動脈硬化は治る!予防・治療法、薬と食事による改善

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動脈硬化を進行させる内臓脂肪型肥満

健康な脂肪細胞と肥満の脂肪細胞の比較図

動脈硬化を防ぐには、食べ過ぎによる肥満にも注意が必要です。内臓まわりに脂肪がたまると、肥大化した内臓の脂肪細胞から血管を傷つける物質が分泌されます。すると、血管に炎症が起こり、動脈硬化が進行してしまいます。

内臓脂肪型肥満は脳梗塞や心筋梗塞を発症する可能性が高い

内臓脂肪型肥満の危険度

内臓脂肪型肥満の人が脳梗塞心筋梗塞を発症する危険度をみた調査では、内臓脂肪型肥満でない人に比べて脳梗塞の危険度は1.6倍、あるいは心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患になる危険度は2.0倍にもなる結果が出ています。

動脈硬化を予防できる、肥満を解消する食事法

食事改善を行い肥満を解消した男性の数値をあらわした図

肥満を解消した男性の例を参考に紹介します。
上記の男性Kさんは上の血圧が145、下の血圧が94の高血圧で、朝・昼・夜の3食必ず食べて、ご飯も多め、LDLコレステロールは205で基準を大幅に超えています。

1年間通して食事の改善を行ったことで、およそ10kgの減量に成功し、上の血圧が119、下の血圧が78になり、どれも正常値まで下げることができました。
Kさんが肥満を解消するために行った食事の改善ポイントは主に2つあります。

肥満の改善ポイント① 甘いものを控える

内臓脂肪をためないためには、まず甘いものを控えることが重要です。Kさんは間食で食べていた甘いものを控えるようにしました。
お菓子や清涼飲料水などには、一般的に砂糖が多く使われています。砂糖は非常に吸収されやすく、とりすぎると高血糖を招いてしまいます。高血糖は中性脂肪やコレステロールを高くする理由にもなり、動脈硬化を進行させてしまうので、注意が必要です。

肥満の改善ポイント② 毎回のご飯の量を減らす

もう1つのポイントは毎回のご飯の量を減らすことです。Kさんの場合は毎回2杯食べていたところ、1杯ずつに減らしました。ご飯1杯は大体100gなので、カロリーにすると160kcalとなり、1日3食で480kcalになります。それを脂肪に換算すると、1か月で約2kgになるので、毎日のご飯を1杯減らすことで1か月で約2kgの脂肪を減らすことができるわけです。

ご飯の量を減らして減量することは、血圧を下げることにもつながります。体重が下がると血圧も下がると言われており、Kさんのように10kg減ったとすれば、血圧が10近く下がると考えられます。

動脈硬化を改善する食べ物・進行させる食べ物とは

動脈硬化の薬物療法

薬物療法が行われる条件

動脈硬化の治療として薬物療法が行われるのは、原則として、運動や食事などの生活習慣の改善を十分に行ってもLDLコレステロールの値などが改善しない場合です。特に、リスクの高い方は動脈硬化が進みやすいので早めに薬物療法を行います。
リスクの高い人はコレステロール値の高い高血圧脂質異常症の方、あるいは血糖値が高く糖尿病がある方、喫煙者が挙げられます。

そのほか、心筋梗塞や狭心症がある方、脳梗塞になられた方は、上記の危険因子よりも動脈硬化が進んだ段階なので、生活習慣の改善だけでなく積極的に薬を使って改善していくことになります。

動脈硬化の治療で使われる薬の種類

主な動脈硬化の薬

悪玉コレステロールである、LDLコレステロールが高い人に対してよく使われているのはスタチンです。スタチンは肝臓でのコレステロールの合成や血管壁にたまったコレステロールを減らす作用があります。さらに血管に起こっている炎症も抑える作用もあるため、動脈硬化に対して非常に有効な薬と言われています。

スタチンは多くの方に効果があるとされていますが、使用してもLDLコレステロールが下がらない場合には、スタチンとともに小腸でのコレステロールの吸収を抑えるエゼチミブまたはレジンが使われます。エゼチミブは細胞レベルでコレステロールの吸収を抑える作用がある薬で、レジンはコレステロールが腸の中に入らないようにして、外に出す作用のある薬です。

LDLコレステロールは高くないものの、中性脂肪が高い場合には、肝臓での中性脂肪の合成を抑えるフィブラート系の薬と魚の油から抽出したEPA製剤が使われます。EPA製剤は、血液をサラサラにするので、心筋梗塞などを予防する作用もあると言われています。

動脈硬化を改善する新しい注射薬「PCSK9阻害薬」

スタチンとPCSK9阻害薬の併用による効果

2016年から、動脈硬化を防ぐ薬として、注射薬のPCSK9阻害薬も登場しました。スタチン同様、LDL-コレステロール値を下げる薬です。この2つを併用すると、スタチン単独での使用と比べて、LDL-コレステロール値を平均でおよそ60%低下させることができます。その結果、心筋梗塞の発症を抑制する効果が、2017年3月に発表されています。この研究は、狭心症や心筋梗塞を起こしたことがあり、スタチン単独ではLDL-コレステロールを十分に低下させられなかった27,564人の患者さんを対象に行われました。これらの患者さんを、スタチン単独使用のグループと、スタチンとPCSK9阻害薬併用のグループに半分ずつに分けて治療を続け、使用開始から平均で2~3年ほど経過を観察しました。

その結果、併用したグループは、スタチン単独使用のグループと比べて、心筋梗塞の再発が27%少ないことが明らかとなりました。
PCSK9阻害薬は費用や注射に手間がかかるという課題があります。注射は月1~2回行い、費用は3割負担の場合7,000円ほどかかります。現時点では、基本的には生涯続ける薬です。そのため、心筋梗塞を発症する危険性が高く費用をかける必要性のある人に使用することになります。一番の適用は、生まれつきLDL-コレステロールが高くなる体質の「家族性高コレステロール血症」の人です。
ほかに、心筋梗塞を発症したことがありスタチン単独ではLDL-コレステロールが十分低下させられない人や、糖尿病があり狭心症・心筋梗塞を含め動脈硬化性の病気がある人も使用をすすめられることがあります。

家族性高コレステロール血症の場合の薬

家族性高コレステロール血症の方は、非常に動脈硬化が進みやく、若くして心筋梗塞になってしまう方が多いため、スタチンとエゼミチブを併用して使いしっかりと悪玉コレステロールを下げて治療を行います。家族性高コレステロール血症に有効なPCSK9阻害薬が保険適用になったので、こちらを使うのも効果的です。

動脈硬化の薬の副作用とは

スタチンは非常にまれですが人によっては、横紋筋融解症を起こす可能性があります。腎臓の機能が悪い方でスタチンやフィブラート系の薬を併用して使用している場合にも、こういったことがまれに起こることがあると言われています。
EPA製剤を使用している方の場合は、血液がサラサラになるために、血が止まりにくく、鼻血が出やすくなる可能性があるとされています。

動脈硬化・血管の老化のQ&A

『Q&A動脈硬化』はこちら
『Q&A血管の老化』はこちら

この記事は以下の番組から作成しています

  • きょうの健康 放送
    心臓を守る!狭心症・心筋梗塞対策「薬の効果」
  • きょうの健康 放送
    血管の老化を防ぐ!「食事と薬」