慢性腎臓病の食事 筋力低下「サルコペニア」をどう防ぐ?

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たんぱく質制限による「サルコペニア」に注意

慢性腎臓病がある場合、たんぱく質をとり過ぎると、腎臓への負担が増え病気の進行につながります。そのため、食事に含まれるたんぱく質の摂取量を制限することが基本です。

サルコペニア

ただし、たんぱく質の摂取制限をすると、筋肉のもととなるたんぱく質が不足して、「サルコペニア」が起こることがあります。サルコペニアは、加齢によって筋肉量が減少し、筋力が低下した状態です。進行すると全身に力が入らなくなったり、体のさまざまな働きが衰えたりします。
高齢者の場合、慢性腎臓病があり、たんぱく質の摂取制限をしている人は、慢性腎臓病がない人と比べてサルコペニアを合併する割合が高いと考えられています。さらに、慢性腎臓病とサルコペニアを合併していると、心筋梗塞や脳卒中などを起こす危険性がより高くなります。そのため、筋肉量が少ない場合は、たんぱく質の摂取制限を緩めることがあります。

たんぱく質の摂取制限を緩める場合

たんぱく質の摂取制限とサルコペニアの改善は相反するものなので、どちらを優先して対処するかは医師が判断します。その重要な目安の1つが、腎機能を示す「eGFR」の値です。

eGFR60未満が3か月続くと慢性腎臓病と診断される

eGFRは、血液検査の値などから算出される数値です。たとえば、eGFRが60の場合、腎臓の働きが正常な状態のおよそ60%になっていると考えられます。eGFR60未満の状態が3か月以上続くと慢性腎臓病と診断されます。

eGFRの低下速度をチェックし、透析や死亡リスクを診断

医師は、患者のeGFRの値などを定期的にみながら、腎機能が低下する進行速度を確認します。その結果、サルコペニアのリスクが慢性腎臓病の進行リスクを上回ると判断した場合は、サルコペニアの治療を優先し、たんぱく質の摂取制限を緩めます。また、慢性腎臓病が進行し透析治療を開始した場合は、透析が腎臓の働きの代わりをするため、たんぱく質の摂取制限を緩めることになります。摂取制限を緩めた場合のたんぱく質の摂取量は、健康な人とおおよそ同程度となります。
サルコペニアを防ぐためには、十分なエネルギー量の摂取も大切です。また、慢性腎臓病がある人は、たとえ高血圧がなくても、食塩の摂取量を1日3~6gの範囲にとどめるように心がけてください。

慢性腎臓病の食事 たんぱく質制限がある場合

たんぱく質を減らした分のエネルギー量や食事量を補うため、炭水化物や脂質などを意識してとるようにします。炭水化物を多く含む食品のなかでも主食(米飯、パン、麺類など)は、たんぱく質も含むものが多いので、「低たんぱく食品」を使うのがお勧めです。
脂質は油脂類に多く含まれており、炒め物や揚げ物を上手に取り入れましょう。特にお勧めなのが、オリーブオイルや菜種油、ごま油、MCTオイルなど、植物由来の油です。ただし、特に糖尿病や肥満などがある人は、甘いものや油のとり方に注意が必要なので、医師や管理栄養士に相談してください。

たんぱく質制限のメニュー例

【監修】東京大学医学部附属病院

朝食

たんぱく質制限の朝食メニュー例

低たんぱくパン(50g)2個、バター(10g)、はちみつ(21g)、目玉焼き、野菜のソテー、キウイフルーツ(75g)

果物については重要な注意点があります。慢性腎臓病で「高カリウム血症」と診断されている場合、果物などに多く含まれるカリウムを多くとると危険なことがあります。必ず医師に相談、確認してください。

【目玉焼きの材料(1人分)】

  • 卵 1個
  • サラダ油 4g
  • 塩 0.3g
  1. 熱したフライパンにサラダ油を入れなじませる。
  2. フライパンに卵を入れ、弱火にして黄身が好みの固さになるまで焼く。
  3. 塩をふる。

