「尿ナトカリ比」とは? 自分でできる高血圧対策!

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「尿ナトカリ比」とは

「高血圧対策」に大切なのは塩分を控えて、野菜をたくさんとること。しかし、頭でわかってはいても、毎日の食事で自分がどれくらい塩分や野菜をとっているのか把握するのは難しいという人が多いのではないでしょうか。

ナトリウムとカリウムのバランスを見る数値「尿ナトカリ比」

そんななかで、いま注目されているのが「尿ナトカリ比」
尿に含まれるナトリウム(塩分)とカリウム(野菜)のバランスをみる数値です。塩分をとりすぎると尿ナトカリ比は高くなり、野菜をたくさんとると低くなります。「尿ナトカリ比」をみることで、塩分を多くとり過ぎていないか、野菜や果物が不足していないかがわかります。
この「尿ナトカリ比」を地域の健康に活かした取り組みがあります。

宮城県登米市の取り組み

宮城県の北部に位置する、人口約7万5000人の登米(とめ)市。
登米市が以前、生活習慣病予防のためにメタボリックシンドロームに着目して行った特定健診(対象者40歳〜74歳)では、受診者の3割弱が高血圧の治療が必要で受診をすすめる「要医療」という判定でした。高血圧が課題になっていたのです。
(※特定健診:特定健康診査のこと)

宮城県内の尿ナトカリ比の平均値

さらに、東北大学が宮城県全域で行った健康調査(2013年度〜15年度)では、登米市がほかの地域に比べて「尿ナトカリ比」が高いという結果が出ました。塩分をとり過ぎていたのです。

そこで登米市では、東北大学東北メディカル・メガバンク機構と協力して、2017年の特定健診のときに、尿ナトカリ比の測定をして、住民に結果を伝える試みを始めました。
それまで尿の検査方法は、24時間尿をためる蓄尿で、簡単に検査することができませんでした。これではナトカリ比の測定は困難です。
そこで、小型の「ナトカリ計」を活用することになりました。ナトカリ計を使うと、尿を1〜2滴たらして1分ほどで尿ナトカリ比がわかります。
※ナトカリ計は研究用機器であり、一般向けに市販はされていません。

ナトカリ計

ナトカリ計

登米市では、3年にわたって特定健診で尿ナトカリ比を測定しました。
すると2017年度、男性の尿ナトカリ比5.65だったのが、2019年度には5.19に減少。女性の尿ナトカリ比も5.21だったのが、2019年度4.86に減少しました。

尿ナトカリ比の結果

続いて血圧値を見てみると、2017年度の男性の血圧は133.1mmHgでしたが、129.7mmHgに減少。女性の血圧は130.9mmHgから129.4mmHgに減少しました。尿ナトカリ比、血圧値ともに低下したのです。

収縮期血圧値の結果

※2020年度の健診では尿ナトカリ比は下がりましたが、血圧値は上がりました。登米市の担当者によれば、新型コロナウイルスの影響で、健診が寒い時期に実施された影響ではないかと考えられます。

なぜ尿ナトカリ比、血圧値が下がった?

なぜ尿ナトカリ比、血圧値は下がったのでしょうか?
登米市では、尿ナトカリ比の測定結果の数値を3つに分類しました。
1.6未満は、非常に良好。1.6以上4.1未満は、良好。4.1以上は、「注意が必要です」としました。
※現在、尿ナトカリ比の基準値はありません。この数字は、「東北大学東北メディカル・メガバンク計画 地域住民コホート調査」参加者の測定結果を基にした分類です。

尿ナトカリ比の測定結果を数値を分類

数字で示すことで、塩分をとりすぎているのか、野菜をあまりとっていないのか、はっきりとわかるようになりました。

検査結果を待っている間、健診を受けた人たちの間に「うちの主人は味を見ないでしょうゆをかける」「みそ汁を1日3杯飲んでいる」など、これまでの食生活について話し合う様子がみられたといいます。

健診を受けた人たちの会話

厳しく生活習慣を指導されなくても、生活を振り返るきっかけになったのです。
住民の意識が変わり、減塩、生活習慣改善につながりました。

さらなる取り組み

登米市では、あらたな取り組みも始まっています。減塩を意識して地元で採れた野菜をふんだんに使った「ナトカリレシピ」の開発です。
登米市の食生活改善推進員の皆さまが、塩分控えめで野菜をたっぷりのメニューを考案しました。野菜を使ったサブ料理を献立に加える、メイン料理に野菜を加えるなど、ちょっとした工夫で野菜を多くとることができます。

  • おかか揚げ
    天汁や塩のかわりに、おかかでうまみを出している。
  • 白菜とにんじんのピリ辛きんぴら
    七味とうがらしの辛さで、しょうゆの量を減らす。
  • ごろごろキャベツのスープ
    野菜は煮込むとかさが減るのでたくさん食べることができる。スープにもカリウムが溶け出している。

ナトカリレシピは、登米市のホームページでご確認ください。

ナトカリレシピはこちら※NHKサイトを離れます

さらに登米市では小学校高学年の親子を対象に、ナトカリレシピのコンテストを開いています。入賞レシピは学校給食で出して、高齢者だけではなく市民に向けて減塩を広めています。

令和4年度最優秀賞のかぼちゃのピザ

令和4年度 最優秀賞 かぼちゃのピザ

また、宮城県のほかの地域や県外からも問い合わせがあり、登米市の取り組みは広まりつつあります。

高血圧のQ&A

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詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2023年3月 号に掲載されています。

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