花粉の飛散量 過去10年で最多に?

日本人の3人に1人はスギ花粉症と言われています。
そのスギ花粉の飛散量は、環境省の発表によると2023年は非常に多くなり、関東では過去10年で最も多くなる見込みです。その理由は花粉の飛散量は前の年の夏の気象条件が大きく影響するためです。気温が高く、日照時間が長く、雨の少ない夏は花芽が多く形成されて次の年の飛散量が多くなります。昨年はまさにこのような気象条件だったため、大量の花粉が飛ぶと考えられているのです。
早めの対策がカギ
花粉症の一般的な症状はくしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみですが、悪化すると皮膚症状・頭痛・うつ、などといった症状も現れます。また、ぜん息が悪化したり、果物を食べると口のかゆみなどが生じる口腔アレルギーも起こることがあります。症状がひどくなってから対策を始めるのでは遅いため、症状が出る前から対策することが大切です。
対策① 花粉との接触を避ける

花粉症を予防するための基本は「花粉との接触を避ける」ことです。
そのためにできるポイントをお伝えします。
外出時
- マスクの着用
マスクは吸い込む花粉をおよそ1/3から1/6に減らし、症状を軽くする効果があると言われています。また、マスクの内側にガーゼがついているタイプは鼻に入る花粉をさらに減少させる効果が期待できます。特に大事なのは、マスクに隙間ができるとそこから花粉が入ってしまうので、フィットするものを選ぶことです。 - メガネの着用
花粉対策用のメガネは花粉が目に侵入するのをある程度減少させる効果があります。 - 服装
一般的にウール製の衣類などはナイロンなどの化学繊維に比べ花粉が付着しやすく、花粉を屋内にも持ち込みやすいので、外出の際には花粉がつきにくい素材のものを選びましょう。また、頭や顔など露出している部分には花粉が付着しやすいですが、つばの広い帽子をかぶることで付着する量を減らすことができます。
在宅時

家の中にも花粉は侵入してきます。そこで在宅時にできるポイントをお伝えします。
- うがいと洗顔
- 洗濯物は室内干しに
- 換気の際は窓を全開にしない
- 部屋はこまめに清掃(ぬれ雑巾などを使って床に落ちた花粉を清掃)
対策② 市販薬の使用

医療機関を受診して適切な薬を処方してもらうことも大切ですが、症状が出始めているのに受診を先送りにしてしまうと、その間に症状が悪化してしまう場合があります。悪化すると、医療機関を受診しても治療の効果が低くなってしまいますので、そのような場合はドラッグストアなどで市販薬を購入するのも1つの手段です。市販薬の中には処方薬と同量の成分を含んでおり、同じ効果、同じ効き目の強さを期待できる市販薬も多くなってきています。
薬は大きく「のみ薬」・「点鼻薬」・「点眼薬」に分けられます。
「のみ薬」は、くしゃみ・鼻水を抑える効果があり、「点鼻薬」は鼻づまりを解消する効果、「点眼薬」はかゆみを抑える効果が期待できます。
市販薬 使い方には注意を
血管収縮剤入りタイプの点鼻薬は、鼻づまりに対する効果が高く、手軽に使用できる点がメリットですが、1日に使用する回数を超えて連日使用していると、かえって鼻の中が腫れてしまって鼻づまりがひどくなる場合があります。
また、15歳未満には使用できない市販薬もあります。子どもが花粉症の場合には医療機関を受診することをおすすめします。
市販薬 使うタイミングは?
以前は花粉が飛ぶ1か月くらい前からのむと良いとされていましたが、現在の薬は花粉が飛び始める時期にあわせて使用しても効果が見込めると言われています。
対策③ 医療機関の受診

花粉が飛ぶシーズン中に医療機関で行われる花粉症の治療は大きく分けると以下の通りです。
- のみ薬
- 点鼻薬
- 点眼薬
- 注射(抗IgE抗体療法)
くしゃみ・鼻水に効くとされる「抗ヒスタミン薬」や効果が強いとされる「鼻噴霧ステロイド薬」は市販でも手に入りますが、年齢制限や有効成分の含有量が少ないものもあり、また、1日1回の投与で良い鼻噴霧ステロイド薬、あるいは鼻づまりにも効果が強いとされる抗ヒスタミン薬などは、現在は医療機関でしか手に入りません。
市販薬を使用しても効果がない場合や、花粉症の症状が毎年つらい人は医療機関をすみやかに受診することをおすすめします。
重症の場合に検討する抗IgE抗体療法とは
抗IgE抗体療法は2020年に保険適用となった新しい治療法です。重症のスギ花粉症患者が対象になる注射で、気管支ぜんそくや原因不明の慢性じんましんなどで使われている「オマリズマブ」という薬を注射するもので、月に1~2回、3か月ほど継続して使用します。
効果はそのシーズン限りとなりますが、処方薬で効果がなかった人でも、症状を軽減させる効果が期待できます。
ただし、費用が高額になることが難点です。薬を投与する量は個人の状態によって異なるため、少ない人でも月に3割負担で5千円程度、高い人は7万円程度かかるため、慎重に選択する必要があります。