタイプが条件を満たす人を対象に、免疫チェックポイント阻害薬のペムブロリズマブを単独で使うことがあります。

3次治療

3次治療

2次治療の効果がみられなくなった場合は、まだ使っていない薬による3次治療が検討されます。3次治療では、免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブや、抗がん剤のイリノテカンの単剤が使われます。また、新しい抗がん剤、トリフルリジン・チピラシルもあります。これ以外にも、新たに使える薬が登場しています。HER2がある(陽性)の人が使えるトラスツズマブ・デルクステカン(T-DXd)です。

薬の副作用

薬にはさまざまな副作用がありますが、現在は副作用対策も進歩しています。吐き気やおう吐、白血球減少などの副作用には有効な薬が開発され、予防的に使われるようになってきました。このような薬の副作用を抑える治療は支持療法と呼ばれ、生活の質を保ちながらがん治療を続けるために重要です。さらに、専門施設ではチーム医療の体制もとられており、医師と看護師、薬剤師などが連携して、これらの副作用軽減対策を行っています。
副作用が出た場合は、遠慮無く医師や看護師に相談しましょう。

胃がんのQ&A

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詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2021年1月号に詳しく掲載されています。

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