正しい歯磨きの方法 歯ブラシの持ち方や歯間ブラシ・デンタルフロスの使い方

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セルフケア・対処歯周病虫歯口臭がある歯が痛い歯・歯肉

適切なセルフケアを目指すには

口の中に磨き残しがあると、その中の細菌が繁殖してプラーク(歯垢)ができます。
この細菌の塊であるプラークが除去できていないと、やがて歯周病や虫歯になったり、症状が悪化してしまいます。特に歯周病は、磨き残しを20%以下に抑えると、悪化のリスクを下げられるといわれていますが、実は歯ブラシだけでは磨き残しを20%以下に抑えることはできません。
歯ブラシだけだと、歯のすき間を十分に磨くことができないためです。

プラークの除去率

これは、使う道具によって歯のすき間にあるプラークがどのくらい除去できるのか、違いを調べたものです。
歯ブラシだけの場合は61.2%。歯ブラシにデンタルフロスを加えた場合は79.0%。
そして、歯間ブラシを加えた場合は84.6%と、つまり、「磨き残し20%以下」を目指すためには歯ブラシとほかの道具(デンタルフロスや歯間ブラシなど歯間清掃用具)を組み合わせて使う必要があります。

力を入れて磨いても汚れは落ちない

歯ブラシで歯磨きをするときは、力を入れ過ぎないようにすることが大切です。
過剰に力を入れてゴシゴシ磨く「オーバーブラッシング」では、歯ブラシの毛先が開いてしまい、毛先の部分で汚れをからめとることが十分にできず、逆に磨き残しが多くなってしまいます。

また、過剰な力が歯や歯ぐきに加わると、歯ぐきが下がって歯の根元が露出する歯肉退縮(しにくたいしゅく)や、冷たいものがしみる知覚過敏が起こることがあります。
いったん歯肉退縮が起こると、自然に回復するのは難しいので注意が必要です。
歯磨きをするときの適切な圧力は150g程度といわれています。
鉛筆で書いた文字を消しゴムで軽く消すときの力加減で歯磨きをするとよいでしょう。

力を入れて磨いたときの歯ブラシの毛先

歯ブラシの持ち方

歯は1本1本小刻みに磨くことで効率よくプラークを除去できますが、歯ブラシをグーの形で握ると肘(ひじ)を動かすことになるので、小刻みに動かすのが難しく、過剰な力も入りやすくなります。
そこで「ペンホールド」と呼ばれる、ペンを持つような持ち方にすると歯ブラシを手首と指先で動かすことになるので、力を入れなくても細かい動きがしやすく、角度もつけやすくなります。

ペンホールドという歯ブラシの持ち方

歯ブラシのあて方と角度

歯周病の場合は歯ぐきに向かって斜めにあてる

  • 歯の頰側
    歯ブラシの毛先が歯の表面に対して90度になるようにあて、汚れをこすり取るように小刻みに毛先を動かして磨きます。
  • 歯の舌側
    歯ブラシの毛先を歯と歯ぐきの境目に対して斜めにあて、汚れをこすり取るように小刻みに毛先を動かして磨きます。
  • 歯周病が進んでいる場合
    歯ブラシの毛先を歯と歯ぐきの境目に対して、45度程度の角度であてて、歯の根元にできた歯周ポケットの中の汚れをとるように細かく動かします。

歯ブラシを使うときのポイント

歯磨きは、磨きにくい場所から始めるのがお勧めです。
右利きであれば、右側のほうが磨きにくいので、右の奥歯から順に磨いていきます。前歯に移るときは犬歯の辺りで手を返しますが、その辺りは磨き残すことが多いので、手を返したらもう一度少し奥に戻って磨きます。

歯間ブラシの使い方

歯の根元で歯と歯が接していないすき間に使います。いろいろなサイズがあるので、歯科衛生士に相談し、自分の歯の状態に合った適切なサイズのものを選び、正しく使いましょう。

歯間ブラシの使い方

(1)歯ぐきを傷つけないように、歯と歯のすき間にゆっくりと斜め方向に入れる。
(2)歯と歯の間の両側面をこするように5回程度往復させる。
(3)舌側からも行う。

歯間ブラシの使い方のポイント

歯間ブラシを使うときは、あごなどに指先をおいて支点にすると、ブラシがぶれないので安全に使用することができます。

デンタルフロスの使い方

歯と歯の間の掃除に使う糸です。歯と歯の間にすき間がなくて詰まっていたり、狭い場合には、デンタルフロスが適しています。糸巻き状のロールタイプの場合、正しく使えるようになるためには練習が必要ですが、比較的安価で携帯にも便利なのでお勧めです。
なお、初心者に使いやすい持ち手がついているホルダータイプ(Y字型、F字型)もあります。

(1)フロスを40cmくらいの長さで切る。(目安は指先から肘の間の長さ)

フロスを40cmくらいに切る

(2)両手の中指にしっかりと巻きつけ、15cmくらいの長さにしてピンと張る。

両手の中指に巻きつける

(3)親指と人さし指で糸をつまみ、糸の長さを2〜3cmほどにして、歯と歯の間に垂直にゆっくり入れる。
(4)2つの歯が接していて通しづらい場所(接触点)を通過したら、少し力を抜いて、歯の間の両側面を片面ずつ、沿わせるようにして2〜3回こする。

歯と歯の接触点を通過したら力を弱める

デンタルフロスの使い方のポイント

歯と歯の間を通すだけではなく、両側面をしっかりこすって汚れを落とします。また、歯と歯ぐきの溝に少し入れると、歯周ポケットのプラークが取れるほか、そこに空気を送り込むことになり、歯周病菌を減らす効果が期待できます。

1日1回はしっかり行う!

歯ブラシを使った歯磨きは、毎食後、短時間でもよいので、食べかすなどを取るために行い、歯間ブラシやデンタルフロスを併用した歯磨きは1日1回、就寝前に行うとよいでしょう。
就寝中は、唾液の分泌量が減り、唾液が細菌を洗い流す作用が低下して細菌が増えやすくなるので、寝る前に歯の表面だけでなく、歯の間を隅々まで磨いて細菌数を減らしておきましょう。
歯のセルフケアを毎日積み重ねることが、歯周病や虫歯の予防と全身の健康につながります。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2022年12月 号に掲載されています。

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