胃がんを見つける「内視鏡」の進歩
早期発見のための「胃がん検診」には、「胃内視鏡検査」とバリウムをのんで行う「胃エックス線検査」があります。

「胃エックス線検査」は、「内視鏡より費用が安い」、「内視鏡を入れるのが苦手な人でも負担が少ない」という長所がありますが、胃の粘膜の色の変化、小さなでこぼこ、出血が分からないなどの短所もあります。一部の胃がんの特徴でもある“平坦ながん”は発見しにくく、専門医でも見逃してしまうケースもあります。
一方、鮮明なカラー画像で観察することができる「胃内視鏡検査」は、色の変化、小さなでこぼこ、出血が一目でわかるため、「胃エックス線検査」よりも容易にがんを発見することができます。「内視鏡はつらい」と思っている人がいるかもしれませんが、最近では、鎮静剤を使って、眠っている間に検査を行うこともできるので、つらい思いをしなくても受けられるようになってきました。

また、最近では、胃で疑わしい所見が見つかったとき、「がん」かどうかを調べる検査では、「NBI」という高性能の内視鏡画像強調技術が使われることがあります。血液のヘモグロビンに吸収されやすい波長の光だけを当てることにより、血管を浮かび上がらせ、さらにそれを拡大して検査することで、細かい血管が集中しているところにある「がん」を発見することができます。このような新しい技術によって、内視鏡医の経験や観察眼の優劣にかかわらず、早期にがんを発見できるようになりました。
内視鏡治療の適応拡大
胃がんの治療には、内視鏡治療、手術、薬物療法、放射線療法がありますが、内視鏡治療は、ステージ1の中でも、より早期の状態のがん(一番表面の粘膜層にとどまっているがん)に適用されます。


現在、早期胃がんの6割以上は内視鏡で治療が行われるようになりました。また、最新のガイドラインでは、肉眼で見つけにくい「未分化型がん」にまで適応を拡大しています。さらに、誤えん性肺炎を起こしやすい高齢者や出血のリスクが高い抗血栓薬服用者に対しても、リスク管理した上で積極的に内視鏡治療を行うことが推奨されています。
内視鏡治療 ESD

現在、日本で広く行われている胃がんの内視鏡治療は、内視鏡的粘膜下層剥離術「ESD」です。がんの下の部分に生理食塩水を注入してがんを持ち上げ、電気メスで、がんのまわりから切除する方法です。
内視鏡治療のメリットは、手術よりも患者さんの負担が小さいことです。しかし、リンパ節などに転移している可能性があれば手術をします。