言葉がなめらかに出ない 吃音症とは?
吃音症(きつおんしょう)は、医学的には「言語の流暢(りゅうちょう)性の障害」と言います。
声自体は出るが、なめらかに言葉にすることができない症状のことです。

主に3つの種類があります。
- 繰り返し
「こ、こ、ここんにちは」と言葉の頭の音を繰り返してしまう - 引き伸ばし
「こーーーんにちは」と音が伸びてしまう - ブロック
「・・・こんにちは」とうまく言葉が出ずに間が空いてしまう
国や言語によらず成人の100人に1人ほどいると言われています。日本では、およそ100〜120万人いる計算です。少なく感じるかもしれませんが、例えば、「田中さん」の苗字と同じくらいの割合です。
吃音が始まるのは2〜5歳の幼児期の場合が多く、そのうち7〜8割は自然に治まります。しかし、2〜3割は症状が固定化し、大人になっても残る場合があります。
また、症状が出るのには波があり場面によってさまざまです。就職など環境の変化といった何かしらのきっかけで、再び症状が目立ってくる場合もあります。
吃音になる原因は、はっきりとはわかっていない部分もありますが、体質的なところが大きいと言われています。有名なものに双子研究があり、一卵性双生児において片方が吃音だと、もう一方も吃音である確率が高いということから、吃音は遺伝的要因が7割を占めていると考えられています。
大人の場合、吃音を完全に治すことは現状では難しいとされています。
しかし、その一方で周囲の人の反応や、周りの環境次第で吃音のある人の心を軽くなり、話しやすくなることもあります。
周りの環境や反応次第で当事者の心が軽くなる

吃音のある人に対して「ゆっくりでいいんだよ」「落ち着いて話していいんだよ」などと良かれと思って言いがちですが、実は良くない場合が多いです。なぜなら、吃音がある人はなめらかに話せないだけで、焦っているわけではないからです。また、話し方への安易なアドバイスは「その話し方ではダメ」と言われたように感じ、プレッシャーでより話しづらくなる可能性があります。うまく話せないのを隠そうとすると、メンタルに影響を与え、社交不安症といった心理的な合併症につながりやすいとされています。
周囲の人ができること
まずは、相手の話をゆっくり聞くことが大切です。
「ゆっくり話せばいいんだよ」と、当事者に言うのではなく、「ゆっくり聞く」ことを心がけることがポイントです。さらに、友人関係や、上司と部下など深い付き合いの場合であれば、当事者の希望を聞くことも大切です。最後まで横やりを入れずに話を聞いて欲しい人もいれば、助け舟を出して欲しい人もいます。人によって考え方はさまざまですので、“あなたはどうして欲しい?”と本人の考え方を聞いて対応することが当事者の心を楽にすることにつながります。
そして、話しやすい環境にすることも大切です。
吃音が出ても大丈夫だと思える環境になれば話しやすくなります。理想的には吃音が出ても出なくても、周りがゆったり聞いてくれるのが一番です。
ケーススタディ 富里さんの経験

富里さん自身も吃音をもつ1人。大学進学のときに言葉の始まりが出にくくなるブロックという症状が出るようになり、特に「とみさと」という名前が言いづらく、名前を言うのに1、2分かかることもあり、名前を言う場面に不安を感じて避けがちになっていたと言います。
そんな富里さんが吃音と向き合い、克服に向かったきっかけは、“回避をしない”でした。富里さんの場合、名前を言うことが非常に苦手で不安に思っていましたが、名前を言う場面にしっかりチャレンジしていったのです。特にポイントは、名前が言えることが重要であって、スラスラ言うことが重要ではないということです。吃音が出たら、失敗だと感じてしまったり、考えているとなかなか悪循環が抜け出せないと言います。
もう1つは吃音が出ても大丈夫だと周りが思わせてくれたことです。
周りが温かく見守ってくれる環境というのも後押ししてくれたきっかけだと言います。
吃音のある若者が夢に挑戦するカフェ

「注文に時間がかかるカフェ」は、接客スタッフ全員が吃音のある若者です。
期間限定のイベントとして全国各地で行われています。取り組みの狙いは、「吃音のある若者に接客体験を通して自信をつけてもらうこと」、そして「吃音のことをよく知らない人に交流を通して理解してもらうこと」です。


お客さんには、吃音のある人との接し方を案内します。
接客スタッフ「緊張しているから吃音が出るというわけではないので、リラックスして、ゆっくり話せばいいんだよ、などのアドバイスはしないでください」
対応方法は人それぞれですが、一般的なものを紹介します。
「ひとりでも多くの人に吃音を知ってもらうことが何より大切」と話すのは、「注文に時間がかかるカフェ」の仕掛け人の奥村さんです。

奥村「まずは吃音について知っていただきたい。知ってもらってるだけで、私たちが夢への挑戦のしやすさが変わる」
アイスコーヒーと言いたいけれど、「ア」がうまく出てこない。代わりに冷たいコーヒーなら言える。吃音のある人はさまざまな工夫をして、コミュニケーションを取ろうとしています。
吃音のある人もない人もお互いを受け入れることで、誰もが過ごしやすい日常を手に入れられるのかもしれません。
注文に時間がかかるカフェは期間限定のイベントとして、全国各地で開かれています。
今後は2023年4月に宮城県仙台市、5月に東京都品川区などで開催が予定されています。
NHK福祉情報サイトでも、「吃音症(きつおんしょう)」に関する情報をまとめています
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