HPVワクチン定期接種 最新情報 9価ワクチンも登場 気になる副反応は?

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HPVワクチン

HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンについて

日本では、2013年4月に子宮頸(けい)がんのHPVワクチンが定期接種の対象になったものの、2か月後の6月には接種を積極的にすすめる積極的接種勧奨の中止が自治体に要請されました。そして実に9年間、「積極的勧奨」が止まっていました。しかしその後、国内外で安全性や有効性に関する研究が進み、心配された症状はこのワクチンだけに特有の副反応ではないということが分かってきました。また、子宮頸がんを予防する効果のほうが、副反応などのリスクよりも大きいことがわかってきました。さらに、問題となった多様な症状についての対応も整備されました。
それを受けて、2022年4月、HPVワクチンの積極的勧奨が再開されました。

HPV(ヒトパピローマウイルス)

HPV(ヒトパピローマウイルス)

日本では、子宮頸がんに年間およそ1万1000人の女性がかかり、毎年およそ2900人が亡くなっています。子宮頸がんの原因のほとんどがHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染です。このウイルスはごくありふれたウイルスで、80〜90%の女性が生涯で一度は感染すると推定されています。そして、感染が持続した場合、一部の人に子宮頸がんを発症させることがわかっています。

HPVワクチンの接種年齢

HPVワクチンの接種年齢(出典)Lei J, et al. N Engl J Med. 2020 Oct 1;383(14):1340-1348.

HPVワクチンは、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンです。
HPVワクチンの定期接種は小学校6年生〜高校1年相当の女子が対象となっています。HPVは性交渉によって感染することがわかっており、感染する前に接種するのが予防に最も効果的なことから、日本ではこの年齢で受けることが推奨されています。2020年に発表されたスウェーデンの女性およそ167万人を対象に行われた調査では、HPVワクチンを接種したことがない女性に比べ、10歳〜16歳でワクチン接種した女性では、子宮頸がんの発症率が12%に下がりました。つまり子宮頸がんのリスクを88%低下させるという研究が報告されています。

HPVワクチンの一般的な接種スケジュール

HPVワクチンの種類と一般的な接種スケジュール

国内で承認されているHPVワクチンは2価ワクチン4価ワクチン9価ワクチンの3種類。HPVには200種類以上のタイプ(型)があり、そのうち子宮頸がんを発症させるリスクの高いのは15種類です。2価ワクチンはハイリスク型のウイルスである16型・18型のタイプの感染を予防します。4価ワクチンは16型・18型に加えて2つのタイプ、合計4つの型のウイルス感染を抑え、9価ワクチンは9つのタイプのウイルス感染を抑えます。これまでのデータで、2価・4価ワクチンは子宮頸がんの原因の60〜70%を、9価ワクチンは約90%を予防できると考えられています。
一般的な接種スケジュールでは、基本的に、同じワクチンを6か月〜1年の間に3回接種することが必要になります。
ただし、9価ワクチンに限り、初めての接種が15歳未満の場合、1回目の接種から5か月以上あければ、2回の接種で済みます。

HPVは男性のがんの原因にも

HPVで起きるがん

実はHPVは、子宮頸がんのほかにも、さまざまながんの原因になることがわかっています。男性では中咽頭がん・陰茎がん・肛門がんなどの原因に。また、女性では中咽頭がん・膣(ちつ)がん・外陰がん・肛門がんの原因になります。そのため海外では、男子にも定期接種をしている国もあります。一方、日本では、9歳以上の男子が4価ワクチンの接種を受けることは可能です。ただし、自費の任意接種となります。

HPVワクチンの副反応

HPVワクチンの副反応

HPVワクチンで頻度の高い副反応は、注射部位の痛み、腫れ、赤みなどです。
2013年に定期接種が始まった頃には、HPVワクチン接種後に強い全身の痛み・歩行障害・けいれんなどの症状の副反応が起きた、という訴えがありました。積極的接種の勧奨が控えられ、接種率が1%未満にまで落ちこんだこともあります。
ただし、その後の研究で、歩行障害・けいれんなどの心配された症状は、このワクチンだけに特有の副反応ではないということがわかってきました。(厚生労働省 HPVワクチンに関するQ&A  問2-15 参照:下記にリンクあり
また、WHO(世界保健機関)は2019年、予防接種ストレス関連反応(ISRR)という概念を発表しました。これは予防接種のストレスや不安から、ワクチンの種類には関係なく、めまいや失神などが起きる反応です。さらに、接種後、時間をおいて、脱力、まひ、四肢の異常な動き、歩行障害・言語障害などの症状があらわれることが確認されました。しかし、こうしたISRRの症状は、医師による丁寧な説明、痛みへの対処で予防できると考えられており、対応するマニュアルも作られています。
また、HPVワクチン接種後に生じた症状の診療については、都道府県ごとに1か所以上設けられた、「協力医療機関」で、より知識のある医師が対応するようになっています。さらに、痛みの拠点病院が全国のブロックごとに設けられ、痛みの症状が強いときには、地域で連携しながら診療に当たる体制が作られています。

■HPVワクチンに関するQ&A (厚生労働省)
問2-15 HPVワクチン接種後に報告されている「多様な症状」はどのようなものですか?
※NHKサイトから離れます

HPV予防接種後に生じた症状の診療に係る協力医療機関について(厚生労働省)
※NHKサイトから離れます

キャッチアップ接種

キャッチアップ接種

HPVワクチンの積極的な勧奨の差し控えにより、接種機会を逃した人を対象に、「キャッチアップ接種」という無料で接種を受けられる仕組みもあります。今年度(2023年度)であれば、対象は平成9年度(1997年度)から平成18年度(2006年度)に生まれた女性が対象です。このキャッチアップ接種は現状では2025年3月までが期限となっています。

この記事は以下の番組から作成しています

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