胃がんになったとき -私のチョイス-

87歳で胃がんが見つかる
Aさん(女性・91歳)に胃がんが見つかったのは4年前。胆石の検査で超音波検査をしたのがきっかけでした。内視鏡検査を受けた結果、がんは胃の全体に広がっていましたが、リンパ節への転移などはなく、手術で胃を全摘すればがんは取り切れるという状態でした。
「気づくような症状はございませんでしたから、ちょっとびっくりしたんですけれども、年齢的にも私の番だなと思い覚悟しました。」
高齢者の場合の治療のチョイスは?

しかし、当時87歳と高齢だったこともあり、医師は体の事を心配しました。
「高齢者の場合は、手術で胃がんを取っても、ご飯が食べられなくて体重もだんだん減ってきて元気がなくなる人も中にはいらっしゃいます。高齢になればなるほど、やはり回復は遅れやすくなる。」
そこで医師は、3つの選択肢をAさんに提案しました。
がんは取り除けるが、体力の低下は避けられない手術。がんの進行は抑えられるものの、副作用が心配な抗がん剤治療。さらに、手術のリスクや薬の副作用を考えて積極的な治療はせず、痛みをとるなど緩和ケアを中心とした治療、です。
急増する高齢者の胃がん

日本人の寿命が延びて、長生きする人が増えたことや、内視鏡などの検査を受ける機会が増えたことで、高齢者の胃がんの発症がこの20年ほどで急激に増加しています。これまでの高齢者の治療は、手術ができればするが、できなければそのままがんの進行を見守るというのが一般的でした。しかし、抗がん剤や副作用を抑える薬、内視鏡治療、手術が進歩したことで、高齢者の治療の選択肢が増えています。
抗がん剤をチョイスした理由
Aさんが選択したのは、抗がん剤治療でした。
「胃を全摘したら、1日に5回も6回も食事をしなければいけないと伺いまして、そういう生活はしたくないと思って、化学療法(抗がん剤治療)を受け入れることにしました。」
これまで通りの生活をなるべく長く続けることを望んだAさん。医師は体への負担を考え、抗がん剤の種類は副作用の強いものを避け、量も効果が出るぎりぎりに調整しました。ふらつきや吐き気など副作用は多少ありますが、抑える薬をのんでしのいでいます。
がんが見つかってから4年。薬が効いて、Aさんは薬をのみ続けながら以前と変わらない生活が送れています。
「生きがいは孫たちです。あと1年元気でいたら大学生になるかもしれないんですよ。
ここまできたら、あんなに覚悟したのに欲が出てきました。もうちょっと生き延びたいとはおかしいですね。」