関節リウマチ診療ガイドライン2020 改訂のポイントは?

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関節リウマチ手・腕が痛い手・腕

関節リウマチの治療薬が進歩 患者の声を反映して指針改訂

関節リウマチはこの20年間で飛躍的に治療法や治療薬が進歩。
日常生活に支障がなくなるまで回復した状態である寛解を目指せるようになりました。寛解の割合は、2001年の時点ではわずか7.8%でしたが、2021年には60.8%まで増えています。

関節リウマチ 寛解の割合

2021年に発行された関節リウマチ診療ガイドライン2020では、「患者1600人の意見を取り入れながら、患者と医師が話し合い、共同で治療内容を決める」という考えのもと、次々に開発、承認されている治療薬の使い方などがまとめられました。

薬の効果の有無 判断の目安は「6か月」

関節リウマチの治療薬は、どの薬を使っていても「6か月以内に効果が出なければ別の治療を受ける」ことが今回のガイドライン改訂での原則となりました。薬のタイプは、大きくは抗リウマチ薬・生物学的製剤・JAK阻害薬に分けられ、自分に合う薬を検討していきます。

ガイドラインで推奨される治療薬

治療の基本は、抗リウマチ薬のメトトレキサートという20年以上使われているのみ薬です。現在も第一選択薬で、患者の8割がこの薬を使っています。

第一選択薬 メトトレキサートの効果は?

患者へのアンケート結果で、メトトレキサートを「良い点のほうが多い」と答えた人は50.3%と、半数の人がメリットを感じていることがわかりました。一方で「悪い点のほうが多い」という回答は11%でした。

メトトレキサートに関する患者アンケート

一方で副作用の問題も判明しました。新ガイドライン中の患者アンケートによると、メトトレキサートの副作用に関して「強い」と答えた人が27.2%。つまり4人に1人くらいの人がなんらかの副作用を感じていることになります。

副作用で最も多いのが吐き気・ムカつきなどの胃の不快感、そのほかには肝機能の異常があげられます。
メトトレキサートは1週間に最大16mgまでのむことができますが、量が多い人ほど副作用が出やすいことがわかっています。こうした副作用のリスクを下げるためにメトトレキサートと併用して「葉酸」をのむことが一般的です。ただし、メトトレキサートと葉酸を同時にのむと薬の効果が不十分になる可能性があります。
そのため、葉酸はメトトレキサートをのんだ2日後など、間隔を空けてのみます。
※妊娠や出産を考えているときにはメトトレキサートは使用できません。

高い効果が期待できる生物学的製剤

生物学的製剤に関する患者アンケート

抗リウマチ薬の次に検討するのが「生物学的製剤」と呼ばれる薬で、患者の3割程度が使用しています。
メトトレキサートは免疫細胞の活動を低下させるのが狙いですが、生物学的製剤は免疫細胞が出す炎症物質である「サイトカイン」などに狙いを絞って働きかけることで高い効果が期待できる薬です。
メトトレキサートと併用することでその効果はさらに大きくなるといいます。

この治療は、点滴注射または皮下注射で受けることができます。点滴は通院する必要がありますが、皮下注射なら、トレーニングを受けた上で、自宅でも自己注射することができます。
アンケートによると、生物学的製剤を使った患者の89.5%が「良い効果があった」と答えています。

ただし、メトトレキサートと違って費用が高額です。
生物学的製剤の種類にもよりますが、3割負担の場合で1か月に2万円~4万円の費用がかかります。

また、種類によって2か月に1回、点滴を受けるものから、週に1回、自己注射するタイプのものまであるので、医師のアドバイスを受けた上で検討することが重要です。

治療コストを抑える バイオシミラー

バイオシミラーと呼ばれるジェネリック医薬品に相当するタイプの生物学的製剤も出てきています。
先発医薬品と比べて、内容や成分は全く同じではありませんが、効果や副作用に関して同等の薬であると認められた自己注射薬です。先発医薬品よりも3~4割程度、価格が低く抑えられています。

治療コストを抑える バイオシミラー

新しいのみ薬 JAK阻害薬

現在使われている薬の中で最も新しいものがJAK阻害薬です。
JAK(ヤヌスキナーゼ)とはサイトカインの情報伝達を担う酵素のことで、JAK阻害薬は、このJAKの働きを妨げることで関節の腫れや痛み、破壊を抑えます。
治療の効果は生物学的製剤と同等かそれ以上とされており、メトトレキサートや生物学的製剤を使っても十分な効果が得られない場合に検討します。

のみ薬なので、使いやすいことが利点ですが、費用が高額であることや帯状ほう疹などの感染症のリスクも高まることから、まだ積極的には使用されていないのが現状です。

治療目標を医師に伝える!

治療目標を医師に伝える!

主治医との話し合いに関する患者へのアンケート結果で、「治療目標について話し合ったことがある」(38.4%)と答えた人は、「話し合ったことも説明を受けたこともない」(24.8%)と答えた人に比べて、「医療への満足度」が6倍以上も高かったという報告があります。
「関節リウマチを治療して、何ができるようになりたいか」を医師に伝えて、自分のライフスタイルにあった治療を検討することをおすすめします。

関節リウマチに関するご質問

『Q&A 関節リウマチ』はこちら

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2022年6月 号に掲載されています。

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