過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群は、検査をしても腸に腫瘍や炎症が見つからないのにも関わらず、下痢や便秘、腹痛といった症状が続く病気です。
主な原因はストレスだと考えられています。脳がストレスを感じると腸がセロトニンというホルモンに過剰に反応してしまい、腸が過剰に動くことでさまざまな症状が引き起こされるのです。
症状に応じてさまざまな薬のチョイスがあり、下痢の症状には「ラモセトロン」という腸の過剰な動きを抑える薬があります。
便秘の症状には、腸の中の水分を調整する「粘膜上皮機能変容薬」や「酸化マグネシウム」といった薬があります。また、これらの薬に加えて漢方薬を併用することもあります。
治療の基本は生活改善
薬による治療である程度症状の改善が期待できますが、この病気は完治を目指すというよりも、うまく「つきあっていく」という意識が大切になります。
重要なのは、症状が出て欲しくないときに症状が出ないようにすること。そのため、どんなときに症状が出やすいかを事前に把握しておくと、症状が起きそうなタイミングで自分なりの対策を取ることができるようになります。

症状が出やすいタイミングは人によってさまざまありますが、例えば「通学の電車内」「車での移動中」「レジで並んでいるとき」「信号待ちをしているとき」など、逃げ場がないと感じるタイミングで症状が出やすい方もいます。
こうしたタイミングの前に事前にトイレに行っておくと、「安心感」を得ることができます。このとき、必ずしも排便できなくても構いません。排便できなかったとしてもトイレに行ったことで気持ちが落ち着き、症状が出にくくなることが期待できるのです。
日記をつけてみる

どんなときに症状が起きやすいかを把握するためには「日記をつけること」がおすすめです。
便の形や回数、腹痛が起きたタイミング、心身のストレス度、食事、睡眠といった事柄を記録しておくと、排便習慣と日々の緊張の度合い、どういったところでストレスを感じやすいかなど自分なりのパターンが見えてくるかもしれません。
また、こうした情報を記録しておくと、自分のふだんの様子の説明がしやすくなり、医師の診察を受ける際にも役立ちます。
睡眠の重要性
症状の改善には質の良い睡眠をとることも非常に重要です。
過敏性腸症候群の患者さんの多くは体を活発にする「交感神経」の活動が高く、睡眠障害を伴うことが知られています。
質の良い睡眠は交感神経の活動を抑えてくれるため、その時間が長いほどリラックスし、症状の緩和が期待できるのです。
睡眠前のアルコール摂取やオンラインゲーム、ウェブ会議などは睡眠の質を低下させる原因となります。睡眠前の過ごし方を見直すことも症状改善への一歩となります。
ふだんの食事から気をつけたいこと
食事の面では、腸内環境を整えることが良いと考えられています。
腸内環境の改善には「水溶性食物繊維」を多く含む食事が効果的です。水溶性食物繊維は根菜や葉もの、果物など多くの野菜類に含まれており、これらは腸内細菌のエサとなったり、大腸内の水分を調整する働きをしてくれます。
ただし、食事に関してはあまり深く考えすぎないことが大切です。
何を食べるべきか気にしすぎると、それがまたストレスの原因にもなってしまいます。食事は楽しく、いろいろなものを幅広く食べることが腸内細菌にとっても良いと考えられています。
どうしても出ないときには”排便しやすい体勢”

さまざまな工夫をしても、どうしても排便できないときもあるでしょう。
そんなとき、おすすめの”排便しやすい体勢”があります。
【やりかた】
- 洋式便座の場合、便座に座り、少しつま先を立てます。
疲れるようなら足の下に台座を置いて、足を乗せてもよいでしょう。 - 上半身を少し前に傾けます。
つまさき立ちした太ももとの角度はおよそ30度前後を意識しましょう。
イメージとしては有名な彫刻「ロダンの考える人」です。
こうした姿勢をとることで、肛門と直腸が一直線となり、排便しやすくなるのです。
どうしても出ない時には試してみてはいかがでしょうか。