【野菜ソテーの材料(1人分)】

  • キャベツ 30g
  • 黄色パプリカ 10g
  • 赤色パプリカ 10g
  • オリーブオイル 2g
  • 塩 0.3g
  • 黒こしょう 少々
  • パセリ(飾り用)
  1. キャベツはざく切り、パプリカは乱切りにする。
  2. 熱したフライパンにオリーブオイルを入れてなじませ、切っておいた野菜を入れ、炒める。
  3. しんなりするまで炒めたら、塩・こしょうを加える。

昼食

たんぱく質制限の昼食メニュー例

えびとトマトのパスタ、レタスやきゅうり、貝割れ菜などのサラダ、フルーツゼリー(70g)

サラダは貝割れ菜などの香味野菜を入れたり、味付けにマスタードやこしょうなど香辛料や、お酢などの酸味を使ったりすると、減塩・薄味でもおいしく食べられます。フルーツゼリーはプリンやケーキなどと比べてたんぱく質が少なめです。

【えびとトマトのパスタの材料(1人分)】

  • 低たんぱくパスタ 100g
  • むきえび 50g
  • たまねぎ 30g
  • マッシュルーム(缶) 18g
  • トマト(缶) 90g
  • オリーブオイル 12g
  • 白ワイン 5g
  • にんにく 1/2かけ
  • 減塩コンソメ 2.5g
  • 塩 0.4g
  • 白こしょう 少々
  • バジル(飾り用)
  1. たまねぎはみじん切り、にんにくは薄くスライスする。
  2. フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れ弱火で炒め、香りが出たらたまねぎを加え炒める。
  3. たまねぎがしんなりしてきたら、えびを加え弱火で炒め、白ワインをかける。
  4. 食材に火が通ったら、トマトと、汁をきっておいたマッシュルームを追加し、弱めの中火で煮立たせる。
  5. 煮立ったら弱火にして、減塩コンソメ、塩、こしょうを加え、3分ほど煮込む。
  6. 鍋にたっぷりのお湯を沸かしパスタをゆでる(塩は加えない)。
  7. パスタは指定された茹で時間でゆでる。低たんぱくパスタは、「だま」になりやすいため、かき混ぜながら加熱する。
  8. ゆであがったパスタをフライパンのトマトソースに加え、絡めながら中火で1分ほど煮る。

【サラダの材料(1人分)】

  • レタス 30g
  • きゅうり 20g
  • ロースハム 10g
  • 貝割れ菜 4g
  • コーン(缶) 10g

[ドレッシングの材料(1人分)]

  • 酢 5g
  • オリーブオイル 3g
  • 塩 0.5g
  • 砂糖 0.5g
  • マスタード 1g
  • こしょう 少々

夕食

たんぱく質制限の夕食メニュー例

ご飯(低たんぱくではなくふつうのご飯 180g)、アスパラの牛肉巻き、白いんげん豆のりんご煮、なすとピーマンの揚げびたし

ご飯は、パンやパスタよりも1食あたりのたんぱく質量が少なめです。低たんぱくご飯も活用しやすいですが、1日の合計摂取量との兼ね合いによっては、ふつうのご飯も使いやすくなります。肉料理は、お肉が少なくても、野菜に巻くことで満足感を得やすくなります。同じ豆類でも、白いんげん豆は、大豆よりもたんぱく質が少なめです。揚げびたしは、植物油を多めに使うことで、エネルギー量を増やせます。

【アスパラの牛肉巻きの材料(1人分)】

  • 牛肉(肩) 180g
  • 塩 0.3g
  • 黒こしょう 少々
  • 小麦粉 2g
  • アスパラ 40g
  • 植物油 3g

[ソースの材料(1人分)]

