【二次性頭痛】薬の使いすぎによる頭痛に注意!

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くも膜下出血脳腫瘍頭が痛い

頭痛のタイプ

頭痛のタイプ

頭痛は、一次性頭痛二次性頭痛の2つに分けられます。
一次性頭痛は、片頭痛緊張型頭痛群発頭痛など、頭痛そのものが病気のタイプです。
一方、二次性頭痛は、ほかに原因があってその症状として起こる頭痛のことを言います。
例えば、くも膜下出血、髄膜炎、脳腫瘍、うつ病、目・鼻・あごの病気、薬の使いすぎなど、さまざまな原因があります。

今までに経験したことがないような激しい頭痛が起きた場合や、痛みが強くなった場合は、危険な病気の可能性もあるので、すみやかに医療機関へ行くことをおすすめします。

「薬の使いすぎによる頭痛」に注意!

薬の使い過ぎによる頭痛

WHOの報告によると頭痛患者の18%が二次性頭痛だと言われており、二次性頭痛だけでも原因が多いことから、2021年版の頭痛の診療ガイドラインでは、新たに二次性頭痛という項目を加えて大幅に改訂し、それぞれの診断や治療法などを細分化して整理されました。
薬の使い過ぎによる頭痛(MOH)は、慢性化する二次性頭痛の中で最も多く、全国に120万人から240万人ほどいると言われています。

なぜ薬を使いすぎてしまうのか?

薬の使いすぎによる頭痛は、もともと片頭痛や緊張型頭痛などの一次性頭痛を持っている人に起こります。
頭痛がたびたび起こるために、市販の鎮痛薬や処方薬のトリプタンなどを頻回に使用することによって、この頭痛が起こってしまうのです。

頭痛を抑えるつもりが悪循環に

頭痛を抑えるつもりが悪循環に

鎮痛薬を頻回に使用し続けていると、脳が痛みに過敏になり、ちょっとした刺激でも強い痛みを感じるようになります。
すると、頭痛が起こる回数も増えて痛みも強くなり、症状が悪化してしまいます。その原因が薬にあるということを知らずにいると、自己判断で薬をのむ頻度が増えて、さらに頭痛が悪化して、薬の効果もさらに薄くなるという悪循環に陥ってしまいます。
特に片頭痛の患者さんは、早めに薬をのまないと効果がないことを体験的に知っているために、頭痛がひどくなるのをおそれて、すぐに市販の鎮痛薬やトリプタンなどをのんでしまう傾向にあります。
もし薬をのむ量が通常よりも増えてきている場合は、頭痛外来など専門の医療機関に早めに相談することをおすすめします。

「薬の使いすぎ」の見分け方

「薬の使いすぎ」の見分け方

次に該当する方は注意が必要です。
以前から片頭痛や緊張型頭痛などの一次性頭痛がある人で

  1. 頭痛が1か月に15日以上起きる
  2. 頭痛の治療薬や鎮痛薬を3か月以上定期的に使用している

2は、使用している薬によって服薬日数は異なりますが、1か月に10日〜15日以上服薬している場合には薬の使いすぎに該当します。

薬の使い過ぎが原因とわかったら

薬の使い過ぎによる頭痛の対策

対策は、以下の3つです。

  1. 原因薬剤の中止
  2. 薬剤中止後に起こる症状への対処
  3. 予防薬の使用

薬の使いすぎによる頭痛を起こしている人の多くは、原因となった薬剤を止めるだけで症状が改善すると言われています。
そのため、市販の鎮痛薬が原因の場合には、まずその鎮痛薬を中止することから始めます。

片頭痛の処方薬「トリプタン」は継続せざるを得ないこともある

片頭痛の患者さんでトリプタンが処方されている場合には、やはり中止がすすめられますが、中止すると生活への支障が大きくなる場合には、別のトリプタンに変更したりします。ただし適切なタイミングで使用しているか、量を使いすぎていないかの確認が必要です。

薬の中止後の「離脱症状」に注意

薬の中止・減量や変更のタイミングで頭痛が起きたり、別の症状が現れることがあります。これを離脱症状といいます。
離脱症状には、頭痛のほかに、吐き気・嘔吐、低血圧、頻脈、睡眠障害などがみられることもあります。このような症状はバルビツール、ベンゾジアゼピン、オピオイドなど、国内では頭痛の治療としてあまり使われていない薬を使用していた場合に起こることが多く、これらの薬剤を使用している場合には、即時中止より徐々に中止していく方法をとります。鎮痛薬やトリプタンでは重度の離脱症状は引き起こさないと考えられています。

離脱症状は、体が薬に慣れた状態から、急に薬の成分が体内にない状態に変わるために、それに体が反応することで起こると考えられています。
一般的には2〜10日間ほどで徐々に治まるとされています。
症状が重度の場合や外来での離脱がうまくいかない場合には入院して治療を行うこともあります。

離脱症状の治療

嘔吐による脱水を防ぐための輸液や、吐き気を抑えるために制吐薬を使用したり、神経系の鎮静薬で興奮を抑えて睡眠を補助したり、重症の場合にはステロイドを短期間で使用することもあります。

再発を防ぐために

実は、薬の使いすぎによる頭痛は、1年以内に3割くらいの人が、症状が再発すると言われています。
再発を防ぐためには、予防薬を使用しながら、頭痛ダイアリーをつけて常に頭痛日数や急性期治療薬の使用日数を確認していくことが大切です。
元の頭痛が片頭痛なのか、緊張型頭痛なのかによって変わりますが、予防薬を使用することが大変重要です。
もともと片頭痛がある人には、カルシウム拮抗(きっこう)薬、β遮断薬、抗てんかん薬、抗うつ薬のいずれかを使用します。効果が不十分な場合には早めにCGRP関連抗体薬の使用を検討します。緊張型頭痛がある人には抗うつ薬を使うのが一般的です。

予防薬は、早期に使用開始することで、頭痛の日数を減らせる効果が期待できるので、薬を中止したときか、中止前から使用開始することが推奨されます。
その人にとってどれが合う薬なのかは、2か月程度かけて経過を観察し、効果が不十分の場合には薬を切り替えるのが一般的ですが、つらい頭痛が続く場合には2か月よりも前に薬を切り替えることもあります。

我慢は禁物!

現在、頭痛のタイプ別の治療や予防法が確立されてきています。
「頭痛くらいで病院に行くなんて」と思って、自己判断で頭痛薬をのむだけで、痛みが治まらなくても我慢するという人もいますが、そんなときは医療機関を受診して専門医に相談しましょう。
適切な対処法をすれば多くの頭痛は予防することが可能です。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2023年3月 号に掲載されています。

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