低気圧による不調を解決!「漢方薬」のチカラ

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頭が痛い 体がだるい 全身

季節の変わり目や天気が崩れる前など、天気や気圧の変化で起こる心身の不調。頭痛やだるさ、体の痛みなど、さまざまな症状が現れます。こうした天候の変化による不調の改善に、古くから使われてきたのが漢方薬。今回は、漢方専門医の今津嘉宏さんと、東京理科大学・教授の礒濱洋一郎さんに、天気不調の改善に使われる代表的な漢方薬「五苓散(ごれいさん)」について教えてもらいます。

漢方専門医の今津嘉宏さん

解決のカギは「気・血・水」の「水」

心身の不調を見極めるとき、東洋医学では「気・血・水(き・けつ・すい)」という考え方を用います。「気」は、「気力」「元気」などに象徴される「生命のエネルギー」。「血」は、エネルギーを循環させる血液。そして「水」は、体液などの水分。人の体は、この3つのバランスで成り立つと考えます。

気・血・水

天気による不調の場合、この「水」に異常があるといいます。東洋医学でいう「水毒(すいどく)」の状態です。気圧の変化によって、体内の水分バランスが崩れることで「むくみ」や「血行不良」などが起こり、頭痛やけん怠感、体の痛みなど、さまざまな不調の引き金になると考えられています。

水毒

「舌」で「水毒」の傾向が分かる!?

天気による不調を感じやすい人は、日頃から「水毒」の傾向があると考えられ、手軽にチェックできる方法として「舌」があります。東洋医学では、舌は内臓をはじめ全身の状態が表れやすいとされています。「水毒」では、舌がむくんで縁に歯形がつくのが特徴です。

水毒の舌

あなたは「水毒」?チェックリスト

また、「水毒」の傾向は、舌以外でもチェックすることができます。
気になる人は、確認してみましょう!

水毒チェックリスト

「水毒」の改善に使われる五苓散

「水毒」を改善し、天気による不調に多く処方されるのが「五苓散(ごれいさん)」です。体内の水分代謝の異常を抑制する作用があると考えられ、古くから使われてきました。

東京理科大学薬学部・教授の礒濱洋一郎さん

近年、そのメカニズムを明らかにしたのが、東京理科大学薬学部・教授の礒濱洋一郎さんです。注目したのは、細胞を囲む細胞膜にある「アクアポリン」というたんぱく質。細胞の水分を調節する、水専用の通り道です。礒濱さんは、マウスを使った実験で体内の水のバランスが崩れたとき、五苓散がアクアポリンの働きを阻害し、マウスの脳内の水分増加を抑えることを確認しました。

五苓散ありとなしの場合の脳内の比較図

研究では、五苓散に含まれる「蒼朮(そうじゅつ)」という生薬が、アクアポリンを阻害する作用を多く持っていることも分かりました。さらに、「桂皮(けいひ)」が炎症を抑える効果を持つことも確認されています。

五苓散の生薬

漢方薬を正しく安全に使うには?

「五苓散」は薬局やインターネット通販でも入手することができます。しかし、天気による不調には、片頭痛をはじめ、さまざまな病気が潜んでいる可能性があります。ぜひ、かかりつけ医や漢方専門医に相談し、診断を受けてから処方を受けることをおすすめします。

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この記事は以下の番組から作成しています。

東洋医学ホントのチカラ

東洋医学ホントのチカラ「心と体を整えるSP」

2023年3月20日(月) 午後7:30~ [総合]

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