肺がん手術の種類
肺がんは、進行度がⅠ期やⅡ期の場合、根治させるために、がんを取り除く手術が第一の選択肢として検討されます。手術には、肺を切除する範囲によって、大きく分けて、肺葉切除術、肺全摘術、縮小手術の3つがあります。
手術可能なステージは?肺がんの進行度による治療方針の違い肺葉切除術

肺がんの手術で最も多く行われているのが肺葉切除術です。
右の肺は上葉、中葉、下葉の3つのブロックに、左の肺は上葉と下葉の2つのブロックに分かれていますが、肺葉切除術は、がんができた肺葉のみを切除します。
肺全摘術

がんが大きかったり、肺の中心部にあったりする場合は、片方の肺をすべて切除する肺全摘術が行われます。
縮小手術

がんの直径が2cm以下でリンパ節転移がなく、転移の可能性も低い場合は、がんとがんの周囲だけを小さく切除する縮小手術が行われることがあります。縮小手術は、肺の機能を残せるのが長所で、肺がんの早期発見の増加に伴い行われるケースが増えており、現在では肺がんの手術の約20%を占めています。COPD(慢性閉塞性肺疾患)や心臓病、腎臓病、糖尿病などがあるために手術による影響が大きい人にも適しています。
手術の方法の違い

肺がんの手術は、胸腔鏡(きょうくうきょう)手術か開胸手術のいずれかの方法で行われます。国内では、約70%が胸腔鏡手術で行われます。手術時間は、いずれも通常3時間程度です。
胸腔鏡手術
胸腔鏡手術は、背中と脇を3~4か所、小さく切開し、そこからカメラや手術器具を入れて行う手術法です。傷が小さいため体への負担が少ないのが長所で、早期がんや高齢者に多く行われます。切開は3~5cmほどです。
開胸手術
開胸手術は、肋骨(ろっこつ)と肋骨の間を大きく切開する手術法です。進行がんや、がんが太い血管の近くにあるなど高度な処置を要する場合は、開胸手術のほうが安全なことがあります。最近は、開胸手術も8~10cmほどの切開ですみ、体への負担が軽くなっています。
新しい手術法ハイブリッドVATS(バッツ)
最近、実際の医療現場でも広く行われるようになった新しい手術法が、「ハイブリットVATS」です。

「ハイブリットVATS」は、わきの下に近い位置を5~8cm切り、さらに小さな切開部を作ります。小さな切開部からは、胸腔鏡を入れ、モニターで内部を観察します。
最大の利点は、モニターだけに頼らず、肉眼での直視を併用するので、直接患部を3次元の視野で見ながら手術できるということです。胸腔鏡手術より少し傷口は大きくなりますが、出血のリスクが低いため、より安全に行うことができるのです。
手術前後のリハビリが大切

肺がんの手術をすると、どうしても呼吸機能が低下してしまいます。呼吸機能の低下を最小限に抑えるには、呼吸筋や横隔膜を動かす手術前後のリハビリが非常に大切になってきます。
手術前のリハビリは、運動習慣の有無によって異なります。もともと運動習慣のある人は、そのまま運動を継続し、運動習慣のない人は、ウォーキングやラジオ体操を手術直前まで行います。手術後は、ウォーキングやラジオ体操といったリハビリから再開します。
肺葉を1つ取ると肺活量が20%低下しますが、こうした手術前後のリハビリを行うことで、最終的には、肺活量の低下を5~10%で抑えることができるのです。