脂質異常症に新基準 非空腹時中性脂肪に注意

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脂質異常症動脈硬化狭心症心筋梗塞循環器・血管

脂質異常症とは?

「脂質異常症」とは、血液中のコレステロールや中性脂肪などの脂質のバランスが崩れている状態のことをいいます。この病気の特徴のひとつは、他の病気と違い、痛みといった症状や見た目の変化がほとんどないことです。ただし、自覚症状がないからといって放置していると、動脈硬化を引き起こします。さらに動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞)を発症してしまいます。日本人のおよそ4~5人に1人がこのような病気で亡くなっています。心筋梗塞や脳梗塞による死亡リスクを食い止めるためには、「脂質異常症」の段階で発見して、生活習慣の改善や治療をはじめることが大切です。

脂質の働き

血液中には3つの脂質が存在する

血液中にはおもに3つの脂質が存在しています。
脂質はそのままでは血液と分離してしまって、自由に移動することができません。そのため、リポたんぱくという乗り物に乗って血液中を移動しています。そして乗り物の名前よって、それぞれの働きが変わります。

LDLという名前の乗り物に乗ったコレステロールは、細胞膜やホルモンなど、役に立つものに変化します。しかし量が増えすぎてしまうと動脈硬化を促進することから「悪玉コレステロール(LDLコレステロール)」とも呼ばれています。
HDLに乗ったコレステロールは、細胞膜やホルモンになりきれなかった、余ったコレステロールを回収してくれます。そのため「善玉コレステロール(HDLコレステロール)」とも呼ばれています。中性脂肪は、体を動かすエネルギー源になっています。

新基準 非空腹時の中性脂肪に注意

きょうの健康特製「脂質異常症診断の新ガイドライン」
空腹時と非空腹時の中性脂肪の基準数値

2022年7月、日本動脈硬化学会は5年ぶりに「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」を改訂しました。その中で「脂質異常症」の新しい診断基準も発表しました。
これまで「脂質異常症」の診断における中性脂肪の基準は「空腹時150mg/dL」だけでした。今回のガイドライン改訂によって「非空腹時175mg/dL」という新基準が追加されました。これは採血検査のときに、空腹ではないとき、つまり食後でも検査を受けていただきたいということを意味しています。たとえ空腹時の中性脂肪の値が低くても、食後の中性脂肪値が高い場合には、心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが高まるということが分かってきたためです。

※空腹時と非空腹時の検査は同時にはできないため、空腹時の中性脂肪の値が高めの方は、非空腹時の検査も医師にご相談ください。

真犯人!小型化LDLコレステロール

非空腹時の中性脂肪の基準値が追加された理由のひとつに、小型化LDLコレステロールがあります。小型化LDLコレステロールは動脈硬化のつよい危険因子になる物質です。通常サイズのLDLコレステロールより小さいため、血管の隙間に入り込みやすく、酸化されやすく、また長時間血液中にとどまります。そのため動脈硬化を促進しやすいのです。
たとえ空腹時に中性脂肪値が低い人でも、食後の中性脂肪値が高い場合は、小型化LDLコレステロールが増えてしまいます。このようなことから中性脂肪「非空腹時175mg/dL以上」という項目が追加されました。

チェックする順番

LDLコレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール 管理する順番

健診結果などから、脂質異常について管理するときの順番は、①LDLコレステロール、②中性脂肪、③HDLコレステロールです。LDLコレステロールは、動脈硬化を促進させるためやはり優先度が一番となり、最も注意が必要です。
つぎに中性脂肪の値を管理して、小型化LDLコレステロールを発生させないようにしましょう。LDLコレステロールと中性脂肪が管理できていれば、自然とHDLコレステロールの働きはよくなっていくので、一番最後にチェックします。

脂質異常症に関するご質問

『Q&A 脂質異常症』はこちら

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2022年9月 号に掲載されています。

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