  • 減塩しょうゆ 5g
  • 酒 3g
  • みりん 3g
  • 黒こしょう 少々
  • にんじん(付け合わせ用) 20g
  1. アスパラガスは根元1cmを切り落とし、ピーラーで下から4~5cmの範囲の皮をむく。にんじんは5mm幅の輪切りにする。
  2. フライパンにお湯を沸かし、アスパラを1分ほどさっとゆでて取り出す。
  3. お湯ににんじんを入れ、やわらかくなるまでゆでる。
  4. 牛肉を広げ、塩とこしょうを振り、アスパラに巻き付け、全体に小麦粉をふる。
  5. 熱したフライパンに油を入れなじませ、肉を巻いたアスパラを並べ、時々転がしながら全体に焼き色がつくまで焼く。
  6. アスパラを取り出したフライパンに、ソースの材料を加え、ひと煮立ちさせる。
  7. アスパラは食べやすい大きさに切り、ゆでたにんじんとともに皿に盛り付ける。ソースは食べる直前にかける。

【白いんげん豆のりんご煮の材料(1人分)】

  • 白いんげん豆(乾) 20g
  • りんご 30g
  • 砂糖 10g
  • 水 50g
  1. 白いんげん豆は水で洗い、50gの水に浸して一晩おく。
  2. 戻した白いんげん豆を鍋に入れ、水と一緒に煮込む。
  3. 浮いてくるアクを取りながら、沸騰してから15分ほどゆでたらザルにあげる。
  4. 白いんげん豆を鍋に戻し、豆がちょうど浸るくらいの水を加えて火にかけ、煮立ったら弱火にして、白いんげん豆がやわらかくなるまで煮込む。
  5. りんごは皮をむき、5mm幅のいちょう切りにする。
  6. 鍋にりんご、砂糖、水を入れて弱火にかけ、りんごから水分が出てしんなりしてきたら、白いんげん豆を加えて、全体に味がなじむまで弱火で煮込む。

【なすとピーマンの揚げびたしの材料(1人分)】

  • なす 60g
  • ピーマン 12g
  • 植物油 8g
  • しょうが 1g
  • みょうが 4g
  • 減塩だしわりしょうゆ 10g
  • 水 5g
  1. なすはへたを取って縦に半分に切り、皮に数か所切れ目をいれてから一口大に切る。
  2. ピーマンはへたと種を取り除き、乱切りにする。
  3. みょうがは根元を切ってから縦に半分に切り、繊維にそって1~2mmの細さに切る。
  4. しょうがは皮をむき、すりおろす。
  5. 鍋に減塩だしわりしょうゆと水を入れ、ひと煮立ちさせ、つゆを作る。
  6. 揚げ油(170℃)を用意し、なすとピーマンを揚げる。
  7. 余分な油を切ったなすとピーマンは温かいうちにつゆをかけ、1時間ほど味をなじませる。
  8. 器に盛り、みょうがとしょうがをあしらう。

3食合計の栄養量

  • エネルギー 1950kcal
  • たんぱく質 45g
  • 食塩 5.4g

身長170cmで一般的な活動量の場合を例にすると、いずれも制限内におさまっています。

たんぱく質制限を緩めた場合

サルコペニアを防ぐために、たんぱく質制限を緩めることになったら、たんぱく質を多く含む食品を意識してとることが大切です。食材選びや料理のしかたなど食事の工夫については、たんぱく質制限の場合から必ずしも大きく変える必要はありません。

たんぱく質制限緩和のメニュー例

朝食

たんぱく質制限緩和の朝食メニュー例

たんぱく質制限のメニュー例との違いは、パンを低たんぱくパンから一般的なパンに替えて、さらにヨーグルト(120g)を追加しました。

昼食

たんぱく質制限緩和の昼食メニュー例

パスタを低たんぱくパスタから一般的なパスタに替えて、具にいか(40g)を追加しました。

夕食

たんぱく質制限緩和の夕食メニュー例

牛肉を50gから75g、アスパラを40gから60gに増やし、アスパラの牛肉巻きを1.5倍に増やしました。

3食合計の栄養量

  • エネルギー 2050kcal
  • たんぱく質 80g
  • 食塩 5.9g

身長170cmで一般的な活動量の場合を例にすると、いずれも制限内におさまっています。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2022年11月号に詳しく掲載されています。

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